マガジンのカバー画像

中身のない、中身しかない

3
どこにでもいる大学生の不器用な四年間にピリオドを打つためのエッセイ
運営しているクリエイター

記事一覧

差し出せ手のひら、きっかけが舞う

差し出せ手のひら、きっかけが舞う

入学式を終え、桜真っ盛りの大学に繰り出すと、桜よりも幅を利かせて待っているものがあった。

たった一年しか歳が変わらない「先輩」と言われる人たちが、はけることを目的に撒いているビラというやつだ。入学式は同時に、新歓のゴングでもある。
どこにどうきっかけが広がっているかわからないから、「先輩」は無造作に勧誘する。僕は根っからの文化系だったわけだが、なぜかワンダーフォーゲル部の新歓ブースに連れて行かれ

もっとみる
組まれなかった肩と、春の喧騒

組まれなかった肩と、春の喧騒

2016年、4月2日だったと記憶している。
初めてスーツというやつに袖を通したのだ。あまりの着心地の悪さに、大学生になった実感が湧いた。式は、粛々と厳かに行われるのが通例だ。
真面目ぶった人が真面目ぶったことを言って、それで終了。のはずなのだ。
これから4年間苦楽を刻み込むことになるこの場所に、初めて降り立った日。
あまりの人の多さに、すでに今までとは違う空気を感じ鳥肌が立った。

入学式は講堂で

もっとみる
終わって欲しかった日々

終わって欲しかった日々

2016年3月。
何日だったかはもう忘れた。当時在籍していた高校を巣立った日。
僕は在籍していた3年間で抱えたあふれんばかりの葛藤を封じ込め、
不気味に笑う校長を目の前にして答辞を読んだのを覚えている。
俺の話が長い(某ドラマのようだ)ことは学校中で有名で、答辞中に起立していた卒業生の一人が、長すぎて貧血で倒れたのは、僕にとって答辞を読んだこと以上に愛おしい思い出だ。
「泣いたよ」とかも言われたし

もっとみる