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お金を追うと、キリがない

2020年4月30日、福岡にあった STAND BY ME という宿が閉業した。

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最近の話であれば、これは特に珍しいことではなく、正直、似たような話をどこででも聞いていた。ベトナムの宿やカフェも、1年の間に新しくオープンしては閉業、また別のカフェがオープンしたかと思ったらいつのまにか閉じている景色はよく見ていた。

でも、結構ここは、特別だった。

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1階が立ち飲み居酒屋で、2階と3階がゲストハウスになっていた。この立ち飲み居酒屋がとても雰囲気が良く、他のグループのお客さんともいつの間にか一緒に写真撮影して、連絡先を交換して、会う約束をしていなくても、何度か行けば再会する、そんな空間だった。

から揚げ定食が美味しくて、豚汁とおにぎりのセットは何度も頼んで、「そう、欲しかったのはこういう空間と素朴な日本食だよなぁ」なんて、居合わせた人々とそんな雰囲気に包まれて、お酒を飲まなくても語り合える場だった。

ベトナムにもお気に入りの日本料理屋さんがあって、決まってお味噌汁とご飯とから揚げを注文していた。正直、ベトナム料理は美味しくて種類も多いので、お味噌汁とご飯とから揚げ以外の日本食で恋しいものはと聞かれても、すぐに答えられない。

何よりも、オーナーの真吾さんの「巻き込み力」は外から見ていてもとても魅力的だった。「お金にならないけどね」と笑いながら、一番楽しそうだった。まだ誰もやっていないことをやることや、妄想の世界を目の前に創造していく過程や、出来上がったあとにその空間で人々が繋がっていく姿を見ることが、生き甲斐なんだろうなと、傍観していた。

STAND BY ME オーナー真吾さんの言葉たち

生命力に満ちた、STAND BY ME オーナーの真吾さんが言っていた言葉で、心に残っているフレーズがいくつかある。

「誰かを喜ばせることが、自分にとってのモチベーション」

「自分の脳ミソが気持ちよくなる環境を考え続ける」

「好きな人々、尊敬する人々のところに突っ込んでいく」

「少しのステップから始める。小さな成功体験と実績から」

「事業計画通りになったことが無い。『やってみたい』が勝った」

「とりあえずまずやってみる」

「掛け算をしていったらオリジナリティがうまれる」

「お金を追うと、キリがない」

2019年11月、ここで出会ったお客さん同士のカップル3組が結婚したそうだ。「場」を提供する側として、これ以上の「功績」と「誇り」は無いんじゃないだろうかと思う。

東京の代官山や福岡のリバレインでも出店されていたことがある。タイのバンコクにも Trica という宿がある。このタイの trica は4階建てになっていて、改装費用の見積もりが来た際、最初は1200万円だったものが、いざ工事を始めると追加の工事費用を4度請求され、手持ち3万円になった時期があった、という、なんとも笑えない実話も飛びぬけていた。

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本当は、最初から福岡で宿をやりたかった、と仰っていたが、trica の改装後に福岡で不動産が見つかり、結局所持金3万円のときにSTAND BY ME 構想を同時進行させていたそうだ。構想から2年後の2018年6月オープン、2020年4月クローズ。借金現在4.5億円。飛びぬけすぎていた。

ベトナムにいると、全く体感できていなかった事だが、コロナの前に日韓の状況でゲストが減りだしていたそうだ。直接のゲストは日本人が多かったが、周りのビジネスホテルが値段を下げ始めていた為、その競争にさらされるようになった。その上、コロナの影響で、日本人の出張なくなり、ヤフオクドームのイベントも無くなり、休業の判断後、閉業を決めたのだそう。

サービス業につきものの固定費(家賃と人件費)。そして、やはり「人々を繋げる空間をつくりたい」という想いで、今は1階はオープンにしてカフェや飲食店、2、3階は0円シェアハウスにしようか、というひとつの案があるとのこと。週1回は1階のスペースでのシフトに入ってもらい、何かできないかと。

私自身が、現在、在住外国人、外国人労働者で家賃抑えたい人々や仕事を失ってしまった人々に対して宿泊場所の提供の代わりに少人数語学レッスンをやってもらうなど、人々を繋げられないかと構想を練っていたところなので、すぐに連絡した。

とりあえず、やってみるしかないのだ。いつも、どんな感情以上にも「やってみたい」が勝つのだ。

「お金を追うと、キリがない」

改めて、この本質的なところが、今、何よりも重要になってきている気がする。原点回帰というか。もちろん、数字を追う、お金を追うという精神は、結構エキサイティングではあるし、脳の活性化になっているときもある。それがグループでの成果なら尚更。 

でも、何者でもない人間が、お金を追いすぎることによる歪みは、どこかで出てくるのではないかとふと思う。

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ひとつ、アイデアをもらった。というか、ずっと心の片隅にあったことだけれど、私は、私で、東南アジアのメコン川沿いに、いくつかの拠点を持って、そこに訪れる人々を繋げたいし、いつか本当に、このメコン川沿いの国々の国境を越えられるような、何かの環境を創造していきたい。

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