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新型コロナウイルスの影響で観光客が減少した観光地の「安全・安心」は、伝えられるのか?

ベトナムの南部、ホーチミンからバスで3時間半の場所にあるメコンデルタ最大の都市、カントー市。カントー市はベトナムの中央政府直轄市のひとつでもあり(他はハノイ市、ホーチミン市、ダナン市、ハイフォン市)、メコンデルタの各省の中心都市だ。(日本の九州における福岡市のような感覚(←全くの個人的感覚であり、そもそも日本人のどれくらいがこの個人的感覚に共感してくれるかは不明))

そのカントー市にあるカントー市文化スポーツ観光局内の観光開発センター広報部では、連日、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)への対策会議が行われている。ただ、日本のメディアの情報の伝え方、なぜか国民の不安を煽るような感覚ではなく、確実に、この時期に何を行えば市民と観光客の健康と安全、安心を守ることができるか、という目的に集中している。もちろん、私のベトナム語は完璧ではないし、政府機関や行政、観光業者、地元の方々の様々な状況や経済的損失や利害関係や外交などが絡み、多くの取捨選択と決断が迫られる場面で、ある一面しか見られていないかもしれない。でも、この地に住んで、この地の人々と一緒に働いている身からすると、何よりも決断と実行のサイクルがとにかく早い点、普段から何よりも心と体の健康に素直な人々、そして地元産の食が豊富な環境からは学ぶことが多い。来週は観光事業者に対して、観光客が少ないこの「隙間時間」を使ってホスピタリティー・マネジメント・衛生管理等をテーマにしたトレーニングを行う予定だ。

昨晩、ベトナムのSNSであるZaloのグループメッセージで、カントー市文化スポーツ観光局の局長から「マミ、これ日本語訳お願い」と連絡が来たファイルの内容は「カントー市の新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)の最新の状況とカントー市の対応」についてだった。

カントー市では、中国の武漢で新型コロナウイルスによる肺炎が見つかって以降、感染が疑われた事例が無い。そして、観光地を含む全ての施設、飲食店は徹底的に衛生管理されており、通常通りの営業している。

どの観光地もそうだと思うけれど、今回の新型コロナウイルスによる肺炎の世界的拡大の情報は人々の「不安」を煽り、大きな経済的ダメージを受けている。そして、「新型コロナウイルスに感染してしまったら起こる状況」や「感染を防ぐ方法」の情報収集に躍起になる人々。同時に、至る所で「ここは安全なので、是非お越しください」というウェルカムメッセージを公開する政府観光局。

写真は、ベトナム語の原文を、フランス語、英語、そして日本語訳したもの。昨晩の22時頃に共有され、数名で翻訳と確認後、サイトやフェイスブックページでも共有された。

カントーは、実際、通常と何も変わらない。今までも、今も、私が知っている人々の笑顔と健康と、そしてエネルギーで満ち溢れている。この「いつも通りの強さ」は、常にメコンデルタの自然環境の中で生きているからこその柔軟性や強かさなんだろうな、と勝手に私は思っている。

フェイスブックページで共有されていた、カントーで有名な観光地「カイラン水上マーケット」で働く農家の方々、住民の方々への無料マスク配布。写真に写る彼女は2019年の「カントー市観光美女コンテスト」の優勝者で、過去にも多くのチャリティーに参加してきた。

日本で「マスクの転売」や「1セット20000円」等というニュースが世間で出回っていた際、カントー市の国際空港ではマスクと感染症の予防説明書の無料配布。参加者のひとりは、「今年はネズミ年だから」と「ミッ〇ーマウス」のTシャツを着て。

面白いな。と思う。むしろ、メコンデルタ地方で、干ばつと塩水遡上で農業が打撃を受けている状況のほうが気になる。

問題は、この現状を、今回の新型コロナウイルスの影響で観光客が減少した観光地の「安全・安心」情報を、まだここに訪れたことが無い人々に対して、どう伝えると伝わるのだろう?そもそも、伝わるのだろうか?

私は、メコンデルタにいて、しかも観光関連の広報に関わっていて言うのも何だけど、「安全を伝えることを目的にした情報で安全は伝わりにくい」と思っている。「感染者がいません。」「徹底して管理しています。」「観光地は通常通り営業しています。」「ぜひカントーに!」で、来ますか?今回の新型コロナウイルスの感染で「外出を控えよう」と思った人は、もうそういう意志が決まっているので、出ないんだと思うし、いくら受け入れ側が安全を訴えても、その人たちは外出する必要が無ければ外出しないと思う。実際、日系市場調査Asia Plus(アジアプラス)の調査サービス「Q&Me(キュー・アンド・ミー)」がハノイとホーチミン市に住む18~49歳の男女672人を対象に「新型コロナウイルスによる日常生活の変化」に関するアンケート調査を実施したところ、約8割の人々が外出を控えている、と回答したという。これは彼女・彼らの意志だ。そして、個人的に、こういう「外出を控えよう」という傾向は、大都市の人々に多いと思う。

もちろん、それでも政府観光局として公式書面を公開することは大事だ。ある意味、「責任」を表明している。受け入れ側としての責任、何かあった際の責任。そして、もちろん連絡先を掲載することによる、「安心感」を与えることはできると思う。そして何より、現場にいる私からしても、この地は「安心」を感じることができるのだ。でも、その「安心」は、何も起こらないということではなく、どこにいても何かが起こる、その有事の際に迅速に、柔軟に対応できる強かさを持った人々が、周りにたくさんいる、という「安心感」。そして、ベトナムに来てから、一度も体調を崩したことが無いほど、美味しく健康的な食生活からくる「安心感」。最後に、一番重要なことだと思うのは、この有事の際に募る人々の不安が「人種差別」に全くなっていないこと。本当に、美しくて強い人々だなと思う。

そういう意味で、私にとって「安心・安全」の場所。でも、きっとこの言葉たちがどう相手に伝わるかは、その相手次第であって、伝えた後は、もう手放しちゃうからわからない。そんなことを考えながら、仕事をしていたらZaloのメッセージが届いた。「マミ、3月にバドミントンの試合することになったから!私たちダブルスね!」という他の部署にいる同僚からだった。私が試合に出ること、ダブルスで出ること、日程、時間、場所、全て既に決まっていた。「ほんま、カントー市文化スポーツ観光局はスポーツ好きやな!!」と第三者目線で突っ込んだ。

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