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町でいちばんの美女

"末のキャスが5人姉妹のなかでいちばん美しかった。町でいちばんだった。インディアンの血が半分流れた、まれにみるしなやかな軀は、蛇のように冷たくなったかとおもえば火のように熱くなった"1983年発刊の本書は、映画化もされた表題作他、刹那的な酒とSEX、そして競馬を描いた癖のある短編集。

個人的には、それなりに本を齧ってくると『どのような作者の本が好きか』で、おおよその所で相手の人柄がわかってくるわけですが。この本はそういった意味で困った存在で、好きだ!と言ってしまうと周囲に(特に女性陣から)【確実に白眼視されそう】なのですが。

でもやっぱり。素直に告白すれば。本書で繰り返し描かれる『あてもなく辿りついた街の酒場』『魅惑的な女性との出会い、そしてSEX』といった【退廃的なイメージ】は私も含む男性陣が一度は【心のどこかで憧れてしまう】わけで。そういった意味では本書の語り手である懲りないダメ中年男達に(倫理的には兎に角)いっそ清々しい魅力すら感じてしまうのです。

そして、多分に年を重ねて【過去の思い出に生きるようになった人】ほど、運良く社会的に成功した人は【過去を美談化し】キレイな自伝を出版し、運悪く失敗した人は【過去に蓋をして】怨嗟の声をどこかにぶつける人も多い中で。良くも悪くも【とりあえずビールだ!女だ!】的な著者自身の一貫して飾らない生活や考え方が垣間みえる気もする本書。決して洗練されていない文章ですし、まあ下品かつダメダメな内容ですが、どこかホッとさせられてしまうのです。(うん。少なくとも日本人作家には書けない作品な気がします)

万人にはオススメしません。が、唯一無比な世界観のある作家に関心ある誰か。また年を重ねても懲りない男性とか。どうでしょうか?

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