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SHIRO


✳︎プロローグ✳︎

ある女の子の部屋の机の上に、女の子の描いた絵がいました。

男の子の絵、猫の絵、たくさんの顔や花。

絵の男の子は女の子が昼寝をしたり、お出かけをしている間のびをして、画用紙のなかから外をながめるのが大好きでした。

よくあそぶおもちゃが並んでいたり、たくさんの絵本があったり、お絵かきで使う色鉛筆やクレヨンが置いてありました。

窓には水色の空と白い雲が見えて、時々鳥が飛びながら通り過ぎていきました。

男の子はそんな景色をみて、ずっと外に出てみたいと思っていました。
でも画用紙から飛び出したら、なにが起こるかわかりません。
それが怖くて、いつもみているだけでした。

ある日のこと。
男の子がいつものように外を見ていると、男の子の近くに描かれていたねこが声をかけてきました。

「やぁ、きみはいつも外を見ているね。面白いものでもあるのかい?」

男の子は突然話しかけられて驚きつつも答えました。

「こんにちは。うん、外は楽しそうなものがたくさんだよね。積み木の家には誰かいるみたいだし、ほら、お人形も動いてる。
窓を見れば雲が動くのが見えるし、ずっと見ていられるんだ。」

「そんなに言うなら、ここから出てもっと近くで見てみたらどうだい?」

ねこの言葉に男の子は驚いて飛び上がり、首をぶんぶん振りました。

「とんでもない!怖くて、そんなことできないよ。それに、ここから出るなんてこと、きっと出来ないよ。」

「そうなの?ぼく、いつもここから出て散歩してるけど。」

そう言ってねこはぴょんっと画用紙から飛び出しました。

「うわ!」

男の子は驚いて、ねこをじっとみたりキョロキョロ周りを見回しました。

「ほらね、なにも危ないことはないだろう?
やってみないとわからないものだよ。」

ねこが澄まして言いました。

「ずっとみてるままじゃもったいない。
勇気を出して、きみも出てみたら?」

男の子は胸をドキドキさせながら、ねこの言葉を聞いていました。

目の前で画用紙から飛び出す瞬間を見て、自分もいけるかもと思いました。

でも怖くてまだ足は震えていました。

おそるおそる男の子は片足から画用紙の外へ出ました。そして目をつぶって、思い切って飛び出しました。

しばらく震えが止まらず目も開けられませんでした。

「大丈夫さ、さ、ゆっくり目を開けてごらんよ。」

足元でねこの声がしました。

男の子は、ゆっくりと、目を開けました。

まず陽の光のまぶしさに目がくらみました。
そして目の前に、行ってみたかった景色が広がっていました。
それは画用紙の中で見るよりも輝いて見えました。

「わぁ、、

思わず男の子が声を漏らしました。」

「気分はどう?」

ねこが尋ねました。

「うん、、まだ少し足が震えてるけど、でもなんだろう、ドキドキしてるし怖い気持ちもあるけど、それ以上にワクワクするな。
外に出れたんだ!」

それを聞いてねこが楽しそうに笑いました。

「大袈裟だなぁ、でも、きみにとっては大きな一歩なんだね。
せっかくだから、一緒に冒険しよう。
いってみたかったところへ行ってみよう。」

「うん、、ぼく、だれかと友達になれるかな。」

「行ってみないとわからないけど、おそらくできるさ。
ところで、、きみ、名前はなんて言うの?」

「え、名前?」

男の子には名前がありませんでした。

「ぼく、まだ名前がないんだ。」

「そうなのか、ぼくもだよ。
といっても名前がないのは不便だからぼくは自分で名前をつけてるよ。日によって変えてる。ある時はレオ、またある時はキッドとかね。」

ねこが得意げに言いました。

「そうなんだ、じゃあぼくも名前をつけよう。なにがいいかな、、、」

男の子が考え込んでいると、

「そうだね、きみまっしろだから、しろなんてどう?覚えやすくていいんじゃないかな。」

とねこが言いました。

「しろ?
うーん、、ぼくはほんとはいろんな色がいいから、しろだとちょっとあれだけど。
また気が向いたら変えたらいいか。
それに、名前第一号をだれかにつけてもらえるって嬉しいかもね。
じゃあ、、」

しろはしゃがみ込んでねこと同じ目線になると、

「ぼくがしろなら、きみはくろだ。」

と言いました。

ねこは驚いて目を見開きました。

「あ、だめだった?」

しろがおそるおそる言うと

ねこはしばらく考え込んでから

「うーん、、もっとかっこいい名前が好きなんだけど、でもくろか。悪くない。
しろとくろ、いいコンビの誕生だね!」

こうしてしろとくろは、ふたりで机を歩いていき何が起こるかわからない冒険に出かけていくのでした。

第二話 ✳︎落書きたちの物語✳︎
https://note.com/piyokiwi/n/ncfd17f88d597

第三話 ✳︎歌う人形の物語✳︎
https://note.com/piyokiwi/n/n6a1f3706ccf5

第四話 ✳︎積み木の国と機関車の物語✳︎
https://note.com/piyokiwi/n/n7d0bcf3d2698

第五話 ✳︎くろの物語✳︎
https://note.com/piyokiwi/n/nd64bcfafcd90

第六話 ✳︎エピローグ✳︎
https://note.com/piyokiwi/n/n0a7b4bf3eec1



︎ひとこと✳︎

最後まで読んでくださり、ありがとうございます💐

私が絵本として出したいと思っている「SHIRO」がスタートしました。
テーマは「自分らしさの大切さ」「ありのままの自分でオッケー」
そんなメッセージをたくさんの登場人物がプレゼントします。
今後の物語も楽しみにしていてください。

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