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本を読むときに何が起きているのか

"読書しながら見るこれらのイメージは、個人的なものである。私たちが見ることのないものが、作家がその本を書く時に描写したものである。つまり、すべての物語は変換されるべく、想像的に解釈されるべく書かれているのだ。"2015年発刊の本書は著名ブックデザイナーによる刺激的でグラフィカルなメディア論。

個人的には毎月、読書会を主宰しながら課題図書についての感想を話し合う中、度々【読み終えた】という前提に疑いを持ってしまった時に手にとってしまうのが本書だったりします。

さて、そんな本書は『アンナ・カレーニナ』『白鯨』『響きと怒り』『ポヴァリー夫人』『灯台へ』『ユリシーズ』他といった有名世界文学作品を既に既読である私たち読者に向けて、様々な形で読みながら思い浮かべているイメージにグラフィカルな形で疑いを持たせながら、(テキストを)【見ることと理解することの違いとは何か?】といった事を問いかけ、揺さぶってくれているのですが。

前述したような作品たちを【読み終えている】と思い込んでいる自分が、如何に作品について【自分都合的な個人的解釈、イメージで捉えているか】をズバズバと指摘される感覚があって、何度手にしても考えさせられます。

また、本書では作家たち自身が作品をテキストで描きながら、同時に【画家として描いたイラストや地図】なども紹介されているのですが。私たち読者は当たり前に【作家と完全な同一化を図ることは不可能】なわけですが。それでも学び続ける事で【出来る限り迫ることは可能かもしれない】そんな希望も抱かせてくれます。

『本を読んだ』といった前提そのものに不安を感じてしまった誰かや、海外の古典文学名作好きな人、アーティスティックな人にオススメ。

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