もてなしおかし


この間いとこ家族が家に遊びに来たのだが、唯一不服だったことがある。
それは、食卓に出しておいたお菓子に一切手をつけてくれなかったことだ。

せっかくクッキーだのマドレーヌだの歌舞伎揚だの、いろんなお菓子をてんこ盛りに盛り付けたのに、全然食べてくれなかった。

もちろん食べることを強制しているわけではない。お腹が空いていなかったり、この後のお昼で思いっきり食べたいから余計なもので腹を満たしたくなかったり、それぞれ事情があるのはわかる。それでも、せめて「このお菓子なんてとこの?」とか、「これ美味しそう!」とか、話題にあげてくれてもいいのになあ・・・。

お互いの子供の進学の話とか、親戚の笑い話とかが飛び交う中心に、お菓子たちは華やかなパッケージに身を包んで並べられていた。なんとも誇らしげに、可愛らしく。その姿は、今か今かと手に取ってくれるのを心待ちにしているようだった。

それでも、ついに触れられることのなかったお菓子たち。いとこ家族が帰ってしまっても、彼らを待っていた頃と全く同じように、見事な形態をなしていた。でも最初と違って、なんだかどことなく悲しそうに見えた。もう誰のことも待っていないお菓子たち。お菓子としての使命を果たせなかったお菓子たち。それでも彼らはいつも通り、明るく笑っていなきゃならないのだった。


今、この文章を書いていて気づいたことがある。それは、いとこ家族がお暇する際、持たせてあげればよかったということだ。「帰るときにでも食べて頂戴」とかなんとか言って。
わざわざ個包装されているものだし、生物でもないし、あのお菓子たちは絶対にあの場で食べられる必要はなかったのだ。ああ、そうだったのか、正解は。お菓子たちを見放したのは、実は私たちもてなす側の方だったのかもしれない、、、。


まあ、何はともあれあの後、
取り残されたお菓子たちは、無事私と母のお腹に収まったのだけれど。




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