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生き物の死にざま

"人間だけが特別な感情を持つ動物なのだろうか。それとも、私たち人間が勝手に擬人化して見れば、感情があるように見えるだけなのだろうか。『死』についてはどうだろう"2019年発刊の本書は雑草学研究者が生き物たちに寄り添って生、そして死にざまの物語を紹介している良書。

個人的には生き物たちの生態から考えさせられることも多いので手にとりました。

さて、そんな本書は植物学者"みちくさ研究家"として、雑草の生き方を伝える本を数多く出版している著者が"空が見えない最期"セミから始まり、"死を悼む動物なのか"ゾウまで、ハサミムシ、サケ、カゲロウ、マンボウ、ニワトリ、ネズミ等々【『生き物たち』の生態、生死】を29エピソード。昆虫や魚類、哺乳類といった区別なく哀切たっぷりに紹介してくれているわけですが。

人間とは単純に違う生き物。と頭では理解していても、本書では様々な生き物たちを【時にドラマチックに、あるいは淡々と】『擬人化』して紹介してくれているので、やはり感情を寄せやすく。晩年の仕事として、ようやく外へ、しかし『一番危険な蜜集め』を課せられるミツバチ、メスに"ヒモ"として寄生『生殖機能だけが求められ』最後はメスに吸収されるチョウチンアンコウなど。どこか【中年、あるいは男性の悲哀を重ねて】しんみりしてしまった。

また、大量のメディアを浴びて『世界は人間だけのもの』としてばかり捉えてしまう傲慢さをデトックスされるような感覚も本書にはあって。様々な『問題』ばかりが取り沙汰される現代社会ですが。人間自体の未来はともかく【生き物自体の未来】は何とかなるのかな?そんな気持ちにもなりました。

生き物たちの物語が好きな方はもちろん、生や死について。俯瞰的に考えたい方にもオススメ。

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