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高野聖・眉かくしの霊

"寝る時、上人は帯を解かぬ。勿論衣服も脱がぬ、着たまま円くなって俯向形に腰からすっぽり入って、肩に夜具の袖を掛けると手を突いて畏まった、その様子は我々と反対で、顔に枕をするのである。"1908年発刊の本書は、中国小説『三娘子』に着想を得た著者の最高傑作にして、文体際立つ幻想小説の傑作。(『高野聖』)

個人的には、本書『高野聖』に関しては学生時分に読んだ時はひどく読みづらく感じたのですが。近現代の日本文学を学びなおしている今だと、一体どう感じるだろうか?と関心があって久しぶりに再読しました。

さて、そんな本書は高野山の中年旅僧が車内で道連れとなった若者に、若かりし自分がかつて体験した不思議な怪奇譚を聞かせる【語りの中に別の語りがある】『額縁小説』となっているのですが。強く印象に残ったのは、やはり著者独自の【語彙豊かでリズム感のある文体】。昔はあれほど読みづらく感じたのに、年を重ねてから読むと、とても気持ちよくて。いやー日本語って美しい!と【非日常的、濃厚な怪異世界】に没入させていただきました。

また一緒に収録された晩年の佳作『旦那、向こうから、私が来ます、私とおなじ男が参ります』ドッペルゲンガーで有名な『眉かくしの恋』。こちらはこちらで【割と直接的な怪談】となっているのですが。一方で物語自体をつかむのは割と意図的な余白があって、28才の時に書いた『高野聖』からの変化が比較して感じられ興味深かったです。

独特の日本語文体好きな誰か。幻想小説好きな方にオススメ。

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