見出し画像

ドン・キホーテ前編3

"お前様のためを本当に思っているこの人たちといっしょにわしらの村に帰り、そこでまた、もっと利益になれば名声をあげることになるような旅に出かける計画でも練りましょうよ"1605年発表の本書は老作家が牢獄の中で着想を得た自称騎士の短編物語の3冊目、前編ラストの一冊。

個人的には前編3冊のうち、2冊目までがとても面白かったので、引き続き手にとりました。

さて、本書ではスペインの片田舎の日常が、狂気的なドン・キホーテの"活躍"により、非日常的な冒険になっているわけですが。本書では作中作の『愚かな物好きの話』から始まり、引き続き美女ドロテーア演じる【ノリノリの王女ミコミコーナの物語】と散発的、短編的なエピソードが続くのかな?と思いきや、これまでの登場人物達(=ドン・キホーテの被害者達)が再登場【様々なカオス的な状況になっていく】中で、それでも気づけばドン・キホーテも帰郷し(ひとまずの)【まさかの大団円】を迎えているわけですが。

著者自身のアルジェでの虜囚物語が『捕虜の身の上話』などの作中エピソードに色濃く反映されている本書、やはり当時においては【高齢といえる58歳において発表された】事を考えると、騎士物語のパロディ"滑稽物語"として充分に楽しめる一方で、著者自身は必ずしも良いことばかりではなかった人生を。おそらくは【振り返りながら書いていたのだろうなあ】と執筆時の心境を想像しました。

また、著者が養っていた家族たちは、実際には【いささか複雑な事情を抱えた女性たち5人】だったわけですが。前編を通じて感じたのは、本作の物語に登場する女性たちは、どろどろとした日常性をひきずらずに【男たちと対等に渡り合う理想的な存在】として描かれており、そのあたりの著者の現実とのギャップについても興味深く思いました。

誰もが名前を知る『ユーモア溢れる古典文学』として、またドロテーアを始めとする逞しい女性たちの物語としてもオススメ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?