にじのふく


あるところに洋服屋さんがありました。
店主はうさぎの夫婦です。
この洋服屋さんはその動物にぴったりの服をつくるので、大人気です。

きりんには首のところが長いタートルネック。

ライオンはたてがみをおしゃれにまとめられるアクセサリー。

ねずみやねこなど小さなからだの動物たちの服。

ぞうやくまなど大きなからだの動物たちの服。

帽子やマフラー、靴までたくさん揃っています。

ある雨上がりの日のこと。
いつものように洋服屋の準備をしていると、ふと空にきれいな虹がかかっていました。

「みて、あなた。きれいな虹だわ。」

奥さんが言いました。

ふたりで虹に見惚れていると、最初のお客さんがやってきました。

カメレオンのおばあさんでした。

つばの広い帽子を被り、きらびやかな服にネックレスをしています。とてもおしゃれ好きなおばあさんのようでした。

「いらっしゃいませ。」

旦那さんが声をかけるとおばあさんは笑顔でいいました。

「おはようございます、朝早くにごめんなさいね。ここがお客さんにあった素敵な服をつくってくれると聞いてやってきたの。」

「そうでしたか、遠くまでありがとうございます。それで、どういったものをお探しで?」

おばあさんさんは少し考え込んだ後、

「うーん、そうね。わたくし誰も見たことのないような特別な服が欲しいなと思っていたのよ。」

それから空を見上げて

「たとえば、あの虹のような色鮮やかな服は用意できるのかしら。」

旦那さん、奥さんも一緒に空を見上げて虹を見ました。

いままで一度もつくれませんと言ったことのない旦那さんは、迷わず

「ええ、もちろん。用意できますよ。
つくっておきますので出来上がったらまたご連絡します。」

「嬉しいわ。楽しみにしていますね。」

おばあさんはそう言うと連絡先を伝えて立ち去りました。

旦那さんと奥さんはどうやって虹色の服をつくるか考えました。

これまでいろんな色の服はつくってきましたが、虹色の服をつくるのははじめてです。

「服を染めるにしても、他の色と混ざってしまったら虹色にはならないしどうしよう。」

考えていると、コンコンとドアをたたく音がしました。

ドアを開けるときつねが立っていました。

「こんにちは、新しいズボンが欲しいんだけど注文いいかい?」

「もちろんですよ。」

奥さんはそう言ってキツネから、どんなズボンがいいかいくつか質問をしました。

ふと、机に置かれた紙を見てキツネが言いました。

「面白い服を作るんだね。これもだれかの注文なの?」

それは旦那さんが描いた虹色の服のデザインが描かれた紙でした。

「そうなんだ。ただ虹色にするのはこれがはじめてでね。どうやったらきれいな虹色になるか、考えていたところなんだ。」

旦那さんが答えました。

「ああそれなら、面白い話があるよ。」

きつねが言いました。

「その話が本当なら、虹色の服がつくれるかもしれないよ。」

「それは本当かい?よかったら教えてくれるかな?」

旦那さんが言いました。

「もちろんいいよ。いつもお世話になってるからね。」

そう言ってきつねは話し始めました。

「これは噂なんだけど、アッチ森に魔法が使えるくろねこが住んでるんだって。
どんな魔法かはわからないんだけど、望むものはなんでも叶えてくれるらしいよ。ただ、なんでも叶えてくれるわけではないみたいだけど。」

「それは訪ねてみる価値がありそうだね。」

うさぎの夫婦は次の店の休みの日に、アッチ森に行ってみることにしました。

アッチ森の奥に続く道をしばらく歩いていくと、煙突から煙の出ている三角屋根の家が見えてきました。

家の前まで来て、旦那さんが扉をノックしました。

ガチャ

扉が開き、中からくろねこが顔をだしました。

「お客さんなんて珍しいね。どちらさま?」

くろねこが言いました。

「洋服屋をしているものです。あなたがなんでも魔法で叶えてくれると聞いて、尋ねてきました。」

「ほぉ、どこで噂を聞いたのやら。
まあとりあえずたくさん歩いたでしょう、中にお入りなさい。」

そう言ってくろねこが家に入るよう促しました。

家の中には壺や液体の入った瓶、大きな本棚には難しそうな本が並んでいました。

木のテーブルと椅子があり、花瓶が置いてありました。

椅子に座るよううさぎの夫婦に言うと、くろねこは棚から紅茶の葉とポットをとりお茶をいれました。

「わざわざありがとうございます。」

夫婦が礼を言うと、くろねこも椅子に座り

「いいのよ。お客さんなんてほんと久しぶりだし。」

くろねこが言いました。

「それで、あなたたちの叶えたいことってなんなの?」

うさぎの夫婦は、カメレオンのおばあさんに虹色の服を頼まれたことを話しました。
くろねこはじっとその話を聞いていました。

「面白い話ね、虹色の服か。確かに着ている動物は見たことがないし珍しいわね。
もし、それをつくることができたらわたしにも1枚頼めるかしら。」

「もちろんです。」

旦那さんが即答しました。

「ありがとう。楽しみだわ。ちょっと待っていてね。」

そう言ってくろねこは部屋の奥に消えていきました。

しばらくして戻ってくると、1枚の鏡を持っていました。

「これは特別な力を持った鏡なのだけど、これで反射させると、うつしたものが反射させた先にうつるものなの。これで虹の下で反射させて白い服にうつしたら、虹色の服になると思うわ。」

「ありがとうございます。」

夫婦は鏡を受け取ると、深々とお辞儀をしてお礼を言いました。

「虹色の服、楽しみにしているわ。」

くろねこはニコッと笑って言いました。

さっそく洋服屋に帰ると、夫婦は白い服を用意しました。

しかし虹は消えてしまっています。

「次の雨上がりの日がチャンスだね。」

それから雨が降る日をずっと待っていました。

雨が降る日を待ちながらも、洋服屋には次々とお客さんがやってきます。毎日お客さんの希望を聞いて服を用意しながら、夫婦は雨を心待ちにしていました。

そして数日たったある日、雨が降りました。

そして雨上がりの朝、夫婦は早起きして鏡と白い服を持ち、虹の真下を目指して走りました。


虹の真下につき、奥さんが白い服を持ちました。

「いくよ。」

旦那さんが鏡を持ち言いました。

「うん。」

奥さんがうなずきました。

旦那さんが鏡を傾けて、虹が映るようにしました。そしてそれが白い服に映るように向きを変えました。

すると

少しずつ白い服に虹がうつしだされたのです!

夫婦は2人、感動し飛び上がって喜びました。

「すごい!虹の服だ!」

旦那さんが言いました。

「これでカメレオンのおばあさんも喜ぶわ。」

奥さんも喜んで言いました。

それからすぐにカメレオンのおばあさんに連絡をしました。

少しして、カメレオンのおばあさんが洋服屋さんにやってきました。

「虹の服、できたのね。」

「こちらです。」

できたばかりの服をおばあさんに見せました。

それは虹色になった白いワンピースでした。

おばあさんはうっとりとそのワンピースを見つめ

「素敵だわ。こんな素敵な服が手に入るなんて。ここに来てよかったわ。本当にありがとう。」

おばあさんは嬉しそうにワンピースを抱きしめていました。

うさぎの夫婦はもう一つ虹の服をつくっていました。
それを持ってアッチ森のくろねこを訪ねました。

そしてくろねこにも虹の服を渡しました。

「まぁ、とても綺麗にできたのね。お役に立てて良かったわ。そしてこんな素敵な服を届けてくれてありがとう。」

「お礼を言いたいのはこちらの方です。おばあさんにも喜んでいただけました。本当にありがとうございます。」

夫婦とくろねこはその日をきっかけにとても仲良しになりました。

そして、虹の服の噂が流れ動物たちが虹の服を求めてやってくるようになりました。
雨上がりの日に数枚しかできない虹の服は大人気。帽子もマフラーもつくりました。

そしてまた今度は新しいデザインの服について、くろねこと話し合っているようです。

次はどんな服ができるのでしょうね。



✳︎ひとこと✳︎

最後まで読んでくださりありがとうございます💐
新作です!
ほんとさっきできました✨笑

雨の日は気持ちも沈んでたけど、雨上がりに虹をみて嬉しい気持ちになってたなーなんて思って

虹をテーマにお話描きたいってなってうまれました🌈🌈

書きながらふと、今の時期祭りが多いみたいで浴衣や甚兵衛を着て歩いてる人たちを見かけます🌻
次は夏を感じられるような物語書きたいなー🏝️

次回作品もお楽しみに✨

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