鴨川食堂
"『あなたが〈食〉を捜してくれるんですね』(中略)『厳密に言うたら、探すのはお父ちゃんやけどね。わたしはただの窓口。て言うか、通訳みたいなもんですわ(以下略)』2013年発表の本書は、かつて実在した食堂をモデルに京の食と思い出を探し出す物語。
個人的には、自分の創作のヒントを求めて『京都本』を手あたり次第に読む中で手にとりました。
さて、そんな本書は『京都の案内本』関連で知名度が高い著者が『食をテーマにした小説を書いてみよう』と、映像化されることを最初から念頭におき(2016年に実際にNHKでドラマ化)京都は東本願寺の近くに【かつて実在していた食堂をモデルに膨らませて描いた作品】で。一話完結方式で毎回、全国から様々な人が食堂に訪れては依頼する、昔食べた想い出の食。鍋焼きうどんにビーフシチュー、鯖寿司にとんかつといった【料理を再現して欲しい】といった"調査依頼"に探偵所所長の娘と食堂を営む元刑事の父が挑んでいくわけですが。
まあ、流石に京都については詳しい著者が描いているだけあって。盛り込まれる雑学的な【京都食材ネタについては(やや、こってりとしすぎな気もしましたが)安心できる】感じがあって、東本願寺近くの地域にも馴染みがあることもあり、付近の様子を頭に浮かべながら楽しませていただきました。
また、こうした日常系(あるいは人情系)探偵モノは、良くも悪くもテレビドラマ的な【繰り返されるワンパターンさ】が一つのうりだと思うのですが。本書では"探偵所所長"の娘、こいしが全てを天才的な【頭脳で解決するのではなくて】あくまで、父親の流が元刑事らしい足を使った【現場調査で解決していく】のが、目新しい。というか、割と意外な印象を受けました。
京都、そして食を題材にした人情ドラマ的な本を探す人にオススメ。料理好きにも良いかも。
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