2022年を振り返ります(後編) #月次レポート研究所のポッドキャスト 2022年12月 第2回 テキスト版
前編に引き続き後編のポッドキャストのテキスト版です。
renny:月次レポート研究所のポッドキャスト、12月の2回目です。前編に引き続き2022年を振り返っていきます。前編では戦争や為替、金利についてお話しさせていただきましたが、後編は2022年の投資行動ということで、吉田さんご自身はどんな行動されましたか?
吉田:今年はすごく動きが少なかった年で、戦争や金利上昇を受けて株式市場は荒れていましたが、ここで投資したいなって感じるようなバーゲンセールには出会えなかったなぁっていう年でした。
renny:前回バーゲンセールだって思われたタイミングは、もしかしてコロナで下がった頃ですかね?
吉田:はい。直近だと2020年の3月は毎日いろんな企業を買っていましたね。
renny:日々の相場は見ていなので何ともわからないですけど、今は行くぞ、というところまで下がってる感じがなかったってことですかね?
吉田:そうですね。ちょっと特殊な話なんですけど、ドルとユーロの為替でユーロが安くなったので、ニューヨーク市場でヨーロッパの企業を買おうとすると、より安くなったっていうタイミングがあったくらいです。
renny:前編でもお話しましたが、アメリカで金利が上がったので、もうちょっとアメリカの株価が下がるのかなと思ったのですが、思いのほか下がってないのかなと。例えば去年の非常に高い時期はS&P500のPERは26倍。今は20倍くらいで、それが18~19倍あたりまで下がるのかなと思っていたら、そんなこともなく、案外アメリカは強かったなという印象でした。
吉田:ナスダックは結構下がりましたけど、2020年春に暴落したところから、2021年の秋頃にかけて異常なほど値上がりしていたのが、元に戻った感じですね。少し長い目で見たら、大した変動でもないんですよ。
renny:ただ一方AmazonやFacebookとか存在感ある時価総額の大きな会社で、これまでリストラとは無縁だった会社が、リストラをやりますと結構大きな声で言い出しているのは、どうご覧になってますか?
吉田:あの辺りの会社はもしかしたら大きな変化として、ネット広告の収入でビジネスを回していくモデルが、ちょっと崩れ始めたのかなっていうところはありますね。
renny:それはたしかに何か変化の兆しが起こり始めてるのかもしれないですね。最近Webサイト、個人のページ広告が出てくる頻度はやたら多くて、次のページに飛ぼうと思うと、画面全体に広告が出てきて×ボタンを探さなきゃいけないとか、ああいうのがもう嫌になるというか…。スマホでニュースを読んでいると急に動画広告が動き出してやめてよと思うこともありますね。そこらへんはもう勘弁してもらいたいなって。そんなすぐには変わらないと思いますけど、変わり始める兆候みたいのはあるのかもしれないですね。
吉田:あとはネット広告のモデルはGoogleが作ったのを、後の人たちがみんな真似しているだけで何ら独自性はないので、あの分野で儲けてる企業に投資するのだったらGoogleだけにしといて、後追いの企業はやめといた方がいいんじゃないかな、っていうのもあります。
renny:今年の投資行動で具体的にあまり動きはなかったというお話でしたが、ブログでは一部の投資先の入れ替えみたいなことをされたと書かれていましたよね。
吉田:はい。島津製作所を秋ごろに売却しました。精密機器、とくに医療関係の企業がで欲しくて、シスメックスやテルモ、島津製作所などに投資した時期があって。島津製作所はその中の1社だったのですが、医療機器の分野でとんでもない不祥事がありまして…。何年かすると故障するようにタイマーが仕組まれていたという。。。
renny:それは報道があった後、島津製作所の方からも何かリアクションってあったのですか。
吉田:島津製作所のホームページにも掲載された後、9月30日のリリースで外部調査委員会で調査します、といったところで止まってますね。
renny:なるほどね。まあ怒られるかもしれないですが、某大手の電気機器メーカーの製品も一定期間が来たら故障するという都市伝説が言われてたようなことありましたけれども、それは人の生死に関わるような話ではないと思うんで。やっぱり人の命に関わる仕事で、それはさすがにないだろうということですかね。
吉田:そうですね。そこをおかしいとは思わない企業に投資を続けるのは無理だなって。
renny:ですよね。前編でお話しましたけど、いくら独自の技術でこの会社しかできない付加価値だと言ってても、そういうのが裏側に入ってるとちょっと厳しいですよね。世界で守っていかないといけない会社、世の中に必ず必要な会社、とは言いづらくなっちゃいますよね。島津製作所を売却されて、その代わりに新しい会社を投資されたりしたのですか?
吉田:島津製作所のせいで入れ替えたわけじゃないですが、たまたま今年買ったのがリクルート。元々はコロナショックって言われたあの2020年の3月にいろんな会社を買ってる時に新規投資した会社なのですが、投資先の企業数が増えすぎて限界を感じて、社会的な意義みたいなのをごく簡単に説明できない会社から手放していこうと思って、その際リクルートも売ってしまったんです。、その後、今年に入ってからスパークスamの清水さんがnoteで解説されていたり、カンブリア宮殿ってテレビ番組で、2週間にわたってリクルートの特集をやってたりして、こういう会社だったんだ!と理解できたっていうのがあって、もう1回投資してみようかなと。ちょうどそう思った時に、自分が手放したときよりも3割ぐらい株価も下がってるから、まぁいいかなと思って再投資を始めたんです。
renny:テレビ番組での内容でリクルートってこんな会社だったんだ、というふうに思われた一番の発見というか気づきは、どういうところにあったのですか?
吉田:リクルートは転職等で仕事を探すときに、何週間もかかってしまうのを、できるかぎり短くしていくのが自分たちの使命と言っていて、どれくらいその時間を減らせるかっていうのが、社会的インパクトとしてその評価の判断基準になるというところに、なるほどなって。自分はちゃんと働いてないから、なんかその感覚が全然なかったから気づかなかったんです。
renny:たしかにね。日本だけを見てていいのか、というところはあるのかもしれないですが、人口がどんどん減っていくっていう中で、さっきの前編で安全保障とまで言わないですが、日本を攻めちゃいかんなと思わせるためには、少ない人口で新しいものを作っていかなきゃいけない。そういう意味でいくと、人の配置というかトータルで見て生産性上げるか、というようなところは大きいと思うので、そういうところでリクルートに投資するというような面はあるんだろうな、と思ったりします。
吉田:あとは海外の売り上げが今どんどん増えていることに個人的に注目していて。日本人ってあまり仕事を変えたりという人材の動きがすごく少ないじゃないですか。そういう大変な環境でビジネスをやってきたんで、それが世界に出ていくと、海外事業は簡単な環境なんじゃないかな。やっとのことでスカウトして次の会社を紹介して、みたいなことを日本でやってた会社が海外に出ていったら、結構活躍できるんじゃないかなと思ったんです。
renny:人材の流動性が少ないところでこれだけの実績を出してる会社であれば、流動性が高いところに入っていけば、より効率よくサービスを提供することができるんじゃないか、ってことですね。
吉田:そうですね。
renny:リクルートでもそんなに株価が下がってたのですね。時価総額が大きな会社でも、成長株と捉えられると株価が下がってたんですね。来年に向けて投資の方針というか投資行動は、何か今考えてらっしゃることはありますか?
吉田:考えてもどうせ当たらないので、その都度考え直していけばいいかな、っていう形かな。
renny:ここは今買わなくちゃというバーゲンセールが起こるかもしれない、そこまでの感じてはないってことですかね。
吉田:そういうタイミングって5年に1度あればいい方で。私、結婚して7,8年なのですが、2020年春のコロナショックの時が結婚後、初めて真面目に投資をしていた時期で、妻から「初めて投資家みたいなことをしている姿を見た」と言われたぐらいなので、それぐらい普段は動かないものですね。
renny:そうですか。僕自身も今年何かしたかというと、今年の初めぐらいに少しだけ毎月買うファンドをちょっとだけ変えたぐらいで、大きな変更でもないですし、今すぐ何かを変えようとも考えていません。一方で最近話題に上ることが多い、NISAがおそらく再来年に大きく変わると言われているので、制度が固まったらいろいろ考えてみようかなと思っています。吉田さんのNISAの利用状況はどんな感じなんですか?
吉田:NISAはもう本当に適当に扱っています。鎌倉投信でNISAの口座を開いていて、積立の方ではなく一般NISA。以前このポッドキャストでもお話ししましたが、鎌倉投信がきっかけで結婚したようなところがあるので、結婚記念日に合わせて投資したり、そんな使い方をしています。
renny:なるほど。今のNISAの報道をご覧になっていて、どんなふうにお感じになってますか?
吉田:別にどうでもいいかなっていうのが正直なところで。個別株投資の場合、NISAは損しちゃったら意味がないから使いにくくて。投資は必ずプラスになるものとは捉えていないので、そこが個人的には使いにくいです。それより配当金の課税を安くして欲しいです。長く保有していたら配当金に対する税金を半分にしますよとかって言ってくれた方が嬉しいかな。
renny:そうですよね。僕自身もこういう報道を見ていると、税金を負けてもらえるから投資をやりましょう、と説明されている人もいらっしゃいますが、別に税制の優遇がなくても僕は別に個人的に投資し続けますし。なんかみんなそんなに税金が嫌いなのかな…。さっき吉田さんがおっしゃったように、NISAのメリットは利益が出ないと意味がないし、利益が出るかどうかなんてわからないわけで、なのにこれが起爆剤だとか、もし政治家の人たちが本気で思っているのなら、もうとんでもない勘違いなんじゃないかなと思います。そのあたり、どう思われます?
吉田:どうなのかな。難しいですよね。人間の知的な探究心とか好奇心はどういうときに生まれるのかって考えると、何かしらの外部からの衝撃的な出来事とかがあって初めて自ら動くと思うんですよね。それが税制優遇なのかといったら違う。税金をきっかけに投資に対する好奇心が立ち上がるとは思えない。
renny:税金を下げたら貯蓄から投資へ回るお金が増えたとしても、メリットを享受できるかどうかっていうのは、投資した対象が値上がりなり、配当を出してくれないと得られない。そもそも投資対象の会社がそういうふうにな状態にあるのかどうかと話をし出すと、ここ十数年くらいの長期で見たときに、アメリカ株が良かったからアメリカの会社に投資すればと流れてしまって、一種のキャピタルフライトを後押しするようなことにはならないですかね。
吉田:確実にそうなりますね。
renny:だから前編から何度か出てきたように、世界から必要とされる会社を日本に増やしていくことの方が税制優遇より大事、安全保障にも役に立つかも、ということを考えたときに、NISAに投じられる資金が、日本企業が強くなるところに行かずにアメリカの企業の株式を買い漁るとかっていうのは使われるのは何か違うというか…。でも投資家には利益が出れば何でもいい、という人も多数いるわけで、キャピタルフライトが起こり得る一番のシナリオなのかなと。もう一つは金融機関の人たちが、この機会に口座数を増やすんだ、と力を入れていますけど、初めてNISAができた時のようなことが再び起こるのかなと。
吉田:どうなのかな。ネット証券にはチャンスなんでしょうけどね。若い人が始めるかもしれないから。
renny:何がいいのかは難しいところはあると思いますが、NISAの枠を増やしたところで、今まで投資をしていなかった人がじゃあやろうかというと…。もうすでに響いてる人は始めてると思うので、響かなかった人に行動を促すところまでいくかというと正直疑問ですよね。
吉田:たしかにちょっと違うんじゃないかな。
renny:今の総理大臣がいつまで続くのかに限らず、方針的には変わらないかもしれないですが、一方でこれと並行して増税の話も漏れ聞こえていますし。株価が下がる方向に行ってしまうと、NISAはできたけど、誰もそれでメリットを受けられない、ということも起こりえたりするのかなと思いますよね。
吉田:そうですね。投資で成功体験が得られないと続かないと思うんでね。
renny:さっき吉田さんもおっしゃいましたが、NISAなんてどうでもいい話というか、それこそ企業の業績には何も関係ない話だと思うんですよね。むしろ来年に向けて見ておかなきゃいけないのは違ったところにあるのかなと思うんですけれども。来年に向けて吉田さんが注目しているのは、5年に1回の程度に来るような買い場が来るかどうかということですか?
吉田:そうですね。のんびり過ごしながら待つ感じですね。常に株価を追っていると、長い目で見れなくなっちゃうので、なるべく経済とか株価の情報から離れるようにしながらも、横目で一応情報だけは入れておく感じで。本当に投資家なのかよく分からない生活をしながら、5年に1回ぐらいの波を掴みに行く感じです。
renny:そういう時が来たら、この会社を買いたいなという候補はいつもお持ちなんですよね。
吉田:そうですね。候補を常に持ちながら、新しいものを探していく感じです。最近は行ってなかったですが、コロナ以前はお台場のビックサイトで開催されるいろんな産業の見本市みたいな展示会に遊びに行って、面白い会社がないかなと探していました。来年ぐらいから再開しようかなと。
renny:なるほど。そういうところからまた新しい投資のテーマが出てくるかもしれないですね。ということで今回は2022年を振り返ってみました。完全な平和は難しいかもしれないですが、紛争が少しでも落ち着いて、穏やかな世の中になることを祈りたいと思います。
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