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『いにしえの故郷』

私は、いにしえの故郷に戻ってきた。少年時代、私はここで育った。今は、あの日々を思い出すことができる、かけがえのない場所だ。

山の斜面には、雑木林が広がり、風に吹かれて葉っぱが揺れる音が心地よかった。小さな滝が流れる音、そこから湧き出す水が私の口に触れた時の冷たさ、湿った土の匂い…全てが変わらず、私を迎えてくれた。

「ここは、いいところだな」

私がそう呟いたとたん、誰かの声が聞こえた。

「ほんとうにそうだよ」

私は振り返ると、ひとりの少女が私を見ていた。

「あなたは…?」

「私は、ここに住む者たちのひとりだよ」

少女は、黒い髪を揺らして微笑んだ。

「あなたは、昔からここに住んでいたの?」

私が訊くと、少女は静かに頷いた。

「そうだよ。私たちは代々、この地を守ってきたんだ。あなたは、この地の人間ではないのかい?」

私は首を振り、ここに戻ったのははじめてだと説明した。

「そうか、それならおおよそ、どういう目的で戻ってきたのか、わかるよ。でも、それはもう少し、場所を移してから話そう。ついてきて」

少女が言うと、私たちは山を越え、森の中へと進んでいった。

途中、私は少女から、この地に伝わる伝説の話を聞いた。その話によると、この地には昔、天上の神々が降りてきて、地上に美しい庭園を造ったという。庭園には、宝物のような鉱物が眠っていたが、やがて人間たちがそのことを知り、それに目をつけて侵入してきた。神々は怒り、庭園を破壊して去っていったという。

私は、その話に胸を打たれた。ここに来た理由が、少しずつわかってきた気がした。

森を抜け、広い草原に出ると、少女は私を立ち止まらせ、手招きをした。

「ここで話をするよ。私たちは、ここであなたの目的について話をしたいんだ」

私は、彼女たちが私を迎え入れてくれる理由がわからなかったが、興味津々で彼女たちに話を聞いた。

「私たちは、この地を守るために生まれた者たちなんだ。あなたが来た理由は、この地を救うためだと、私たちは思っている」

彼女たちは、私が来た理由をすでに知っているようだった。私は、少しだけ怖くなった。

「ここには、貴重な資源が眠っている。それを手に入れようとする者たちが、この地にやってくるだろう。私たちは、それを防がなければならない」

私は、彼女たちの意図が理解できなかったが、何かを決意したように言葉を口にした。

「私は、この地を守るために何ができるか、教えてほしい」

少女たちは微笑み、私に教えを授け始めた。私は、いにしえの故郷で育ったことが、私に力を与えることを知った。

そして、私は彼女たちとともに、この地を守るために立ち上がることを決めた。

この地での生活は、もう決して平穏ではない。しかし、私はこの地を守ることを誓い、いにしえの故郷で生きることを選んだ。

終わり

サポートがなんなのかすら理解できていませんが、少しでも誰かのためになる記事を綴り続けられるよう、今後ともコツコツと頑張ります!