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日本文学史 近代・現代篇六

"戦後日本に登場した作家の中で、三島は、その天賦の才においても、とげ得た業績においても、最高の人物であった"2012年発刊の本書は日本文学研究の第一人者による日本文学史近代・現代篇6冊目にして、戦後文学、女性作家の復権、三島由紀夫を総括した一冊。

個人的には、主宰している読書会の資料作成の為に手にとりました。

さて、そんな本書で1945年の敗戦後、占領下での古典の復権や雑誌の創刊ラッシュなどの【かってない文学活動の盛んな様子】を紹介した上で、作品のほとんどが戦後になって初めて世に出た作家たち、野間宏や椎名麟三、マチナ・ボエティクを紹介したり、幅広い女性作家たちの活躍が始まったと野上弥生子や岡本かの子、宇野千代、林芙美子を紹介した上で、満を持したかの様に親交もあった三島由紀夫への絶賛で終わっているわけですが。

まず、この『文学史シリーズ』全体にもあてはまるのですが、アメリカ人として【客観的な視点で欧米文学と比較しつつ】一方で研究者らしく莫大な資料をもとに作家たちの代表作品の紹介も豊富にしてくれている本書。どちらかと言えば、欧米文学の方に親しみを覚え、日本文学はさほど詳しくない私にとっては【ドンピシャ的にわかりやすく】有り難かった。

また、いつもは割と【ストレートかつ冷静な語り口】なのですが、本書では交流もあり高く評価してきた三島由紀夫への気持ちはおさえられなかったのか"日本では夏目漱石や森鴎外を文豪と呼ぶが、三島にはその名を冠しようとしない"(だが国際的には三島由紀夫の方がより高く評価されている)などと著者にしては珍しく?やや感情的な記述だったのが印象に残りました。

敗戦後の占領下文学や女性作家の活躍、三島由紀夫について俯瞰的、文学史的に学びたい人にオススメ。

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