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東京藝大で教わる西洋美術の見かた

"本書は、藝大で私が開講する『美術史概説』の授業をまとめた『藝大で学ぶ美術史』そのものなのです。したがって、一般的な入門書では飽き足りない人にとって、本書は格好の一冊になるでしょう。"2021年発刊の本書はドイツ・北欧美術史研究者による、既に学んでいる人に贈る刺激的な一冊。

個人的には、西洋美術史を人前で話す機会があるので(美術史講座『具体大学』)資料として手にとりました。

さて、そんな本書は国立西洋美術館勤務を経て、2010年より東京藝術大学で西洋美術史概説を教える著者が、15回の誌上講義として。あえて【時代順に作品を並べず】また印象派に代表される【一般的な概説でとりあげる作品に触れず】ルネサンスからバロック、古典主義とロマン主義、モダニズム前夜のモダン。として、まるで初心者向けの西洋美術史で当然に『教わるであろう内容』(イタリア、フランスを中心とした通史的な流れ)を補完するかのように【ドイツ・北欧の研究者としての立場、視点から】解説してくれているわけですが。

まず最初に、著者が教える【既に一般的な美術史を学んでいる】学生たちと同じく、立場的にも、いわゆる【西洋美術史入門書】を既に何冊も手にとってきた私にとっても、本書の解説は目から鱗というべきか。例えば既知の作家でも『デューラーとラファエッロ、レオナルドの交流や交感』など、知らなかった『周辺のパズルが新たに繋がっていく』感覚があって、回を読み進める度に知的関心が掻き立てられて非常に面白く、勉強になりました。

また、そういった意図から。みんな大好き『印象派』はおろか、そこから繋がっていくセザンヌやゴッホ、ピカソやマティス、デュシャンといった【お馴染みの面々】は作品はおろか【名前も出てきませんが】その代わりに通常の西洋美術史解説なら『遠景に置かれたり、省かれがちな』北欧、シャルフベックとハマスホイはもちろん、初期の英国美術としてゲインズバラとレイノルズ、19世紀ローマとしてナザレ派やアングルの交流、といった作家達が手厚く解説されていて。こちらも類をみない貴重さを感じました。

西洋美術史を学ぶ人の『★二冊目』として、また豊富にある美術解説書や脚色された美術小説や映像作品に物足りなさを覚えている全ての美術好きにオススメ。

★ちなみに西洋美術史『1冊目』としては、私は「鑑賞のための 西洋美術史入門」を西洋美術史初心者にはオススメします。本書と併読してぜひ。


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