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暗い時代の人々

"最も暗い時代においでさえ、人は何かしら光明を期待する権利を持つこと、こうした光明は理論や概念からというよりはむしろ少数の人々がともす不確かでちらちらと揺れる、多くは弱い光から発すること"1968年発刊の本書は混乱する世界に抗って生きた10人を著者が敬意を込めて紹介した普遍的人間論。

個人的には、20世紀を代表する女性哲学者の著者の本に関しては『人間の条件』や2013年公開の映画と読んだり観たりしてきたのですが。森まゆみの同名作で本書の存在を知って手にとりました。

さて、そんな本書はナチス台頭により著しく【人間の自由という大切な権利が損なわれた時代】にドイツを中心に抗って生きた人々(明らかに別の『スピノザ論争』レッシングを除く)10人を濃淡も含めて奔放かつクールな愛情を込めて記しているわけですが。ヤスパースはともかく、知らなかった『ルクセンブルク主義』ローザ・ルクセンブルク『ヴェルギリウスの死』ヘルマン・ブロッホ『複製技術時代の芸術』ヴァルター・ベンヤミン『異化効果』ベルトルト・ブレヒト『私たちの時代の最も旨を打つ詩人』ランダル・ジャレルといった方々を知るキッカケになったのが、とても楽しかった。

一方で、ドイツの当時に詳しくない方だと割と本書を読み進めるのは難解ではないかと思ったのですが。それでも著者のボリュームある作品群の中では【短編集的に読める】本書。他作品と比べて本として名作かと言われると違和感ありますが、割と貴重ではないかと思いました。

著者作の補完的に、また【それでも!】と暗い時代に懸命に生きた人々に刺激を受けたい方にもオススメ。

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