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恋に至る病

"『それ』を拾い上げた瞬間、息を呑んだ。今まで自分が見ていた世界が塗り替わる感覚がする。走馬燈のように今までの想い出が蘇り、あの時の教室に引き戻される。"2020年発刊の本書は実際の『青い鯨』事件を下敷きに150人以上の被害者を出したゲーム主催者と幼馴染の恋を描く物語。

個人的にはTikTokで紹介されて話題になっている本として手にとってみました。

さて、そんな本書は小学生時代から誰からも好かれる美しく『善良』な女子高生、寄河景(よすがけい)が語り部であり幼馴染、後に恋人になる少年、宮嶺(みやみね)を守るために起こした"ある事件"をキッカケにして、いつしか管理者から毎日異なる課題を行うようSNSを通じて要求され、死へと誘導される自殺教唆ゲーム『青い蝶』主催者として150人以上の被害者を出しても平然としている『化物』へと"変貌"していくのですが。

まず、主に私自身が作中人物に近い若者ではなく『中年の読み手』であるのが大きな理由だと思うのですが。サイコパス的存在の寄河景はともかく、語り部である宮嶺の【あまりのナイーブさ】語り口のまわりくどさが気になってしまい、また他の登場人物。例えばラストに希望的なメッセージを投げかける刑事他もどこか類型化された感じがして、一言で言えば【登場人物が薄く、リアリティに欠けて】通読するのは割と辛い体験でした。

一方で、実際の『青い鯨』事件や、参考文献を参考にしたり『ラスト四行の衝撃』といった著者の試み、狙いがネットで検索すると前述のTikTok以外にも様々な熱心な考察記事が書かれたり、実際に売上の好調さに繋がっていることから、著者いわく『寄河景という人間そのものを謎としたミステリー』としては成功しているのかな?と思いました。

気軽に読み終えることができるミステリーとしてオススメ。

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