CONCRETE CAT

南国特有のハイコントラストの景色とそびえ立つコンクリートの壁。そこがよく見える小屋が俺の職場だった。

「メキシコ国民、壁です!徴収を開始します!」

壁の枝からコンクリートの塊がポンと飛び出して叫ぶ。

DOM!DOM!DOM!

一瞬でコンクリートはゴミクズだ。
木と金属でできた小屋には8連装の機関砲が据え付けてある。俺は定期的にトリガーを引く仕事。ビビってたら徴収されてオワリだ。

壁の内側がアメリカで、外がすべてメキシコ。えらく昔に壁がメキシコの国境に立ちはじめた。アメリカ人がトランプで決めたことらしい。壁は毎日伸び続ける。ここで爪切りするのがメキシコ国民の義務だ。

「おい!ホセ!下にきてみろよ!」

コンクリート回収担当をしているアホのミゲルが叫ぶときはだいたいコンクリート片の中に「イイモノ」がある時だ。俺はすぐさまライフルを担いで小屋の外に飛び出た。

【続く】

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