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うたかたの日々

"大切なことは二つだけ。どんな流儀であれ、きれいな女の子相手の恋愛。そしてニューオリンズの音楽、つまりデューク・エリントンの音楽。ほかのものは消えていい。なぜなら醜いから。"1947年発刊、レイモン・クノーが"現代における最も悲痛な恋愛紹介"とよんだ本書はジャズと魂がパリを舞台に美しく織りなす狂想曲。

個人的には『文体練習』が大好きなクノーの絶賛もあり、また日本版含めて何度も映画化されていて、興味があったにも関わらず未読であった事から、ようやく今回手にとりました。

そんな本書は【物語的には割とシンプル】で裕福な若者たちの青春が、恋人がかかってしまった【肺の中に睡蓮が生長する奇妙な病気】と共に荒廃と喪失へと突き進んでいくのですが。それより何より、冒頭から炸裂している、現実にはありえない出来事が普通に頻発する文体(例えば水道管から出てきた鰻を自然に食べたり、『行こうか?』と唐突に雲が語りかけてきたりする描写)が最初は【頭でノイズのように理解が出来ず】ちょっとびっくりしました。(カクテルピアノは普通に欲しいですが。。)

それでも、慣れてくると。当時フランスでブームだった"実存"のサルトルの演説をユーモア交えて風刺している部分や、特に後半の登場人物たちが社会に組み込まれて疲弊しつつ、それぞれに死や破滅に直面していく姿が、前半の【光が眩しかったからこそ強いコントラストで】また当初はノイズ、雑音の様に感じていた描写が【一転、リズミカルに感じられてきて】ぐいぐいと加速するかの様に最後まで世界観に引き込まれました。(原文で楽しめないのが本当に悔しい!)

若者たちの"ちょっと変わった表現の"青春物語が好きな誰かや、美しくリズミカル、テンポ良い文書が好きな誰かへオススメ。

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