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物の本質について

"私は広大な問題を説き、ひいては人の心を宗教という固い結びから解き放とうと努めんとするからであり(中略)いとも明快な詩に歌わんとするからである"古代ローマの詩人・哲学者による本書は1417年に再発見され、エピクロス哲学理解、ルネサンス以降を促進した美しく危険な思想詩。

個人的にはスティーヴン グリーンブラット『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』で本書の存在を知り、手にとりました。

さて、そんな本書はアレクサンドロス大王の東方遠征により個人主義が台頭した古代ギリシャ、心の静けさと安らぎを守る『アタラクシア』エピクロス哲学に熱狂した古代ローマの詩人・哲学者の現存唯一の(当時の)『科学的啓蒙書』として『人間を含む万物はたえず動きまわる極小の粒子でできている』として徹底した無神論・唯物論の立場で、病気や気象現象から宇宙まで【あらゆることを詩の形で解き明かしている】一冊で。時代に忘却された後に1417年に『薔薇の名前』よろしく・・

実在のブックハンター、ブラッチョリーニによってドイツの修道院で再発見されたことで【迷信や恐怖からの解放の書】として、以降、画家のボッティチェッリを触発し『ヴィーナスの誕生』を描かせ、『エセー』モンテーニュ『君主論』のマキャベリ、天文学の父ガリレオ、『種の起源』ダーウィン『アメリカ独立宣言』ジェファーソン、アインシュタインの思想を形作ったと言われているのですが。

まず、本来の著書の意図としては詩集らしくも翻訳者が冒頭で書いているように『時代の違う我々の目には無理』と散文で訳しているので、【詩集としてのニュアンスは残念ながら伝わってこない】ものの、他のギリシャ哲学やストア派を牽制しつつ、本当にあらゆる事を理性かつドヤ顔で説明しようとしているので、現在常識からはトンデモ話も多々混じっているも【ある種のSF奇想小説的】に圧倒されました。

また前述したように、キリスト教的な思想制約下、直接的ではなくも本書の存在がヒント、知のリレーとして時代を超えて後世の【ルネサンスや、近代自然科学や思想に影響を与えた】ことを知ると、やはり、その重要性に自然と居住まいを正す的な読後感を感じました。

西洋、現代文明を形づくった思想的名著として、またエピクロス主義理解の一冊としてオススメ。

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