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"一人の人間が持ち得るものはそんなに多くない。だからみんなでやるんだ。そうして世界を埋めるんだ"2013年発刊の本書は電子葉の移植義務化により調べる=知るが同義語になった未来京都を舞台にした4日間の逃避行、輪廻転生SF。

個人的に、日本人作家のSF作品が読みたくなったので手にとりました。

さて、そんな本書は莫大な情報が溢れかえった近未来。対策として現実のイーロン・マスク設立のニューラリンクによる脳埋め込みデバイスよろしく、天才研究者、道終・常イチ(みちお・じょういち)の開発した『電子葉』の移植手術が義務化された結果、人々はスマホを持たなくても頭で思い浮かべただけで"何でも知ることができる"ようになった一方、情報へのアクセス権限などの階級化がより進んだ社会を舞台に、道終・常イチの最後の教え子、京都に住む御野・連レル(おの・つれる)は暗号を解いたことで、超常的な力、量子葉を持つ少女、道終・知ル(みちお・しる)と出会い、4日間保護することになるのですが。

著者作だと、ユニークな作品が多数収録された短編集『野崎まど劇場』のイメージがあるのですが。設定は割と奇抜で複雑な割にストーリー展開自体は【美少女を連れての逃避行】とオーソドックスでわかりやすいために、とても読みやすく。また私自身が縁のある【京都各所が舞台】ということで楽しくラストまで読み終えることが出来ました。

また、タイトル通りに『知る』をテーマにした本書自体は近未来SFですが。何でもWEBのサーチエンジンで"ググったり"また、まとめ動画や人気ユーチューバ−の解説を"試聴して"【知ったかぶりをしてしまいがちな】現代社会を風刺しているような印象もあって、本書の主人公たちではありませんが『知る』ために【自らの意志で行動する】大切さ。も伝わってきたように思いました。

情報過多な社会に色々と考えている方や、京都を舞台にした近未来SFを探す人にオススメ。

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