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読書会という幸福

"読みながら考えていたことや、考えもしなかったことが、ほかのメンバーの言葉を聞いているうちに次々と自分のなかから引きずりだされてくる。三十年近く読書会を経験していても、これはいまだに不思議なことだと思う。"2022年発刊の本書は翻訳家が切実さをもって語る『読書会』"本を語り、人生を語る"幸福。

個人的には著者の訳した『プリズン・ブック・クラブ』がとても面白かったことや、私自身も読書会を主宰していることから興味をもって手にとりました。

さて、そんな本書は翻訳家にして図書館司書でもある著者が岩波書店の雑誌『世界』に連載した原稿に加筆、付録として『失われた時を求めて』の読書会報告の抜粋と、35年間の読んできた課題本のリストを加えたもので。前半は【読書会自体について】作法や形式、成功させるためのヒントが自身の経験や取材をもとに。後半は【翻訳家視点での読書会】が語られているのですが。

まず、読書会の主宰者として。著者たちの30年近くには遠く及ばないものの何年間も同じく【課題本形式の読書会】を開催している私としては、本書前半の内容に関しては【確認や共感ばかりの内容】で、割と選んでいる課題本も『海外古典小説』中心と重複している事もあって、楽しく読ませていただきました。

一方で、本書でも語られていますが。読書会の魅力の一つに本を語りながら、同時に【その人自身も知ることが出来る】というのがあると思うのですが。後半の著者、そして著者の師匠も含む『翻訳家たち視線での読書会』は翻訳家たちが如何に原文を日本語に置き換えるのに【苦労や工夫をしているか】また、そういった立場からの違和感を語り合っているのは新鮮で、とても勉強になりました。

読書会を始めよう、あるいは参加を考えている方はもちろん。女性目線、翻訳家視点での読書会を知りたい方にもオススメ。

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