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毎月の献立を解説、 献立が出来るまでのプロセスを見せる懐石料理店 月次レポート研究所のポッドキャスト 2023年10月 テキスト版

こちらのポッドキャストのテキスト版です。

私が株式投資で殖やしたお金の再投資先は「食」なのです。


renny:月次レポート研究所のポッドキャスト、2023年10月号です。月次レポート研究所と銘打っていますが、ここ数ヶ月お話してます通り、なかなか取り上げるレポートがないということもあり、ちょっと違った切り口で投資に話を広げていこうということで、これまで読書やJリーグクラブの決算内容をテーマにお話してきました。Jリーグをテーマにお話したら、吉田さんのnoteに有名な方がフォローされたんですよね。

吉田:昔、Jリーグの審判をされていた家本政明さんからフォローされてびっくりしました。

renny:ポッドキャストの書き起こしの記事に「いいね」「好き」という痕跡を残してくださった方も、普段とは属性の方でしたよね。

吉田:全然違いましたね。

renny:読書のときもそんな感じでしたよね。同じような流れで吉田さんからご提案いただいた今日のテーマは、、、

吉田:私の食べ歩きについて語ると、きっと何かしら投資と繋がるだろうなと。

renny:僕は食べ歩きっていうほど食べ歩いてないですが、その吉田さんはどのくらいの頃から食べ歩きしてるなっていう自覚を持ちになったんですか。


食べログ4.0以上のお店を巡った頃(2010年頃~)

吉田:2010年頃に「食べログ」の存在に気がついたあたりからかな。食べログができる以前は、大体百貨店の一番上やホテルに入っているお店が美味しいってイメージでした。昔はホテルとか百貨店のブランドの上に乗っかっていたんですね。でも食べログの口コミによって評価される時代がやってきて、高い家賃とかを払って、一等地にお店を構えなくても、美味しい料理を作れば、繁盛店への道が開かれるって、あそこは時代の転換点だったんだろうなって思いますね。

renny:最初は食べログでお店を探すところから、ということで、掘り出し物って言ったらおかしいですけれども、お店を見つけたということはそこそこあったんですか。

吉田:あの当時はやらせの口コミが増える前だったので、大体評価が4点以上のところ、片っ端から食べに行けば、全部アタリみたいな感じでした。

renny:食べログ4点以上をベンチマークにして、お店を選ばれてたということですか。ちなみに料理のジャンルで特にお好きなものってあるんですか。

吉田:ジャンルはとくにないですね。強いて言うならお寿司があまり好きじゃなくて、お魚は生より天ぷらで食べた方が美味しいなって思ってしまう。

renny:なるほど。天ぷらということは洋食よりも和食って感じなんですか。

吉田:イタリア料理も好きですよ。

renny:あ、そういえば「ひらまつ」がイタリアンやフレンチでしたね。コロナがあって飲食業をやられてる方にはすごく厳しい時期が数年あったわけですけれども、今はほぼ平常に戻っているのですか。もう食べ歩きは再開されてる感じなんですか。

吉田:実はコロナの時も食べに行ってました。個室の店ならまあ大丈夫でしょうと。

renny:コロナの時期を境にして、飲食店の変化をお感じになりますか。

吉田:コロナとは関係ないんでしょうけど、値上げが増えましたね。

renny:食材費や人件費もそうですし、やっぱり全体的にコストが上がってますよね。最近はインバウンドの復活もありますが、、吉田さんが行かれるお店でも外国人のお客さんが増えてる感触をお持ちだったりしますか。

吉田:コロナの以前から多かったですね。コロナで一度まったくいなくなって、また帰ってきてるっていう段階ですね。

renny:外国人の人たちは、観光客の方なんですかね。日本にお住まいの外国人なんですかね。どんな感じなんでしょう。

吉田:日本に住んでいる外国の方が、旅行で来ている友だちを連れてきているってケースもありますね。

renny:なるほどね。観光で来られる方ってどうお店を探してるんですかね、食べログなんですか?

吉田:ミシュランガイドに掲載されると、宿泊先のホテルで紹介してもらえるようになる、って話を聞いたことがあります。

renny:コンシェルジュがピックアップしてくれるとかそういう感じなんですかね。当初食べログの4点をベンチマークにお店探されてたんですけれども、今もそのやり方でお店を探したりされるんですか。

自分と同世代の料理人の店に通いたい(2019年頃~)

吉田:コロナの直前の2019年ぐらいから、何がきっかけかは思い出せないですけど、考え方が急に変わって。一つは自分と同世代の人が料理人の店に通うようにしたいなって思うようになったんです。

renny:それはどうしてですか?

吉田:私は1978年生まれで。たしか1976年、77年、78年生まれの大学卒業生の就職が一番大変な時期で、就職氷河期とか言われた時代なんです。だから大きい会社に入って働くという形ではなく、自立して何かやらなきゃどうにもならない、っていうような世代だったんで、自分のお店を持って、活躍している人の店を応援したい、みたいな想いがあります。

renny:でも食べログとかにシェフの年齢とかまで載ってないですよね。そういう情報はどうやってジャッジされるんですか。

吉田:わざわざ調べるんですよ。お店のウェブサイトを調べたり、シェフの名前で検索してインタビュー記事を読んでみたりとか。

renny:そういう感じですね。そういうふうにお店を選ばれて、新規とリピートっていうのはどんな割合だったりするんですか。

吉田:2019年以前は新規ばっかりだったりしましたが、そのあたりからリピートが増えだして、ちょうどその後コロナが来たんで、馴染みの店に通って応援しなきゃ!な感じでさらに増えてっていう流れですね。

renny:なるほどそういう意味ではコロナを境に、新規開拓よりもここいいなっていうようなところを重点的にという感じに変わっていったってことなんですね。

初めての店を選ぶ際は料理長の経歴を調べる

吉田:そうですね。あと初めてのお店に行く時に必ず調べることがあって、料理長の経歴は必ず調べるんですよ。ここは意外と投資や投資信託の話と近いもしれないです。

renny:そうですね。投資する会社でも沿革を調べるみたいな話に近いかもしれないですね。その辺のキャリアをご覧になって特にどこを見てるとかって何かあるんですか。

吉田:お店を開く以前はどこの店で働いてたかは必ず調べますね。たとえば天ぷらで一番ハズレがないのは「山の上ホテル」出身の方が出してるお店。有名どころだと、銀座の「てんぷら近藤」さん、京橋の「てんぷら深町」さん。どちらも料理長だった方のお店で、私が通っているのはその中の一つの麻布十番の「てんぷら前平」さん。季節に1回は通っているかな。

renny:その前平さんって方も、年齢は吉田さんと近い方なんですか。

吉田:いや、前平さんは50歳過ぎていたと思います。

(補足;前平智一さんは1971年生まれでした。前平さんにお話を伺っていると温暖化による海の異変を実感します。関心のある方は下記の記事をどうぞ。)

renny:なるほど。新しくここ面白いかもしれないというのは、料理長の方の経歴やウェブサイトを見れば料理のビジュアルも出てるでしょうから、そういうのを参考にして探されるというような感じなんですかね。

吉田:そうですね。あとは食べログをまだ使ってる部分もあって、「ニューオープン」情報っていうタブがあって、そこは今も使ってます。

renny:でも新規オープンの場合だと、基本的にはレビューが付いてないことが多いですよね。

吉田:ついてないですね。いついつこのお店がオープンって情報だけなので、その店のウェブサイトを調べたりします。経歴を見ると、行ったことある店だったりすることもあるんですよ。あの店のシェフが独立したお店なら間違いないなとか。

renny:最近は自分でホームページを持たずに、インスタグラムしかなかったりしますよね。でも吉田さんは自分のウェブサイトでしっかりお店を紹介しているところがお好みになるって感じですかね。

吉田:そうです。何も情報なしでは行かないですね。もう職業病かもしれないです。調べたい病みたいな。

renny:でもね、料理長の経歴を調べるのはまさに投資に近いようなところだと思うんですけれども、お店選びとか、あと実際にお店に通われてる中で、ここはちょっと他の店と違うよね、みたいなところがあったらご紹介していただきたいんですけれども。

乃木坂しんさんの情報発信

吉田:これは投資信託と確実に繋がる事例なんですけれども、乃木坂にある「乃木坂しん」さんっていう日本料理屋さん。情報発信がすごいんです。コロナの頃からやり始めたんだったんだかな。まずnoteで、毎月の献立についてかなり詳細に紹介していて、食材の生産者さんの紹介や、その食材をこういう想いで調理してます、って細かく紹介してくださってるんですね。(補足;料理長の石田伸二さんは1976年生まれで私と同世代)

吉田:それとセットでYouTubeもあって。その月の献立の試食会を動画に撮ってYouTubeにあげているんです。

renny:その試食会は試食する方はどなたなんですか?

吉田:乃木坂しんさんは、料理人の方とソムリエの方が2人で経営しているお店で、ソムリエの方が試食をして、結構厳しいことを言うんですよ。

renny:辛口なんですね。

吉田:そうなんです。いろいろなお店で料理をいただいていますが、コースの料理、すべてが美味しいということはあまりなくて、今日はこの一品はちょっと外れだったかな、というのもあったりするんですよ。その点、乃木坂しんさんでは、そういうのがなくて。試食会動画を見て、その秘密が分かりました。

renny:なるほど。今の試食会の話をお聞きしていると、なんとなく投資の意思決定の過程、投資委員会みたいなところこんなのとするのみたいないうのに近い話ってことなんですかね。

吉田:そうですね。火入れや塩加減や盛り付けなどなど、かなり細かくツッコミが入って、美味しい料理ってこうやってできあがるんだなっていうのがよくわかる。

renny:面白いですね。投資の案件で投資するかしないか、まさにそこがメニューとして出すか出さないか、っていう過程を見せられてることになるわけですよね。試食会動画を見て、その後、実際にお店に行かれたときに、何か違いみたいなのあります。

吉田:食材は一緒なんだけど、調理方法や盛り付け、お皿が変わって出てきたりします。

renny:それは面白いですね。noteに出てくる写真と違った見た目で提供されることもあるってことなんですかね。

吉田:そうですね。noteの時は書いてあったかな。実際にお客さんに提供するものと異なります、みたいな。

renny:そういう過程をしっかり示してくれてると、ここまでどういった時間と手間がかけられて、でき上がった料理なんだなというのがわかると、何かすごく面白いなと思いますね。

吉田:そうですね。あとこういう形でnoteに残しておくと、脳科学的にリピート客が増えるっていうふうな研究結果があってですね。

renny:どういうことですか?

吉田:食べたものって結構すぐに忘れちゃうものらしいんですよ。でも後で料理の写真とか内容を読み返すと、美味しかったときの記憶がよみがえるから、お客さんがリピートしやすいですよ、という指摘をした脳科学の本があるんです。チャールズ・スペンスの「おいしさの錯覚」。食と脳科学をかけあわせた本です。

renny:でもそれって投資信託とか投資にも応用できる面ってあるのかもしれないですよね。そういうふうなプロセスとか、感じたこととか、体験したことっていうのは、たとえば運用報告会、それこそこないだの鎌倉投信さんの受益者総会に参加して、面白かった、ためになったとかって思っても、それでそのままにしておくと、二、三日したらなんだっけ?ていうこともあるのかも。でもレポートとかでこういうお話しましたよ、っていうようなことを読み返すことで、何か長く続けてみようかなっていうか、そこに対するロイヤリティっていうかそういうようなものが高まる、っていうようなことは起こりうるっていうことなんじゃないかなと思いますけどね。だからそういう意味でもね、月次レポートとかちゃんと作るべきなんですよね。

吉田:だから乃木坂しんさんを運用会社の方オススメしたいんですよ。最近まで改装工事をしていて再開したばっかりなので、まだnoteやYouTubeの更新は止まっている状態なんですけど、また落ち着いたら再開するっていう話だったので。運用会社の方に同業他社の運用レポートを示して、これすごいからこれを参考にすればいいんですよ、って言っても動かないと思うんですよ。違う業界でやられている近い例に触れてもらうのがいいんじゃないかな。

renny:自分が食事した、いただいたものの記憶とかをもう一度再生させるようなコンテンツに触れることで、リピート率が上がるとかっていうような研究結果がもっと増えると、個人的には何かすごく嬉しいなと思います。というのは、noteの株式に投資してるもんですから。そういうデータが出るともうあちこちの飲食店が、乃木坂しんさんみたいな発信を増やしてくれると思いますし、そういう事例が増えることなんで、飲食業界が何か進化するというか、そういうようなところにも繋がっていくような気がしますね。

吉田:そうですね。あとはやっぱりどうしても今、メニューの値上げをしなきゃいけない状況なので、やっぱりその裏側を見せてもらうことで、納得できるようなところもあったりするんです。ここまで丁寧な仕事をしてくれているなら、この値段で納得だよね、みたいな。

renny:そこは重要かもしれないですね。採算が良くなかったらお店の経営がしんどくなるわけで、そういう意味でも、お客さんが価格に価値を感じてもらうための助けになるのが、情報発信なのかもしれないですよね。それはまさしく投資信託の話につながりますが、いわゆるフィーの問題。信託報酬の高い安いのとかっていうのあるじゃないですか。もちろん料理のように美味しくなるように、パフォーマンスとして成果が出ることを保証されるわけじゃないですが、やっぱりどういう手間をかけて、それこそさっきのこのメニューをお客さんに出すかどうか、っていうようなところっていうのは、結局その投資するかしないかに近いような判断だと思います。そういうようなところをどれだけしっかりやってるかを見せることは、やっぱり納得度に影響が出ますよね。だから吉田さんが紹介された脳科学の話がもっと知られると、情報発信も増えてくるでしょうし、メニューの値上げを通じて採算が取れるようになるから、また新しいことに繋がるポジティブなスパイラルに持っていけるんじゃないかなと思うんすよね。

renny:吉田さんの食べ歩きの今後の展望みたいなのはお持ちなんですか。何か新しくここを開拓したいとかですね、あるいは今、ここのお店が気になってるというか、そういうようなものが他にあれば何か教えていただけますか。

吉田:今気になっている、今年出会った中で一番良かったお店が、自由が丘にできたイタリア料理の「ルオーゴ」さん。

renny:そこの料理長さんは若い方なんですか?

吉田:私より少し年下で40歳になってないぐらいだったかな。(補足:ルオーゴのシェフ、泥谷俊介さんは1984年生まれでした)1人でやられているお店で、料理の腕がすごいんですが、経営面で大丈夫かな?って心配してる店でもあったりします。

renny:ちょっとそこは心配ですね。こういうご時世だから本当に採算は難しくなってくるでしょうし経営も大事ですね。

吉田:そうですね。ずっともう一人欲しいと言いながら見つからないまま、もう何ヶ月も経ってて、体力的にも大変そうだなと。あの店の状況を見ていても、今の人手不足がよくわかります。

renny:その辺ってなかなか難しいとこかもしれないですけど、そういう新しいお店がどんどん開拓できると、いろいろ楽しみが増えますよね。

吉田:太らないように注意が必要ですが。

renny:健康あってこその食べ歩きだと思いますんで。お互い気をつけましょう。

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