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おやすみなさい



「おやすみなさい」



この言葉、好き。

さようならも、おつかれさまもいいけど、もっと親しみがこもった感じがする。眠るときの無防備な時間を、ほんのり予感させるからだろうか。
今日も一日、よく頑張りました。もう、休んでいいよ。
そんなねぎらいの意味合いが、こもっているからだろうか。


「おやすみなさい」


この言葉を交わすだけで、心がふわふわ浮いていく。ふかふかベッド、ふっくらまくら。あったかゆたんぽ。ゆめごこち。


小さなご飯屋で夕食を済ませ、入口の引き戸を開けると外は真っ暗。背中から聞こえてくる店主と奥さんの「おやすみなさい」
普段は昼間しか顔を合わせないパブリックな関係の人たち。彼らと合宿やお泊りに行った際、初めて見せ合う寝ぼけ眼の顔で交わす「おやすみなさい」
友人や恋人と夜遅くまでラインが続く。今頃相手はもうベッドにいるのかな、と想像しながら最後に送り合う「おやすみなさい」


どれも素敵。
もしかしたらわたしたち、「おやすみなさい」を交わすことで、信頼を築いているのかもしれない。
人とどんどん親密になれる魔法の言葉。


「おやすみなさい」


この言葉にはちょっとしたスパイスが隠れてる。
相手を思いやる言葉なのに、日本語には珍しい命令形なところだ。
思いやるからこその強さ、肝っ玉母ちゃんみたいな感性、そんなところも愛らしい。
きっとこの時間、至る所で交わされているこの言葉。労りと優しさの送り合い。
この言葉を最初に発明した人はきっと優しい人だったのだな、と想像させられる。あなたの優しさが、今では温かな布団のように日本全国を覆っているよ。


今日も1日頑張りました。一週間お疲れ様でした。3月を精一杯生きました。寒い冬をよく乗り切りました。みんなみんな、ありがとう。
今夜はゆっくりやすみましょう。




おやすみなさい。




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#3月

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