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法と開発【本:国際協力ってなんだろう-現場に生きる開発経済学】

#中所得国 、#インドシナ半島、#農業開発、#経済成長、#公共政策、#開発経済学、#開発途上国、#南南協力(アジアーアフリカ)

1.貧困
2.ジェンダー:貧困の女性化
3.障害
4.保健
5.感染症対策
6.教育
7.紛争
8.汚職
9.法制度改革支援
10.環境:開発との両立を目指して
11.排出権取り引き:クリーン開発メカニズム
12.資源循環:国際化するリユース・リサイクル
13.開発援助
14.マイクロファイナンス
15.貧困削減
16.技術:開発途上国でのイノベーション
17.知的財産権
18.情報技術革命
19.農業技術革新
20.貿易自由化
21.国際価値連鎖
22.産業集積
23.国際労働移動
24.グローバリゼーション:宇宙船地球号の別の顔

・1975年に終わったベトナム戦争は、アメリカやソ連、中国といった大国の代理戦争と呼ばれ、ベトナムはその全てが焦土と化したと言えるほど破壊されたが、近年は目覚ましい経済成長を実現している。

・開発プロジェクトの企画や運営に、そのプロジェクトの受益者である開発途上国の人々の参加を促す「参加型開発」、開発途上国の地方自治体の潜在力を高める地方分権支援など

・高橋和志氏:フィリピンの農村地域で出会ったある家族の例
(メコンデルタの農村地域での家庭の事例も見つけられるかな?)

・農村貧困層の特徴は、農業で十分に収入を得るほどの土地が全くないか、肉体労働以外に生産手段がほとんどないこと

・1945年に第二次世界大戦が終結してから65年の試行錯誤の国際開発

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開発経済学
貧困削減のメカニズム

・栄養不足や過重労働、教育機会の不足や虐待とジェンダー

・国連が中心になって作成した経済統計の記述システムである国民経済計算(System of National Accounts)では、家庭内労働や地域社会での仕事は過小評価される。インフォーマル・セクターで重要な部分を担っていると思われる部分。女性と男性の経済に対する貢献を正確に把握するためには統計データの収集状況を改善するとともに、無報酬の労働の量的測定のために定期的に生活時間の調査を行うことも必要。

・近年経済成長が著しいインドについて、世界銀行は同国の障害者の有無や種類がいかに経済発展から取り残されているかを詳細に分析し、調査結果を発表している。インド政府の人口センサスと世界保健機関(WHO)の推計等に数値的違いがある為、途上国の実態の調査、政策立案、実施が多くの国の中で重要な課題。

・2002年、タイのバンコクにJICAがアジア太平洋障害者センター(APCD)を設立。途上国で障害者雇用が先進国以上に先進的な形で実施されている。

・2008年に日本の知的障害者当事者が、知的障害者として初めてJICA専門家としてタイに、青年海外協力隊員としてマレーシアに派遣された

・感染症対策への政府介入の必要性
「迷惑」の対価を請求できない外部性問題が発生する

・SARS:2002年11月に中国の広東省で勃発(アウトブレーク)し、世界保健機関が知ったのは2002年2月11日。この勃発から情報把握までの時間が短ければ短いほど、被害を食い止めやすい。現在はWHOが中心となって感染症早期警報ネットワーク(Global Outbreak Alert and Response Network)が地球規模で展開され、情報がいち早く世界中で共有されるようになっている。

・ワクチン研究:感染媒体や感染経路をつきとめ、感染者の治療と、さらなる感染阻止のための対策を立てなければならない→病原体の検体の収集し、研究者たちの手にゆだねる必要。これらの検体を用いて開発された治療薬やワクチンは、その開発者に特権が与えられ、検体提供者といえどもその利用のためには特許所有者がつける価格での費用負担が求められる。ここに、感染の蔓延しがちな開発途上国と、研究機関や製薬会社の多い先進国との間の対立の火種がある。インドネシアとWHOの間で、鳥インフルエンザの検体に関して、インドネシア政府は、この検体がWHOを通じて民間製薬会社の手に渡り、その結果、検体を提供したインドネシア自体も、開発された高いワクチンを購入することが求められる可能性を危惧し、検体の提供を拒否。

・初等教育の普及を達成したり、ほぼ達成しつつある中所得国にとっては、中・高等教育の拡大がつぎに克服すべき課題となっている。また、その実現に向け、政府やコミュニティがどの程度の役割をはたすべきなのか。ただ、国内の不平等を助長する可能性もある中・高等教育の拡充に、政府が積極的に関与すべきなのか、という点について、いまだコンセンサスは得られていません。

・開発がどのように成し遂げられたのか、が問われる

・開発が失敗すると、紛争が起こる。一次産品(主に鉱山物)は反乱軍から見ると、略奪して軍事資金に充てることが容易な為、密輸が横行しやすい。(映画:ブラッド・ダイアモンド)国家の統治に問題があれば紛争が起きる。独裁的な支配者が、自分の身内だけを優遇し、治安、行政、教育など国家が提供すべき公共的なサービスが広く国民に提供されなければ、国民の間に不満が鬱積する。汚職や政策執行能力の低さ、マイノリティの迫害といった政治問題も多くの国で観察された。国家統治に問題があれば、自由な経済活動が阻害され、高い経済成長は望めない

・汚職:政治家や公務員などの公職にある者が職権や地位を利用して便宜を図り、その見返りに賄賂などを受け取る不正な行為。一国の政権を揺るがす大事件に発展するようなものから、日常の光景の一部となっているようなものまで、その規模や形態、社会に与える影響は実に様々。

・発展途上国の汚職は、例えば市場システムが充分に発達していないため、腐敗した公共サービスを市場で供給されるサービスに切り替えることが困難である。また社会のいたるところで広範囲にみられる。授業料、追加料金、申請書類の有料販売、警察官など。また、汚職を摘発するための公的なシステムが存在しなかったり、存在していても十分に機能していない。

・制度設計の必要性とその難しさ
政治家や公務員が汚職に関してどのような利害に直面しているかを考慮せずに、制度を変えただけでは、汚職の問題を解決することには必ずしも結びつかない。例えば、大きな権限を持つがゆえに腐敗が深刻化している上級の行政組織(中央政府や州政府など)の汚職の問題に対処するために、より末端の行政組織に予算と権限を委譲できたとしても、単に分権化を進めただけでは、権限をもつ者の数が増えて監視の目がさらに行き届きにくくなり、汚職の問題をより末端のレベルにまき散らすだけに終わりかねない

本:政治汚職・腐敗と民主主義ー汚職の誘因と改革への条件

・法と開発
国際機関による支援のほか、各国政府が実施する二国間援助や、先進国の大学などが行う民間ベースの法制度改革への協力もある。例えば、日本の場合、ベトナムの民法典制定に法学者グループが協力したり、日本政府も「法整備支援プロジェクト」を1990年代から開始し、カンボジアの民法典や民事訴訟法典起草に支援を行っている。ただ、貿易や知的財産などさまざまな法領域で、先進国と開発途上国との間に利害対立がある。経済発展を優先したい途上国にあまりに先進的な制度を導入すると、まだ国際競争力のない地場企業の負担となる可能性がある。労働基準や特許の保護。先進国同士の対立と国内の対立する勢力。それぞれの開発途上国の社会経済状況に照らして、どのような法制度が適切であるのか、容易に合意はえられない。

・1972年国連人間環境会議

・国際化するリユース・リサイクル
ベトナムのハノイの中古市場では、日本から輸入されたと見られる中古のテレビ、冷蔵庫、洗濯機、ラジカセなどの電化製品を見ることができる。また、建設機械が年間約1万1000台輸入されているうち、新品は600台に過ぎず、多くは中古機械。ただ、廃棄コストを考慮して、貿易制限がかけられる。リサイクルできる有害廃棄物についても、中国やインドネシア、ベトナムなどのように環境汚染への懸念から輸入を認めていない国も少なくない。

・開発経済学
経済学は、人々の行動原理を分析する学問。人々の行動原理を分析する学問には、政治学や社会学、心理学等がありますが、経済学の特徴は、人がいくつかの行動の選択肢の中から、一つを選択するという事実に着目することです。経済学は人々が、自分や家族の生活を取り巻く環境や制約条件を前提にし、最大限の満足を得ようとして多くの選択肢の中から一つの行動を選ぶ、と見なす。

・法律やそれを支える制度は法学の分析対象、権力や支配関係は政治学、社会規範は社会学の分析対象。これらの法的制約、社会的制約の実態を知るためには法学や政治学、社会学が有用。また、人々の選択のよりどころとなる価値観がどうあるべきかを考えるためには哲学や倫理学が、その価値観を支える文化については文化人類学が、そして人間の認識の仕組みについては心理学が用いられる。それら全ての制約の下で、人は自らの行動を選択するわけですが、経済学はその選択行為を分析することを特徴としている。

・ODA:技術協力、無償資金協力(贈与)、有償資金協力(低利融資)
道路や橋、発電所等は社会的基本資本と呼ばれている。これらは、先進国においては民間企業が建設し、使用料金を取ることによって建設費を賄うことができる場合があるが、開発途上国では、外国資本であれ地場資本であれ、そのような民間投資がなされにくいのが実情。したがって、政府が国際機関や先進国から融資を得て、建設することになる。

・マイクロファイナンス、マイクロクレジット
2006年にノーベル平和賞を受賞したバングラデッシュのグラミン銀行の成功
MCの多くは、貧困層を対象に無担保で少額の資金を融資し、返済したら次第に融資額を大きくする、という仕組みを採用している。そして、その大部分が、返済率90~95%以上という優れたパフォーマンスを記録している。

本:『後発開発途上国の開発戦略』日本貿易振興機構アジア経済研究所

・開発途上国のイノベーション
・開発途上国に合った知的財産権制度とは

・情報技術革命
携帯電話:国際電気通信連合によると、2003年に14憶人だった携帯電話加入者数は、2008年には40憶人を超えるまでに。2003年から2008年の間に、ベトナムは270万人から7000万人。

・農業技術革新ー奇跡の米が歩んだ軌跡 by 高橋和志
農業技術革新の必要性:なぜか?食糧増産のための土地が限られている為
限られた土地からの収量を向上させる農業技術革新が不可欠
1960年代から熱帯アジアを中心に急速に普及した「緑の革命」は、単位面積当たりの穀物収量を向上させるための画期的な試み。所得効果。

・米の最初の近代品種(IR8)は1966年、フィリピンにある国際稲研究所(IRRI)によって育成された。二期作や三期作を行うことで、生産量が大幅に増大する可能性を秘めていた。

・初期の品種は、病虫害に対する抵抗力が弱く、収量がきたいされたほど伸びなかった。近代品種が生産面で本格的に効果を持ち始めるのは、耐虫性・耐病性を兼ね備えた改良品種が開発された1970年代頃から。その後、近代品種を積極的に採り入れたインド、インドネシア、フィリピンでは、当時の政策目標だった米の自給が達成されるまでに至った。アジア全体で見ても、各国の生産量の飛躍的な増加により、1960年代まで危惧されていた食糧危機が回避された。

「近代品種は肥料や農薬の投入を必要とするから、それを購入できる大農だけが潤い、小農との経済格差が拡大していった」という批判もあったが、そのような事実は農村生活実態を詳細に調べたデータからはほとんど確認されていない。多くの研究結果は、緑の革命が農業経営規模にかかわらず、たくさんの農家の所得向上に貢献したことを示している。

また、近代品種導入以降、田植えや稲刈りのような単純作業は、家族労働力ではなく雇用労働力に依存する傾向が強まった。農業日雇い労働に従事するのは、農村部でも特に貧しい土地なし層や零細農が主の為、緑の革命は土地なし貧困層にも一定の恩恵を与えたと言える。→農村間の賃金格差も縮小、懸念されたほどの地域間不平等を生み出さなかった

こうした好影響が生産者だけに留まらず、消費者にも行き渡ったことは特筆に価する。それは穀物生産量の劇的な増加により、米などの価格が1970年代後半から顕著に低下したことに表れている。とりわけ、家計支出に占める食料費の割合が高い都市貧困層や農業日雇い労働者は、主食の価格低下により購買能力が向上し、それがアジアの貧困削減に寄与した。

緑の革命の就学促進効果
農作物の増産や雇用増によって、様々な段階に影響をもたらした緑の革命ですが、より長期的に見てみると、農家子弟の生活向上にも貢献したことが最近の研究から明らかになっている。フィリピンやタイ、インドでは、緑の革命によって上昇した所得の一部が、子どもたちへの教育資金に振り向けられた。そして、その子どもが成長し、働くようになった時に、高い教育のおかげで農村内非農業職や都市の職業に就き、高い所得を得ることができた。つまり、緑の革命による技術進歩により、親の貧困→低い教育投資→子の低所得→貧困という世代をまたがる貧困の負の連鎖が解け、親の農業所得上昇→高い教育投資→子の非農業所得増大→貧困削減という好循環が導かれた。

緑の革命が成功した秘訣は、灌漑施設に裏付けられた豊富な水利用と科学肥料の投入。しかし、近年、都市化の進展や人口増加により、アジアの多くの国では深刻な水不足に陥りつつある。そのため、限られた水資源を用いつつ、いかにして高収量を持続させていくかが喫緊の課題となっている。

水節約的、循環型の緑の革命が成功するか否かは、国際研究機関や種苗会社による新品種の開発努力、地元政府や援助機関によるインフラ投資や普及サービスの多寡によるところが大きいと思われる。

緑の革命については、『食糧と人類』でも述べられていたけれど、改めてこの部分での研究は面白い。

・貿易の自由化
国際経済学では、基本的に貿易を自由化することは良いことであると考えらえている。各国がそれぞれ得意なものをつくるように分業し、それをお互いに交換する。ただ、一つの問題は各国の国内で生じる。各国でその国が競争力のある産業に従事している人々は輸出の増加によって貿易自由化の利益を得るが、競争力のない産業に従事している人々は、他国からの輸入が増加することで、短期的には打撃を受ける。例えば、日本の場合、貿易自由化によって利益を受けやすい産業は自動車、電子・電機産業などで、不利益を被りやすい産業は農業。

→策は
不利益を被る産業を関税で保護し続けることは得策ではない。貿易自由化によって利益を生むためには、競争力のない産業から競争力のある産業へ、労働力や資本などが移動する必要がある。より現実的な対策は、競争力のない産業に従事する人が、一時的に受ける不利益、所得の減少や失業などを緩和する措置を設け、そうした人々が競争力のある産業へ転職を助けるための訓練を実現させること。

・戦うべき相手は保護主義
2007年~2008年の食料価格の高騰とその後の世界経済不況から、多くの国が貿易制限を行ったり、非関税障壁を高めたこと。世界貿易機関(WTO)によれば、2009年初めまでに23か国・地域が計85件の保護貿易措置を取った。たとえばインドやベトナムといった米輸出国が米輸出を制限したので、米を輸入している低所得国の貧困層には大きな打撃となった。これは日本で江戸時代に起こったことと似ている。

著者:高橋和志
1973年生まれ、政策研究大学院大学政策研究科より博士号取得、専門は開発経済学、1998年~2000年青年海外協力隊インドネシア派遣、2003年~2006年日本学術振興会特別研究員(DC1)を経て、2006年日本貿易振興機構アジア経済研究所に入所、同研究所在イサカ(アメリカ)海外派遣員、主要論文に「教育投資、職業選択と非農業賃金の決定因ーフィリピン農村の事例1979年ー2003年」、『貧困と経済発展:アジアの経験とアフリカの現状』


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