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生命保険の日

生命保険のトップセールスマンの集りからなるMDRT日本会が記念日に制定。生命保険初の受取者が出たんだそうだ。1882年1月31日のことである。

生命保険が受け取られたということは、人が死んでしまったわけで、追悼ならわかるが、記念日というのはどこかおかしいと感じた。どこに違和感があるのか自分なりに考えてみると、親族でもない保険のセールスマンが人の死を商売に変えている感覚があるのである。
つまり、平均寿命より早く死ぬと当たりの宝くじに入っているというのがその仕組みで、その”当たり”がはじめて出た日が138年前だったということだ。生命保険については、宝くじの日に書いた。

今日はこれを、例をあげて説明してみよう。
癌と診断されたら100万円もらえる保険を勧められたとする。掛け金は1500円としよう。あなたが30代の女性だった場合、入るだろうか・・・
国立がんセンターが出しているデータでは30代女性が10年以内に癌になる確率は、100人に1人である。このとおりでいくと、100人に1人が100万円を受け取るというわけである。この宝くじをあなたは買うだろうか。ちなみにこの宝くじの代金は、18万円だ。(1500円を10年掛け捨てで支払った場合の料金)さぁ、これで安心が手に入ります。癌になる不安を安心に変えるため18万払ってください!と云われたらどうだろうか。
 もしかすると、だいぶ高いと感じられたかもしれない。18万ずつ集めて、100万が当たりの宝くじの還元率はたしかに低い。還元率から考えると、生命保険よりも競馬のほうが還元率は高いくらいだ。そのような還元率に設定しないと生命保険を営んでいる会社は軒並み倒産するか、保険のセールスマンの給料がぐっと下がるかのどちらかである。(どういうわけか保険の還元率は公表しているが、保険の運営にかかる手数料などの運営費は公開されていない)
 でも、いいのだ、生命保険のセールスマンになるのにFPという資格は必ずしも必須ではなく、学歴も関係ない。自分の人脈などを使って売上をあげれば、学歴をひっくり返して、一流企業の手伝いができるのである。雇用の裾野を幅広くするのにちょうどいい仕事であるし、所詮世の中の仕事は暇つぶしであれば、糸車を巻いて解いてまた巻いてそれが生きていく糧になるのであればとてもいいのである。
 しかし考えてみれば、この商売には競合がいる。すなわち国である。日本に住んでいるならば、国民皆保険制度なので、公的保険には入っているはずである。だから国の制度の不安をあおり、足りないと思わせないといけない。そのときに”入用”になるのは皆同じである。一度に用意できないお金に対し備えはすでにあるが、それに厚みをもたせるということである。
 よって、買う人の性格も限られてくる。もしもその入用にものすごく不安を感じて、安心に変えたいというのなら、それは、防災グッズを常に携帯して街を歩くのと同じくらい不安症か、日常生活が相当きつくて、せわしくなるのを極度に嫌がる面倒くさがり屋のいずれかであるように思う。(セカンドオピニオン(最先端医療)を受けないと治らない病気にかかったのなら、いくらあっても入用である。)
 いろんな人もいて掛け捨てを嫌がり、貯蓄型の保険に入りたがる人もいる。なるほど、でも先程の還元率の伝でいくと、手数料がやたら高いATMの金融機関に貯金する人がいるだろうか・・・
 保険会社の運用の多くは、失敗しないようにできている。そのため運用の多くは長期国債を購入して運用している。国債の利率低下を跳ね返すほどのうまい運用なんて、この世に存在しない。そのため長期国債の利率が下がるたびに、保険料は値上げしなければならない仕組みなのを思い出してほしい。保険は掛け捨てに限ると私のFPが言うのは保険会社側でなく私のことを考えてくれているのだと気づくのである。
 そういった積立保険は、たいてい35年払い込めば110%が返ってくるというものだ。これも冷静に考えてほしい商品だ。これも話を簡単にしてみよう。なにか仕事をして報酬が100円だとしよう。よし報酬を受け取ろうと思って、依頼主のところにいくと、35年待ってくれたら110円支払おう、それでどうだ?と云われたら、あなたはOK出すだろうか、という問題となんら変わらない。

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 年金不安というものがある。国民年金の運用が破綻するという不安だ。少子化の世の中で国民1人を養う若い世代が減ってくる。この不安につけ込んでくる金融商品が山程ある。その商品を買うだろうか・・・
 まずは常識に頼って考えてみよう。国の運営が不安だから、民間が運営する個人年金に入ろうという論法について、どう思うかだが、民間の保険会社の中には、運用が不安だから、個人年金の取り扱いをやめた会社もある。
国は個人年金の取り扱いをやめたなんて云わないだろう。どっちを信頼するだろうか。それでも不安なら日本にいなきゃいい。人口構成の違う国はたくさんある。そもそも年金は国の収益の再分配である。だから足りないかもしれないが、再分配は確実にされる。もらえないということはない。足りないかどうかは個人のお金の使い方がすべてである。このnoteでも老後について書いたことがある。もしも働き手が将来少なくなるのであれば、私は働く方に回ろうと思っているのだ。そう覚悟すれば、老後の不安なんて今のところ皆無である。

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 私は大学を出て建設会社に勤めた。そのときに、駅前の一等地に構えている保険会社や金融会社がやたら多いことに気づいた。上司にきくと、街づくりの基本がそこにあり、デベロッパーの交渉により我々が潤っているんだと教わった。だとすると、人の不安を煽り、金をせしめる仕組みを利用して社会人デビューを果たせたということになるのだから、保険会社の不利益になるような発言をすると、バチがあたってしまう。
 だから違う言い方をしよう。保険は、”とりあえず安心したい人”へのサービスなのである。そして、保険会社は尊い情熱と野心をもっているのだ。
それは、この世に存在しない絶対安心を求めるという情熱と、さらに、今はなくなってしまった老後という生活を復活させるという野心である。

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<来年の宿題>
・生命保険の歴史
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東洋経済オンラインの記事。私が国民皆保険と書いたが、それがそうでもないというものである。元気で働き続けられれば解決であるが、民間のオンブズマンはどのように考えるのだろうか・・・
(画像はこの記事からお借りしました)


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