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もうクリスマスだが今日も半袖

夫は東京に住んでいた頃から、なぜかラジオ局のNACK5(埼玉ローカル)をこよなく愛しており、カーステレオのチャンネルは常にFM79.5にキープされていた。ちなみに埼玉に住んだことは一度もない。
故郷である伊良部島に帰郷した後もその癖は抜けていないらしく、なぜかradikoをエリアフリー契約(有料)してまで、今もNACK5を聞いている。そして私も共に車に乗る度にNACK5に付き合わされている。なぜ遠い南国に来てまで埼玉発(繰り返すが夫婦ともに住んだことがない)のラジオを聞いているのか…。

そんな訳で、先日も夫のスマートフォンから流れるNACK5を流しながらドライブしていたら、レミオロメンの「粉雪」が流れてきた。
お馴染みのサビを二人で熱唱したあと(やるよね)、いやー季節外れだよねえこの曲!と口に出しかけて、はっと気付いて飲み込んだ。
私の服装は、半袖のTシャツにビーチサンダル。
しかし、季節は十二月。ラジオの向こうの埼玉県民は、間違いなくコート着用の冬真っ盛り。
どう考えても、季節外れは私の方だ。
よくよく聴くと、DJのトークもゴリゴリに寒さとクリスマスの話題で盛り上がっていた。日付を振り返ると、十二月も終わりが近い。今月に入って忘年会も数回は参加したはずで、仕事でも年末年始向けのデザインなど作っていたはずなのだが、頭では理解していても体感が追い付いていない。

こちらは四季がないから、内地から移住すると季節感が変わらないまま気付くと歳を取っていくんだよ…という話を最近聞いた。ちょっとホラーだ。今までの人生で刻まれていた体内時計が、暦の移り変わりを認識できていない感じ。いっそ、この調子で老化現象もストップしてくれないだろうか。無理か。

内地に住んでいた頃は、四季の中でも秋が深まると憂鬱になった。北国出身の割には寒さにめっぽう弱くて、十二月の初旬で既に春が恋しくなったほどだ。冬場に実家へ帰ると、こんな寒いところでどうやって生活できていたのか…とぼやく程度には寒さに弱い。

それでも最近、ヒーターが点くのを震えて待つ朝とか、首をすくめてストールに顔を埋める帰り道とか、Tシャツに腕を通しながらも、そういうものが懐かしく思えてしまう時がある。足元の水たまりに張る薄氷、朝の通勤路ですするコンビニのホットコーヒー、冷えた空気にきらきら輝くイルミネーション。かつて好きだった冬の情景。
島に来て九ヶ月、初めてホームシックらしきものが芽生えて、輝く紺碧の海を眺めながらもちょっとだけ泣けてしまった。暖かい環境だからこそ寒さが懐かしい…寒いのが嫌いな癖に、人間とはつくづく贅沢な生き物…。

本日はクリスマス、南の国では今日もハイビスカスが揺れている。
半袖で過ごすクリスマスにも、そのうち慣れるんだろうか。

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