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八十日間世界一周

"実際、もっと得るものが少なかったとしても、あなたは世界一周旅行をする気になるのではないだろうか。"1873年発刊の本書は新聞連載時から圧倒的な人気を得ると共に、主人公を真似た、多くの旅の追随者を現在も誕生させ続けると共に、舞台、映画、アニメと様々に展開、パロディ作品も生み出し続けるユーモア溢れる古典冒険小説。

個人的には交通手段の多様化、インターネット、スマホやSNSの普及によって、出不精な私とは違って、手軽に世界一周旅行を実際にした人、しようとする人が周り増えてきている事から。かえって【世界に謎が満ちていた】古き良きアナログ旅行の時代を思い出したくて本書を手にとりました。

そんな本書は一風変わったイギリス人紳士の主人公が【80日間で世界一周ができる】という賭けをして、フランス人の召使と共にロンドンからスエズ、ボンベイ、カルカッタ、香港、横浜、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドンといった旅に出かけていくのですが。

驚いたのは主人公の振る舞いか。冒険小説にあるまじき?あくまで【賭けの対象としての旅】とせっかく訪れた国々自体には【全く興味を持たない】のが斬新でした(笑)。対称的に快活な召使のフランス人がその代わり?色々と世界各地を楽しく描写してくれるので助かる?のですが。いやはや一風変わった冒険小説だと感じました。

また1872年当時の西洋文化至上主義的な感覚にはやはり現在の読者からは違和感はありますが。それでも舞台として横浜、日本の風俗、文化描写にも割とページが割かれているのもちょっと嬉しく、フランス人の召使が演者として参加する天狗の面と翼をつけた曲芸集団、天狗連の描写にはワクワクしてしまいました。

何かと文化を描く時に配慮が必要な時代ですが。それを一旦脇に置いといて、今は逆に無理になった【トランク一つ、時刻表片手の旅】を思い出したい、あるいは感じてみたい旅好きな誰かにオススメ。

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