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おばあちゃんたちのいるところ

"数々ある恐ろしい選択肢の最後にちょこんとくっついてきたある可能性を考えた瞬間、私は発作的にドアを開けていた。立っていたのは、おばあちゃんだった。"2016年発刊の本書は2021年、世界幻想文学大賞『短編集部門受賞作』にして軽妙かつ定型をひっくりかえす現代版"おばけ話"。17編の珠玉の連作短編集。

個人的には世界幻想文学大賞の受賞を知り『持続可能な魂の利用』に次ぐ2冊目として手にとりました。

さて、そんな本書は二股の末、彼氏にフラれて現実逃避気味の"私"の前に一年前に死んだおばちゃんがふらりと訪ねてくる"みがきをかける"から始まり、歌舞伎や落語、民話を下敷きにしつつ、様々な形で【追い詰められた人達】の前に死後の世界を満喫している"おばけ"達が日常との境界線も曖昧にあらわれるのですが。

著者が以前、人気劇団『ヨーロッパ企画』に役者やスタッフとして参加していた事も影響しているのか『持続可能な魂の利用』と同じく【どこか戯曲的、リズミカルなテキスト】は読みやすくも、おかしみを感じる内容にあっていて、とても気持ちよく読み終えることができました。

また、登場する死者たち"おばけ"達が、恨み節ではなく、生前とあまり変わらず、あるいはより一層元気に存在している様子にも、何かと死や老後を悲観したり、不安を覚えたりする感情を【ガハハと笑い飛ばされるようなパワー】をもらえて、元気な気分になりました。

何かしら悩みを抱えている人が元気をもらえる一冊として、また読みやすくも不思議な短編を探している人にもオススメ。

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