SHIRO✳︎くろの物語✳︎


しろとくろは、自分たちがいた画用紙のある机の上にいました。

そこからはまるがおくんたちのいる画用紙も、ベルたちの家も積み木の国も見渡せました。

「たくさん冒険をしたね。
いろんな人たちと出会って仲良くなれて楽しかった。」

しろが言いました。

「そうだね。」

くろが言いました。

それからしばらくお互い黙っていましたが、くろがつぶやきました。

「ねぇ、しろ。
きみはこの冒険でどんな発見があったかな?」

「うーん、」

しろは少し考えた後

「いろんな人たちがいると思った。そしてみんな、あったかくて素敵な人たちだった。
ぼくは自信を持っていいし、ありのままの自分でいいんだって思えたし
出会った人たちもいろんな悩みがあったけど、ありのままの自分で輝いて見えたかな。」

「そうだね。」

くろはそう言ってまた黙りました。

急にくろは立ち上がると、振り返り画用紙のところに帰ろうとしました。

「どうしたの?もう帰るの?」

しろが尋ねると

「ちょっとね。」

そう言ってそのままくろは言ってしまいました。


次の日、しろはまるがおくんたちと遊んだあと、黄色いベルの歌を聴きにいきました。
出かける時、くろに声をかけましたがくろは出てきませんでした。

次の日も、その次の日も、

くろは動きませんでした。


そんなことが続いたある日、思い切ってしろはくろに尋ねました。

「ねぇ、最近何かあったの?
ぼくでよければなんでも聞くよ。」

くろは黙っていました。

「ぼくが外に出られたのはきみがいてくれたからなんだ。
勇気がなかったぼくの後押しをきみがしてくれた。
だからきみがもしなにかで困っているなら、今度はぼくが力になりたいんだ。」

「ごめん、ずっと羨ましくて
そのうち自分が嫌になってしまってね、
ずっとこうしてた。
こうしてたってなにも変わらないのにね。」

くろが言いました。

「羨ましいって、なにが?」

しろが尋ねました。

「しろや、みんながだよ。」

くろの答えにしろはとても驚きました。

まさか自分が羨ましがられるなんて思わなかったのです。

「それは、、どうしてなの?
ぼくからしたらきみのこと羨ましいって思うけど。」

そう言った瞬間、勢いよくくろが画用紙から飛び出してきました。

少し怒っているようでした。

「ぼくのことが羨ましい?どこが?
適当なこと言わないでくれる?」

くろの言葉と勢いに、しろは驚き後退りしました。

「気を悪くしたならごめん、でも適当なことは言ってない。ほんとなんだ。「

「じゃあ言ってみてくれる?
ぼくの羨ましいところ。」

今まで見たことのないくろの姿に、戸惑いつつも、しろは答えました。

「1番は行動力だよ。きみは、おそれず行動できる。行ってみよう、やってみようと言って周りを巻き込む。
ぼくみたいな人に勇気をくれる。
勇敢で、優しいと思っているよ。」

しばらくくろは黙っていました。
しろも黙ってくろを見つめました。

はぁ、、、

くろがため息をつき、言いました。

「うん、ありがとう。
みんなそう言ってくれる。頼もしい、くろのおかげで勇気が出た。
それはぼくにしかできないことなのかもしれないね。
でもぼくは羨ましいと思ってしまう。
それがなにかわかる?」

しろは首を横に振りました。

「ぼくはね、居場所を感じたいんだ。
ここにいてもいいんだって居場所をね。
誰と一緒にいても、なぜかちょっと寂しい気持ちになるんだよ。
まるがおくんたち同士はいつも一緒で互いに尊敬しあっていた。
ベルたちだってみんな思い合ってた。
積み木の国でもそう。
しろも少しずつ居場所をつくってる。
それなのに、、ぼくだけ居場所がないって思ってしまうんだよ。」

しろは驚きました。
まさかくろがそんなことを思っていたなんてきがつかなかったのです。

一緒に冒険をしていて、くろにとっても出会った人たちが友達で
ここのみんなとの時間が居場所になっているとばかり思っていたのです。

「居場所ってどうやって見つけるんだろうね。」

くろはもう怒っておらず、ちいさくつぶやきました。

しろは考えました。

居場所ってどうやってみつけるんだろう?

それから

くろはどうして居場所がないって思ってしまうんだろう?

と思いました。

でもすぐに答えは出ませんでした。

「怒ってしまってごめんね、
これでもぼくもずっと考えてるんだ。
どうしてだろうって。
どうしたらいいんだろうって。」

そういうとくろはまた画用紙に帰っていってしまいました。

しろは考えましたがわからず、まるがおくんたちを尋ね、くろとの出来事を話しました。

それからベルたちのところにもいきました。

積み木の国のティムと小鳥夫婦、小人たちにも打ち明けました。

みんなそれぞれ考え込んでいました。

ティムがなにかに気が付いたように言いました。

「もしかして、くろは特別に愛されたいって思っているのかもしれないね。
他の誰かじゃなく、くろが好き、くろといるのがすきって思われたいのかもしれない。
寂しいなって気持ちはちょっとわかるんだ。
みんなくろのこと大好きだから、それがくろに伝わるといいな。
いくら僕たちがいろいろやったり、言ったりしてみてそれで満足できたとしてもしばらくしてまた同じ気持ちになってしまうと思うんだ。
くろ自身が心から思えないとね。」

「そうだね。」

しろも言いました。

その会話を実は積み木の陰で、くろが聞いていました。
しろが毎日出かけていて、考え込む表情をしていたのをくろは見ていたのです。
そして、しろがなにをしているのか、本当はわかっていたのかもしれませんが、それを確認するためにしろの跡を見つからないよう追いかけたのでした。

ティムの言う通りだな

とくろは思いました。

くろは誰かに1番に愛されたいと思っていました。

誰かの特別でいたいと思っていました。

そしてほんとは居場所はあるのかもしれない、ほんとは大切に思ってくれてる人はいるかもしれないという思いと、そう思って違ったら怖いという思いがありました。

信じたいのに、傷つきたくなくて踏み込めずにいました。

そしてそれは、誰かに気持ちをぶつけてもしょうがなくて

全部くろ自身の心にあることもわかっていました。

しろはぼくのためにこんなにたくさん動いてくれた。
しろにひどいことも言ったのに。
ぼくのことを考えてくれてる人たちがこんなにたくさんいた。
それなのに、ぼくはみんなのことを、ぼくのことを信じられていないんだ。

ぼくが勇気をもてば、、変われるだろうか。

くろはおそるおそるしろとティムがいるところに歩いていきました。

ふたりがそれに気付きました。

「もっと自分のこともみんなのことも好きになって、信じられるようになりたい。
ほんとのぼくは弱虫なんだ、それを隠して過ごしてきた。
でももう隠すのをやめたい。
怖いけど、ぼくはもっとありのままのぼくでいたいし、ありのままのぼくでみんなといたい。
みんなといる時間が大好きだしみんなとの場所がぼくの居場所になれたらほんとに幸せだから、、」

くろが勇気を振り絞って言いました。

しろがくろの方へ近づいていき、しゃがみ込んでくろと同じ目線になりました。

「くろならできるよ。
頼もしいくろも、弱いくろも、どんなくろもぼくは好きだよ。
どんな時もそばにいる。
みんなもきっと同じ気持ちさ。
だって、きみは代わりなんていない大切な友達だからね。」

そう言ってしろは笑いました。

くろは目に涙を浮かべ、

「本当に、ありがとう。」

しろにからだをすり寄せ、言いました。

その日はじめてくろはここが自分の居場所なんだと思えたのでした。







✳︎ひとこと✳︎

やっとSHIROの続きを投稿できました。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
このくろの物語は、わたしの心の叫びをもとにうまれました😃

ずっと満たされないと思っていて、周りが羨ましいと感じていて

なんでだろう?って考えた結果

誰かの特別でいたいんだなという気持ちにたどり着くことができた日がありました。

誰かに認められたい
1番になりたい
同じ気持ちか確認するのが怖い

くろの気持ちと葛藤は、わりと身近にあるものではないでしょうか?

ここまでクールでいたくろ。

実は内に秘めている思いは、意外と周りは気づかないもの。
いつも笑っている人も明るく振る舞っている人も、クールで動じない人も
悩んでいること、辛かったこと、立ち直れなくなってること
あるかもしれない😃

辛い、悲しい、と言いたいけど言えずに苦しんでいるかもしれない。

そんな人がもしいたら、誰かに言葉にしてSOSを出す勇気を、自分に許可を出してあげましょう。

そして誰かのSOSを、心の叫びを
優しく抱きしめてあげましょう💐

そんな素直で、優しい世界にもっともっとなっていきますように😌

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?