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素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち

"でも、僕みたいなふつうの猫が、翼のある猫に、なにかやってあげられるものだろうか?アレキサンダーはしっぽをからだのまわりにくるりと巻いたまま、頭上高く飛びまわっているジェーンの姿をじっと見ていました。"2000年、村上春樹訳の本書は訳注もユーモアに溢れたシリーズ3作目。

⁡個人的には友人がしている文学ラジオの名前にしていたり、岸雅彦『断片的なものの社会学』に出てきたり、何より猫好きとして気になっていたので手にとりました。

さて、そんな本書は『闇の左手』や『ゲド戦記』シリーズで知られるアメリカの女性作家、ル・グィンの絵本『空飛び猫』シリーズ3作目で、本作では何不自由もなく育てられるも『何か素晴らしいことをやってのけるんだ』と冒険(自分探し?)に出かけた猫のアレキサンダーが、空飛び猫兄弟の末娘にして口が聞けなくなっている黒猫のジェーンに助けられ新メンバーに加わるのですが。

⁡まあ、安定の村上春樹訳。そして良い意味で絵本ということで【物語の展開としてはシンプルで】あっという間に読み終える事ができるのですが。おかげで?本シリーズ4冊のうち、まさかの3冊目から手に取った私でも違和感なく、アレキサンダー視点で空飛び猫たちとの出会いから楽しく体験できて良かったです。

また、あとがきで村上春樹が本シリーズには著者の『都市生活や機械文明への反発・嫌悪』『弱いものや傷ついたもの、無垢なるものへのあたたかいまなざし』が込められている。と書いてますが、本書では【人間も含めて悪役は登場せず】空飛び猫家族も含めた【優しい関係性に見守られながら】アレキサンダーが成長していく姿に癒されました。(S.D. シンドラーの美しい挿絵も素晴らしい)

猫好きや村上春樹ファンはもちろん、都市生活や人間関係に疲れた人にも癒し的にオススメ。

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