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日本美術の歴史

"だがあえて皿回しを試みるのは、わたし自身のそんな狭い枠から抜け出てもうすこし広い視野をもちたい、せめて日本美術の全体の流れとその輪郭を眼中に収めたいという願いゆえである"2005年発刊の本書は、従来の美術史ではあまり評価されていなかった岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曾我蕭白、長沢蘆雪、歌川国芳を【奇想の画家たち】として再評価を促したことでも知られる著者による日本美術史解説書。

個人的に、何年も人前で美術史を話しているくせに日本美術史の【最良のテキストを見つけられていない】もやもやとする感覚があって、本書も手にとりました。

さて、そんな本書は日本絵画史の室町から江戸を専門とする著者が70を過ぎた今が【最後の機会】と日本美術の流れを【縄文からアニメまで】辿っている解説書になるわけですが。ある程度の前提知識がないといけない。つまり初心者向けではないかもしれないけれど。豊富な写真と共に幅広く論じてくれていて、とても勉強になりました。

一方で、先ほど【最良のテキストを見つけられていない】と書いた理由として、美術はもちろん、絵画や建築、彫刻といった【明治以後の西洋生まれの概念をそれ以前にあてはめる乱暴さ】またその区別の結果消え去ったり、変質したり、混乱している文化(生人形や刺青、書道)に触れられないこと。はたまた日本といっても【海流文化や北海道、沖縄を含めない無神経さ】があるわけですが。少なくとも本書は前者に関しては【素直に認めた上で最善の解説をされている】様に感じ、好感を覚えました。

日本美術や歴史の中級者向けにオススメ。

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