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精神分析入門(上)(下)

"我々は従来人が夢とよびならわしてきたものを、夢のテキストまたは顕在夢と名づけ、我々が探しているもの、いわば夢の背後にあると推測されるものを夢の潜在思想と名づけることにします。"本書は『精神分析の創始者』による1915年から17年までのウィーン大学講義録、1933年の修正補足を収録した名著。

個人的には主宰する読書会の課題図書として手にとりました。

さて、そんな本書。まず『精神分析入門』は三部構成になっていて、日常における言い間違いや聞き間違いをする『錯誤行為』そして支離滅裂なことが多い『夢』ノイローゼや性的倒錯などの『神経症』について。【明快な論旨展開、対話的手法】で大胆な解読に挑んでいて。その続編となる『続精神分析入門』では、実際の大学講義形式を模して『自我・エス・超自我』といった『心的装置論』他【前書に寄せられた意見への反論や補足】を行なっているのですが。

まず。最初の『錯誤行為』が発生する理由を【不快からの回避意図、心理的逃走】と看破するあたりや、そこから続く『夢』で、支離滅裂な夢が【潜在思想が翻訳、検閲された結果】までは丁寧な展開で受け入れやすかったのですが。そこから唐突にアクセルを踏むかのように『夢は性的なものを象徴的に表現する』と、例えば男性器はステッキ、傘、棒、木、蛇口、噴水、シャーペンと【自分の周囲にあるもの。なにからなにまで性的象徴】と根拠もなしに例えだしたのには急な飛躍を感じ驚かされました。(現在の精神医学では『評価されていない』らしいのもよくわかる)

とはいえ『命名や分類、隔離のみ』に終始していた当時の精神医学に対して【その理由にスポットライトを当てたこと】は評価されなくとも、間違いなく『偉大な行為』だと思うし、批判が殺到したとはいえ"理性による監視をすべて排除し、美的・道徳的なすべての先入見から離れた、思考の書き取り"芸術文学運動『シュルレアリスム』の【理論的基礎として大きな影響を与えた】ことは間違いないので。多少の支離滅裂さがあっても、やはり原文に触れることが出来て良かった。と思いました。

精神医学の歴史的名著として、また芸術文学運動『シュルレアリスム』に大きな影響を与えた一冊としてもオススメ。

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