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太陽の庭

"ー神を信じることもならず、神を失ってしまった私たちに、どうか祝福を。栄子は永遠に響きつづける鐘の音に祈った。"2009年発刊の本書は、地図に載らない永代院という神聖な場所に住む人たちを内外から美しく描いた耽美かつ幻想的な物語。

個人的には著者の本は初めてなのですが。読書会で源氏物語や耽美な物語好きな方にすすめられて手にとってみました。

さて、そんな本書は東京都にあるが地図には載っておらず、また一般には存在を知られていないが、一部の政財界からは『神』と崇められている【永代院】に住む、当主の由継を中心にした複数の妻や子どもたちの物語が、章ごとに語り手を入れ替えつつ、前半の3話までは中の『閉ざされた目線』で耽美的に、後半4話以降は『外部の目線』で社会派ミステリ的に語られていくのですが。

なるほど、確かに著者が別インタビューで、例えば登場人物の名前として、葵の上から"葵"、頭中将が和琴が得意だったから"和琴"とつけていたり、光源氏が明石に行くことから"西の家に行くことを考えた"と述べているように。特に前半の世界観に関しては【『源氏物語』の影響が大きい】と確かに思いました。

また、後半からの外部、現実世界に戻る内容と同じく文体すら一変して、前半の【繊細な描写からシンプルなスタイルへと変化】させているわけですが。この辺りの著者の自由自在な語り口も【相当に描き慣れている】と素直に感心しました。

女性的、耽美な幻想小説が好きな方や、源氏物語好きな方にもオススメ。

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