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#月次レポート研究所 のポッドキャスト 2022年6月 第2回 テキスト版

引き続き私のプロフィールがテーマのポッドキャストをテキスト化しました。シリーズ全6回のうちの5回目になります。

renny:2010年に前回もお名前上がりました、河口真理子さんが代表理事を務められていたNPOの社会的責任投資フォーラムの活動に誘われて、結局そこの運営にも携わられるんですが、深く関わろうと思われた理由ってなんだったんですか?

吉田:当時はESG投資という言葉はなかったんですが、ごく一部の人たちの間で、社会的責任投資(SRI)という分野があって、それってどうやって企業を見てるのかな?と興味があったんです。河口さんにどうやって勉強したらいいですか?と尋ねたら、 このNPOに誘われてズルズルと引きずり込まれていったっていう感じです。

renny:そこに発見や気づきがあったんでしょうか?

吉田:引きずり込まれるのを良しとしたのは、金融機関の人との接点がいろいろできたんで、ここを入口に投資信託をどうにかできないかな、っていうのがあったんですよ。それこそ社会的責任と言うのなら、まともな投資信託を作ってくれるんじゃないのって。あとはこの分野がこれから伸びそうだなっていうのもあって。

renny:その伸びそうだなっていうのは、社会的責任投資っていうか、今で言ういわゆるESG投資みたいなものがっていうことですか。

吉田:そうですね。リーマン・ショックの頃って、投資家自身が出した資金がどこに投資されているのか訳が分からないうちに、大損をするって感じだったので、説明責任を問われる時代が来るんだろうなって考えた時、こういう社会的責任投資とかが流行るんじゃないかなって。

renny:たしかにそうですね。投資対象がすごく信用力が劣るものでも、どういうわけかそれをたくさん集めてしまえば、リスク分散されて倒産確率が減って、いいものになるというようなのが、そもそもリーマン・ショックの引き金っていうか、大きな影響を及ぼしたの間違いないでしょうし、そういう意味ではどこにお金を投資しているのかっていうのが、すごく重要なことだったとは思いますよね。

renny:2011年に大学院で経営学を学んでみたものの、特に経済金融の分野を席巻していたファイナンス量を中心に、学問は過去必死に説明しているだけだったと。未来学が存在し何か創造的なことができる、と勘違いしていたことを痛感ということを書かれていますね。僕は大学院で学ぶという経験もないし、経営学っていうのもちゃんと学んだことはないんですけれども、やっぱり過去の後追いが強いと感じられることが多かったということですよね?

吉田:そうですね。物理学とかあっちの方に行くと、また違うんでしょうけど、経済学とか経営学って、結局、バックミラーだけ見て車を運転するような感じがして。

renny:確かに未来は見えない。でも未来立ち向かうというか、受け入れるっていう意味で、過去のことをいろいろ学ぶっていうようなところっていうのも何かしら意味があるかなとも思いますが、じゃあどうなる?っていうような答えを学問が与えてくれるかっていうと、おそらくそうではないでしょうね。

吉田:そうですね。

renny:2011年のプロフィールのところに、投資についてこれ以上語ることがないと実感してブログの方向転換をって書かれていますが、投資についてこれ以上深堀するような部分ってなさそうだな、というふうに思われたんですか?

吉田:企業分析してどうのとか、財務諸表を読んでどうのとか、ってブログで書いていたりしたんですけど、そういうのはあんまり意味がないなぁって。意味がなくはないんですけど、そこがすごく大事でもないかもしれないな、っていうのがあったりして。

renny:今おっしゃったのは、その企業分析は基本的には過去の実績からって話になると思うんですが、それだけではその先の未来を見渡すというか、そういうとこには直接には繋がらないというふうにお感じになったってことですか。

吉田:そうですね。あんまり繋がらないし、客観的に何かが言えるわけでもなく、そっから先はもう主観の話だからブログに書いてもしょうがないよねって。

renny:ただ、さっきおっしゃった日本文化というか日本ならではの特徴とかっていうようなものは、むしろ未来を見渡すというか、見通すまではいかないですけど、何かの仮説を持つことに対して数字より役に立つことはなかったですか?

吉田:それはありますね。だから純粋な投資の話には興味がなくなって、経済や金融以外の分野から何か持ってきて考えるって感じですね。

renny:なるほど。それで2012年のところに、もうまさにおっしゃったようなことが書かれてますね。科学や哲学の本の方が投資家として役立つと。経済書とかもうほぼ読まなくなっていくと。2013年に年間に受け取る株式配当と債券の利息が大きくなってきたことから、お金になるかどうかは気にせず今後の人生が楽しくなりそうな選択をするという生き方に、より忠実に生きることを決意、というふうにお書きになってるんですけれども、これは今時で言うFIREみたいなことでしょうか?

吉田:そうですね。でも実際にFIREっぽいことしたのは大学院行ったときですかね。仕事もやめちゃったんで。

renny:でもそれはFIREじゃないですよね。勉強してるんで、FIREはFIREなのかもしんないすけどね。

吉田:うーん、FIREって何なんだろう?

renny:一応“Financial Independence”と“Retire Early”がくっついた話なんでしょうけど、どれがファイアで、どれがファイアじゃないのか、っての難しいかもしれないですね。

吉田:そういえば、FIREで取材させてくださいって言われたんだけど、なんかよくわかんないからヤダって断っちゃった。

renny:FIREとはちょっと違うかもしんないですね。2013年のところに先ほど出てきたNPOの運営を全面的に引き受けられて、事務局長にも就任されたっていうことでいくと、働くっていう意味でリタイアはされてないですしね。

吉田:そうですね。FIREとはちょっと違うかもしれないですね。

renny:こういうNPOの経営とかに携われて、NPOのこのへんが課題で、こういうところが解決されると、ちゃんと世の中に認知されるのになぁ、とかっていうようなことってありますか?

吉田:難しいなって思うのは、同じようなことをやってるNPOがたくさんあるんですよ。なんでこことここは一緒にならないの?と話を聞いていくと、人間関係のもつれが原因だったりして。企業から見ると結局どこに寄付していいかわかんないよ、みたいな感じになっちゃってる。

renny:なるほどね。何か目指してる方向性はすごく似てるけど、人間関係であいつとやるのは嫌だみたいな、分断とまで言わないですけど、細分裁断化されているような側面があるってことですか。

吉田:そうですね。自分が引き受けたこのNPOは、当時はまるで注目されてない分野で、たまたまここ一つしかなかったからよかったんですけど、CSRになると似たようがすごくいっぱい。

renny:NPOの資金的なバックボーンは金融機関とかですか?。

吉田:うちのNPOは金融機関が法人会員っていう形になってくれていて、それを事業資金にして運営していくっていう感じです。運用会社やブルームバーグのような金融データサービス会社、あとは上場企業の統合報告書の作成のお手伝いをする会社とかが会員になってくれています。ESG投資という話が出てきて、会員が増えて、やっと潰れないNPOになれたところです。

renny:そういう意味ではESG投資への注目っていうのは、このNPOの運営にはかなり追い風になったってことですね。

吉田:そうですね。

renny:2014年になると毛色が違う話が出てきて、料理を学ばれたと。しかもそれまで包丁を持ったことなかったところから、ということで、僕自身も料理は全く駄目なんですが、もうこんなふうになれるものなんですか?

吉田:美味しい食べ物を食べるのが昔から好きで、料理を習い始めたときは一生独身だろうと思ってたんで、この先、母がいなくなっても自分で美味しいものが作れるようになっておかなきゃいけないなと思って、料理教室に通ったんですよ。

renny:でも料理教室っていう料理教室でこれどういう形式の料理教室だったんですか? 何人かその生徒さんがいらっしゃって、というような感じの教室ですか?

吉田:30人ぐらい生徒がいて、数人1組になって、本格的な和食を作るみたいな教室です。

renny:これって1回どれぐらいの時間やられるんですか?

吉田:1回3時間ぐらいだったと思います。

renny:結構な時間、拘束されるのですね。何でもそういうのに結びつけて恐縮なんですけど、お料理をやることで、その投資とかに何かヒントというか、インスピレーションというかそういうようなものってありましたか?

吉田:想像力が鍛えられるっていうのがありますかね。

renny:想像力って、イマジネーションの方ですか?

吉田:はい。この食材からどんな料理ができるかな?って、冷蔵庫にある食材から考えるというような。

renny:料理を覚えれば覚えるほど、思い浮かぶようになるっていうか、一つのテーマを聞くといろんな連想が生まれるとかっていうようなのには繋がるようなとこあるんですね。

吉田:そうですね。そういうのが結構鍛えられるんじゃないかなって思います。

renny:よくテレビで、すごい家政婦さんが冷蔵庫をぱっと開けて、今日は何品作ります、とかってそれに近いような話ですかね。

吉田:そうですね。あと料理が投資と一番違うところは、大きな失敗をしなければ、手間をかけた分だけ美味しくできあがるんですよ。投資は運に左右されるところも大きくて、努力の積み重ねにも意味があるんだっていうのは、料理で実感するみたいなところがあります。

renny:なるほど。努力を裏切らないっていうようなところは、投資とはえらい違いだということですね。でもね、積立投資っていうのは積み重ねが大事なので、投資もある部分を通じてるところはあるかもしれないですね。


私の投資家としての大きな転換点が引き出された部分があって、

純粋な投資の話には興味がなくなって、経済や金融以外の分野から何か持ってきて考えるって感じですね。

前回は「日本文化」、この回は「料理」と投資を紐付けるような話をしている。投資・経済の情報のみで投資に取り組んでいたときよりも、一歩引いて考えられるようになってから、明らかに投資の成績も良くなったし、投資にかける時間も減っていった。

ちなみに私の生き方には、最近流行の「FIRE」っぽい雰囲気があるみたいだけど、私自身が理想としているのは、唐代の詩人、白楽天が「中隠」という詩で詠ったような生き方。簡単に言うと「半分隠居」。

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