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エッセイ記念日

モンテーニュがエセーを書いたのは現役を引退したからである。
エセーをエッセー=随筆と考えて、主婦たちがブログを出版しようとしている。けれどたいてい売れない。中には文章に自信がある御仁もいらっしゃる。読んでみると、さすが自信があるだけあって、読ませる文章をお書きになるものである。でも売れないのだ。
文章の巧拙が売れるのとは無関係だ。もちろん上手い方が読みやすい。
でも買われた本は、有名人の本がほとんどで、エッセイストというのも理由があってなるものである。文章が上手ければエッセイストかというとそれともちょっと違うのである。
有名人が絡まないと、あるいは視認性がないとエッセーは駄目なのである。
(有名人にインタビューした実績があるとか、料理専門家として実績があるとか・・・)
こうなると素人では少々手が出せないのではなかろうか。。。逆に実績さえあれば、それこそ文章が多少下手でも編集や校正でなるようになるのである。

エセーはEssai なんというか、試行とかいう意味に近い言葉である。ちょっと出してみたけれども駄目だった。とかでもよいのである。
モンテーニュはかなり長文で文章を残しているが、最初の方では考え方自体が変わっている。
そこで、モンテーニュは悪びれもせず、私は訂正しない。加筆はするが・・・みたいな感じで書いているのである。それが誠実だとも言っているのだ。だってそれが、Essaiなのだから。

Ce n’est pas d'une manière suivie que Montaigne a écrit ses Essais. Le titre même du livre le prouve : essais, qu'est-ce à dire ? sinon tâtonnements, va-et-vient, retouches, absence de dessein et de but, impossibilité de classer et d'intituler.

モンテーニュがこの試行錯誤(エセー)をはじめたのは、1571年のことで、それは1580年まで続いた。自らの城に閉じこもったのだ。彼は本が好きでそれを読んだ。道徳と歴史がお気に入りだったので。それを進んで読み、批判の精神が芽生え、考え、判断した。

Montaigne, une première fois, de 1571 à 1580, s'enferme dans son château. Il a le goût des livres. Il lit. Et comme il va de préférence aux moralistes et aux historiens, et qu'il ne lit point passivement, l'esprit critique s'éveille en lui ; il pense, et il juge.

判断するにあたり、モンテーニュは比べた。比較は彼に必要なことだった。
彼自身の中にいる自然人と比較したのだ。モンテーニュはそういう独白的な会話を続けているうちに無意識に執筆にとりかかったのだ。こうして書かれたのがエセーの最初の2冊なのである。

Pour juger, il compare. Le terme de comparaison qui lui est nécessaire, il le prend en lui-même, en l'homme naturel qui est en lui. Montaigne s'engage donc insensiblement dans la rédaction de ses mémoires psychologiques, mais en « honnête homme qui ne se pique de rien », en causeur qui se défend de faire un livre. C'est ainsi que se formèrent, au jour le jour, les deux premiers livres des Essais (1580).

やがて、モンテーニュはその後旅行や経験をするうちに、すでに書かれたものに立ち戻ってそれを完成させ、そして加筆し、確認した。そうして3冊めが引退後に書かれたのだ。

Puis Montaigne, mûri par les voyages et par l'expérience, revient à ce qu'il a déjà écrit ; il le complète, il le fortifie, il le confirme, et il entrevoit d'autres sujets, d'autres chapitres. C'est l'édition en trois livres qui sort de cette seconde période de retraite (1588).

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実は、私のnoteはいまのところ、最初の1年にあたっている。
のちに読み返して、確認・加筆されるだろう。引退してからの楽しみの準備でもあるのだ。
うちの父は若い時から盆栽をやっていた。たいして興味もなかったがやっているうちに枝ぶりがそれっぽくなり、それなりに楽しめるようになったが、なにしろ仕事と掛け持ちではそうそう時間もとれない。でも父は老人になってからでは、その枝ぶりになるまで相当な時間を要する。愛でる対象を父なりに前倒しで用意することにより、老後の時間を充実したものにしようという意志を示したのである。それは尊い思い出になって老後に思い出すことになるであろう。
 エセーでモンテーニュは、富について、財産を持たなかったために執着を持たなかった。実業家の親が潤沢な財産を残したため無理からぬことでもある。やがて、彼も財産に執着し始めて、いくら蓄えても十分とはいえず、小賢しく立ち回り、いつも不安におびえたまま、4〜5年はそんな状態が続いたという。
 ところがイタリア旅行に出かけてからというもの、彼はまた財産を放棄したのである。

私は4,5年もそんな状態にあった。ところが、どんなよい精霊のおかげか、私はこんな状態から放り出して、貯えの一切を捨てさせてくれたのである。費用のかさむある旅行の楽しみがこういうバカげた考え方を覆したのである。

エセーがもはや金函に取って代わるものになったのである。この著作がもはや彼の財産なのである。

そんな彼にも災難は襲う。モンテーニュがボルドー市長になったとき、ペストが襲ったのだ。5万の人口のうち1万4000人が死亡した。
市民や農民が死んでいくのを彼は何人も看取った。そして、死にいく前に死を考えるなという姿勢で死んでいった人を賞賛するのである。
死のために準備するなんてくだらない、と。

Cette attitude argumentée n’a rien de commun avec l’occultation de la mort comme tendance dominante dans les représentations modernes dont certains anthropologues et historiens nous rebattent les oreilles. On voit resurgir, à l’occasion de la pandémie, une dénonciation d’un déni de la mort qui serait à la fois d’ordre psychologique, social et culturel, voire conceptuel. Il y a ici confusion entre au moins trois niveaux de réalités : la peur de mourir dont l’origine est notre nature biologique, les représentations sociales de la mort propres à chaque société et à chaque époque, et l’idée que chacun se fait de sa propre mort. Dans le sillage de cette caricature de la modernité, teintée parfois d’une certaine nostalgie passéiste envers les sociétés traditionnelles, s’engouffrent maints conseillers, mentors, guides, accompagnateurs et autres coachs qui tiennent à nous proposer, et parfois à nous vendre, un nouvel art de mourir.

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エセーを書いていくうちに モンテーニュ自身が変節したように
私もnoteを書いていく内に、書いたことに矛盾や誤ちを感じることになるであろう。それをここに加筆し続けることにする。

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<来年の宿題>
・エセー(モンテーニュ)
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