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#月次レポート研究所 のポッドキャスト 2022年6月 第1回 テキスト版

引き続き私のプロフィールがテーマのポッドキャストをテキスト化しました。シリーズ全6回のうちの4回目になります。

renny:前回の配信で、羽生善治さんの「決断力」という本の話が出まして、僕も読んでみました。最近僕自身が感じていることに近いことが書いてあって。当然、羽生さんのレベルとは全然違いますが。ネットの普及でおびただしい量の情報というのが手に入るようになったけれども、だから逆に自分の手を動かして調べたり考えたりすることが大事。そうすることで羽生さんの言葉でいう「直感」が養われると感じました。吉田さんは羽生さんの本を読み直すことに、火がついちゃったみたいですけど、改めて読み返されて、どんなことを再認識、再発見されましたか?

吉田:羽生さんの考え方は当時の時代の最先端だったのだなって。インターネットで情報が増えてきた当初は、知識が一部の人のものではなく、誰でもアクセスできるものになり、解放されたと歓迎されてました。でも、その頃すでに羽生さんは情報が増えすぎちゃったものをどうするか?って考えていたんです。

renny:当時もいわゆるフェイクみたいな情報も、混ざってたと思うんですが、それが占める割合っていうのが、その当時に比べたらはるかに増えて、その真贋を見極めるというようなスキルが、今求められてるのかなって感じましたよね。

吉田:投資も一緒ですよね。変な情報はいっぱいあるけど、まともな情報は少ないので、企業のホームページに行くしかないようなところもあったりするから。

renny:そうですよね。企業も実際の業績とか決算がいろんな形で発信されていて、それは絶対に開示しなきゃいけない資料だけじゃなくて、いろんなIRの媒体が増えてきているとは思います。そのほかに、もちろんプロの機関投資家の方や一部の個人投資家の方がすごく中身を濃く発信されていても、リーチできる範囲がごく一部に限られているのかなって。1次情報に当たらずに、2次情報3次情報へ行っちゃいがちなのを見てると感じますよね。

吉田:新聞でもそうだったりしますからね。グラフとかが出てきたら、その引用元まで見に行かないと、実際のところはよくわからない。

renny:そうですね。だからどんなデータで加工してるのか、元のデータが何なのか、っていうのを見ないと、結論を作るために、いいとこを取ってることも考えられますもんね。

renny:吉田さんのプロフィールに戻りたいと思います。前回リーマン・ショックのところまでお話をお聞きしたんですが、リーマン・ショックの後に大学院で勉強されようということをお考えになって、そこら辺のお話をお聞きできますでしょうか?

吉田:大学院に進もうと思ったのはリーマン・ショックの次の日ぐらいかな、何かすごいことが起きたんで、これは投資の分野で研究とかしたらノーベル賞取れるんじゃないか?と思ったんです。

renny:なるほどね。

吉田:あとは当時、将来どうしようって迷っていた時期で。前回、株の裁判の話をしましたけど、あの株は手放すんじゃなくて、その会社が欲しかったんですよ。あの会社をバフェットさんにとってのバークシャー・ハサウェイみたいな感じで見てたところがあって。投資会社に事業転換してバフェットさんを目指そう!と20代の頃、考えてたんですよ。でもそれがなくなっちゃったので、将来どうしようかなぁ…と思ってたときにリーマン・ショックがあって、また面白そうなネタを見つけたっていう感じです。

renny:大学院に進まれて、河口真理子さんとお知り合いになるきっかけになったということですが、その出会いでどういう変化というか何か新しい気づきがあったんですか?

吉田:前回の話で坂本教授の「日本で一番大切にしたい会社」を紹介しましたけど、それを具体的に自分の投資に繋げるにはどうしたらいいか?っていうのが、まだはっきりわかってなかったんです。そんな時、CSRの分野で大家と呼ばれる河口さんに出会って、そこで初めてCSRレポートを読むきっかけになったんです。

renny:当時はまだCSRレポートっていう呼び方をしてた時代ってことですね。

吉田:そうですね。環境報告書って名前で発行している会社もありました。

renny:その手のレポートの起源はいつぐらいになるんですかね。リーマン・ショックの時点では意識の高い会社なんかを発信してたのですか?

吉田:それ以前からあったんじゃないかな。

renny:ただ投資家が何か判断の材料に使うとか、っていうような時代ではちょっとなかったってことですかね。

吉田:そうですね。たしか2010年にブルームバーグが金融情報の中にESG情報を入れて発信し始めてからってイメージなので、リーマン・ショックの頃は投資家は見ていなかったんじゃないかと。

renny:だからそれが市場の評価とは、ある種その独立とまでは言わないですけど、そこまで関係性を持っているとは、投資家の人たちも見てなかったっていうことなんですかね。

吉田:そうですね。企業の側も、経営に関連付けて考えているところは少ない感じでした。河口さんの授業の期末レポートが、たしかCSRレポートは10社読んで、自分なりに評価をつけなさいという課題だったんです。私は投資したい企業を探すっていう観点でCSRレポートを読んだんですが、事業と全く関係ない話も多かったですね。どこに寄付しました、どこに木を植えましたとか。

renny:当時ご覧になったCSRレポートで、投資家として魅力を感じるようなあの発信をしてたような会社ってどこかありますか?

吉田:味の素はレポートとしてしっかりしていた印象があります。カツオからアミノ酸を作っていて、そのカツオがいなくなっちゃったら困るから、と本業と結びつくところで社会活動をして、報告していたのが印象的でした。

renny: なるほど。地球環境や生物資源の目線で当時から本業と関わってると思うんですけど、そういうことに対しての問題意識であるとか対応策として何をやってるのかを発信されてたってことですね。もちろんそれに意味を見出していた投資家もいるんでしょうけど、圧倒的少数派だったっていうことなんですかね。

吉田:そうでしょうね。

renny:大学院に在籍されてるときに、アメリカ偏重の経営学に疑問を持つようになって、日本にはアメリカ建国以前から営業している会社があるのになぜ?とお調べになったってことなんですけれども、どんな会社を調べになったんですか。

吉田:あの当時、ちょうど日経新聞でも200年企業って連載があって、そこで登場した会社を調べたりしました。

renny:僕も最近あるファンドのレポートがきっかけで、住友金属鉱山の沿革を紐解いてみたら、創業は天正、西暦で言うと1590年で安土桃山時代。そんなに古い会社だったのかと驚いたんですよ。それこそ奈良時代に創業した会社も聞いたことありますし、すごい歴史が長い会社っていうのがあるのは、日本の一つの特徴というのは特徴でしょうね。

renny:これがきっかけで日本の歴史文化の研究がライフワークに、ということですが、先日も徒然草のお話とか出てきましたけど、この辺がきっかけだったんですかね。

吉田:そうですね。そのあたりからさらに加速して和歌にも手を出して、本をそろえてしまったりして。

renny:でも、ちょっとこういう聞き方したらすごくあれなんですが、例えば投資に関してプラスになりましたか? 何かそういうことを研究というか、興味を持って調べられたことによって、投資に限らず、生活を含めて変化みたいなの出ましたでしょうか?

吉田:投資については、日本企業に投資する際は、日本の伝統とか文化とか、その流れに近いような会社が世界で勝てるんじゃないかなっていう感覚は持っています。

renny:日本らしさを感じるような会社っていうことですか。

吉田:そうですね。これはっていう例を挙げるなら、いろんなものを小さくしていくっていうところ。中国から伝わったうちわを扇子にして、折り畳んで持ち運べるようにしたりとか、あと元々は仏教って寺院が極楽浄土の入口として大事なんですけど、最終的に仏壇にして持ち運べるぐらいまで小さくしてしまう。そういうようなものは、昔で言えばソニーのウォークマンが代表的だし、やっぱり精密機器とかは日本の企業が強いんじゃないかなぁって考え方に結びついていますね。

renny:日本文化を見直したところから投資っていうのは、なるほど、確かにそういうところに強みや特徴が現れてくるからこそ、グローバルで活躍してるような会社がそういう分野に多いのかなっていうことなんですかね。

吉田:そうですね。もしかしたら、そういう伝統が土台にあって、日本の強み、みたいのがあるのかもしれない。

renny:そういうことを考えると、どうして日本からGAFAみたいなすごいベンチャーが出ないのか?というようなこと言われますけど、世界を驚かせるようなベンチャーというのは、まだまだ出てくる可能性があるかもしれないですね。

吉田:そうですね。


日本株投資を日本文化と結びつけて考える話をしましたが、ご関心ある方は、私がまとめたこれ↓を投資家目線で読んでいただければ。

また上記の話を終えた後に書いた記事はこちら↓


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