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増補新訂版 アンネの日記

"自分でも不思議なのは、わたしがいまだに理想のすべてを捨て去っていないという事実です(中略)なぜならいまでも信じているからですーたとえいやなことばかりでも、人間の本性はやっぱり善なのだということを"2003年邦訳。本書は2種類の日記を編集、さらに新たに発見された日記も加えた増補新訂版。

個人的には主宰する読書会の課題図書として手にとりました。

さて、そんな本書は誰もが知るように、第二次大戦時、ナチスドイツ占領下のオランダ、アムステルダムを舞台に、密告により収容所に連行されるまで約2年間。隠れ家に潜んで生活した8人のユダヤ人達の様子が当時13歳〜15歳の少女であったアンネ・フランクによって描かれているのですが。

まず、ただひとり生還したアンネの父、オットー・フランクが【小説家になることを夢みていた】わが子の希望を叶えるために元の日記に"様々な配慮を加えて"出版した【短縮版】しか若い時に読んでいなかったので。配慮され削られていた部分。思春期の少女らしい恋や性への関心、また自分のことを理解してくれないことへの不満、同居人たちへの悪態などが追加された本書からはアンネの【年相応の人間らしさ】が等身大により伝わってきて新鮮でした。

また、年を重ねてアンネとは随分と年の離れてしまった中年の私にとって、彼女自身の心境に寄り添うのは流石に難しくも。今回は奔放なアンネの【父親にして、よき理解者】年齢も近いオットーの立場に寄せてアンネを【見守るように読ませていただいた】のですが。1945年の第二次大戦終結から77年を経た2022年現在。未だに進行形で戦争が起きている中、オットーのように戦火や暴力の中、家族を守るために必死な『世界中の名も知らぬ父親たち』のことを想ったり。

ユネスコ世界記憶(記憶遺産)のベストセラーとしてはもちろん、戦争の悲惨さを忘れないための一冊としてオススメ。

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