見出し画像

京都

"京都という空間を、千年という時間でくぎってみることに、少なからざる興味をさそわれた(中略)空間を時間でくぎり、時間を空間で表すという、思いきったこころみが、この書物である。"1962年発刊の本書は中世史研究、燈心文庫でも知られる著者による千年の京都の発展を地域的に辿った名著。

個人的には京都転居を機に数ある『京都本』にあたる中で、本書にも辿りつきました。

さて、そんな本書は戦後の京都の歴史学、特に中世史において多くの研究者を育てた著者による名著として、別の京都ガイドにオススメされていたのですが。【京都は、神泉苑からうまれた】から始まり、平安京遷都前の『古代京都』から『学問と芸術の都市、京都』まで京都市内を中心とした各エリアの遺跡や歴史を全15章にわけて紹介し【日本中で京都だけが可能性をもつ歴史と地域の結合関係を追求する】つまり『京都が近代的都市であると共に歴史的都市だと言われる具体的理由を明らかにしようとする』挑戦的な一冊になっているのですが。

率直に言って『京都本』の多くが様々な二次創作物やメディアによって良くも悪くもフィクションが先行し【過度に評価されがちな気がしている】私にとって、2022年現在、60年前に書かれた本書における著者のまなざしは博識さは当然に、極めて淡々と、そして文体はアカデミックではなく【一般にもわかりやすく描かれていて】古さを感じず楽しむことが出来ました。

また『古代から現代までの京都』を、わずか250ページで圧縮して編集、語ること自体が、著者も自覚してるようにかなりチャレンジングだと思うし、流石に『京都本』のはじめての一冊だとすると【情報量的にも難度が高く思える】のですが。私自身は既に何十冊も既読なため、なるほど!と各時代、各エリアの『京都』というパズルが組み合わさるような気持ちよさがありました。

京都本の名著として。また古代から現代までの駆け抜ける。そんな挑戦的な一冊としてもオススメ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?