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#月次レポート研究所 のポッドキャスト 株主総会について(前編)テキスト版

AIを使って音声ファイルを文字起こして遊ぶ、という一環で、前回配信のポッドキャストをテキスト化してみました。聴くより読む方が早いよ、という方はこちらをどうぞ。

renny:様々なアクティブファンドの月次レポートを眺めてると、コモンズ投信さんの最新の月次レポートで株主総会での判断基準というタイトルで、どのように議決権行使をされてるかというようなことの一部をご紹介されていました。今まさに日本の会社が株主総会シーズンということで、今回は、吉田さんと株主総会をテーマにお話をしていきます。

renny:まず僕は投資というかポートフォリオのほとんどが投資信託で、後ほど話しますが、月次レポートを見ていて、株主総会が話題になることが非常に少なくて、あんまり見たことないなあ、と思います。一方で吉田さんは個別の会社の株式を直接投資されているので、株主総会との縁というか接する機会が多いのでは?と思っています。そういう意味で吉田さんにこれまでその株主総会とどういうふうにお付き合いされてきたかっていうのをお尋ねしたいのですけど、株主総会ってどれぐらいの頻度で出席されていましたか。

吉田:決算期がずれていればいいですが、3月期決算だと開催日が6月に集中しちゃう。6月開催のもので参加できるのは2社くらいです。

renny:昔なんか特にその集中日っていうのが多かったと思うのですが、そういうときにどの会社に出ようかって決める、その判断基準って何かあったんですか。

吉田 :投資額が大きいとか、あとは社長が変わるタイミングですね。会社がかなり変わりそうなタイミングのときは必ず行くようにしてます。

renny :それは今、経営者が変わるとか社長が変わるとか、あるいは業績なり何かそういうので、転換点かなというときに行かれるっていうことなんですかね。

吉田 :そうですね。

renny :株主総会に行ってみて初めて知るとかですね、何かそこで気づかされることっていうので多いことって、例えばどんなことですかね。

吉田 :トップが変わったときに、何かこれはすごいことになったぞ、と感じたのは資生堂。今の魚谷さんが初めて社外から人がトップになるっていうタイミングでした。株主総会に参加したら、それまでの社長って、大体紙を見ながら受け答えしていたのが、魚谷さんは全部スラスラ何も見ないで答えていたのが印象的でした。そこから株価も7,8倍になったんじゃないかな。

renny :以前の方と比べても。まるっきり違うっていうぐらい、今のお話を聞いてるだけでも感じるのですが、そういうそれはあれですか、何も見ないでお答えになるっていうのは、質疑応答なんかのところもそんな感じだったっていうことですか。

吉田 :そうですね。なんかびっくりしましたよ、社長自体の雰囲気も違って、それ以前の人って何か資生堂らしい上品なおじさまみたいな印象だったのですが、急に勢いのある感じの人になったなぁと。

renny :株主総会で見て初めておぉ変わるな、っていうふうに思われたってことなんですね。

吉田 :そうですね。これは変わるぞ、すごい実感した瞬間でしたね。

renny :今は質疑応答で答える側の経営者とか会社側の人のお話だったと思うんですが、質疑応答の場で株主からどういう質問が出るか、とかっていうのもどういう人が集まっているのかを見る意味で、興味深いのかなと思うんですが、質問の内容とかで、会社の感じがわかることってあったりしますか?

吉田:それもありますね。質問を聞いてこの会社はダメだからやめようと思ったのがありました。

renny:それは経営者の答えの方じゃなくて、株主側の質問の方がこれなんだ?っていうようなところだったってことですか?

吉田:はい。株主総会の質疑応答が苦情処理の場になっちゃう会社。

renny :それは株価を何とかしろとかいう話ですか?

吉田:株価ではなくて、例をあげちゃうと東急電鉄っていう会社なのですけど、沿線住民の苦情処理みたいな。普段からお客さんとうまく対話ができてない証拠なのだろうなあ、と思うような総会に出会ったらもうすぐ売却です。

renny :今、東急電鉄の話が出てきたのですけれども、ほかにそういう株主総会に出たことで、何か投資判断を左右したような例って他にもありますか。

吉田 :買い増しした例はさっきの資生堂で、悪い方向に転んだ例は富士フィルムですね。フィルム事業から事業転換した人がずっと会長として君臨していて、社長は別の人がいるんですけれども、やりとりを見てると会長が全部仕切ってる感じがよく表れているんですよ。

renny :いつまでも影響力を持っているおじいちゃんみたいな人がいて、それでちょっとどうかなって思われたってことですかね?

吉田 :元々あんまり印象は良くなかったっていうのはありますね。変わってくれるのを待って、買い増しの機会を見計らっていた会社なんです。会社名は富士フィルムでも、フィルム事業の会社じゃないから、どっかのタイミングで会社名を変えたりとかして、大きく変わるときが来るだろうと。でも昔の人がずっと影響力を持ってる感じで…。そんな時、ちょうどコロナが流行って、薬が効くとかで株価が上がったりしたので、もうこの際、売っちゃえ!みたいな感じですね。

renny :ちょっとそういう文脈お話をすると違うかもしれないですが、つい最近、日本電産の株主総会があって、永守さんのお話を「ろくすけさん」って方がブログで、すごく面白くというか興味深く紹介されていて、永守さんのスタイルとかって、まさに今おっしゃってたようなのに近いのかなと思ったりもしましたが。ただ一方で、株主総会自体をエンターテイメントに近いような感じで楽しませているようなところは非常に感じました。富士フイルムの総会はそういう感じでもなかったっていうことなんですかね?。

吉田:そういう感じではなかったです。

renny:なるほど。逆に永守さんのスタイルのような、株主総会で今、株価が安いから買わないかみたいな話をされていたみたいですが、そういう株主総会だったら話を聞いたら楽しいんだろうなと。そういう話が面白かった株主総会は他に何かないですか?

吉田 :そういう総会を面白くできる人って、創業者や創業家一族がトップに立ってるときに、怖いものなしで喋る人が多いっていうのはあります。自分が出会った他の例だと、キヤノンの御手洗さんが永守さんと同じようなタイプかな。

renny :ちょうどトヨタの株主総会で社長が話した内容をトヨタイムズか何かで、今日見たんですけれども、すごく思いのこもったメッセージを発せられてたように思うんですけど、それを今吉田さんがおっしゃったその創業家っていうようなところに通じるようなとこなんですかね?

吉田 :そうですね。日本の会社って結局、元気なのは、創業者が経営者だとか半同族企業みたいなところがあるんですよね。だからそういう意味ではさっきの資生堂のケースなんかは稀有な例なのかもしれないですね。

renny :株主総会がオンラインに切り替わるというか、変わっていったっていうところで、何かコロナ前とコロナの後で株主総会って変わったような印象ってお持ちですか。

吉田 :内容はそんなに変わってないと思うんですよ。でも質疑応答がちょっとマシになったかな?

renny :質疑応答がどうだろう?って思われるような株主総会にさせてた要因って何だったと思われてるんですか?

吉田 :株主総会って大体平日の10時スタートなんですよ。だから暇なおじいちゃんがいっぱい。。。

renny :そういう方々がたくさんお越しになると、会社によってはさっきの東急電鉄みたいなことになっちゃいかねない?

吉田 :はい。

renny :そうするとコロナになって、オンラインの開催になると、暇なお年寄りの方は出席するの若干ハードルが上がり、一方でこれまで参加できなかった出席できなかった株主の人の参加するハードルが下がったっていうとこなんですかね。

吉田 :そうですね。株主総会の会場に行くとお土産をくれるっていう文化があって、それ目当てでいっぱい集まってくるっていうのもあったんです。でも今はオンラインになって、事前に質問を受け付けます仕組みも出来上がったので、ある程度ちゃんとした質問を株主総会の場で答えている、というようなところもあるんだと思うんですよね。

renny:なるほど。突然じゃなくて、そういう事前に練られてた質問に対して対応するみたいなところも増えたんで、少し質問の質がより事業活動に近いようなものになってたってとこなんですかね?

吉田 :そうですね。

renny :さっき冒頭でお話したんですけれども、投資信託の場合ですね、あまり株主総会の話題というか、例えば月次レポートを比較的しっかりと書かれてるファンドでも、株主総会をテーマで書かれてることは非常に少なくて。これはなぜなのか、いまいち把握してないのですが、一方で、今世の中的にはESG投資だとかって言われてるわけで、そのGガバナンスの思いっきり根っこの根っこは株主総会だと思うんです。そういう意味でESG投資をやっていく上で、株主総会の位置付けというか役割があるんじゃないかと思うんですけども、吉田さんはどんなふうに思われますか?

吉田 :実際総会の会場とかに行くとわかることっていうのもあって。NGOの関係者が結構来るんですよ。株主として質問に立つこともあるし、会場の外で抗議活動のようなことをしていた例もあります。だから総会に行くことによって、この会社がESGのテーマに該当するようなところで、どこが問題視されてるのかな?と分かることもありますね。

renny:ESGのその文脈で見たときどういう論点があるのか、というのが、どういう人たちが株主総会に参加してるなり、周りにいるなりで見えてくるところがあるってことなんですね。

吉田 :そうですね。

renny :そういう意味では、やっぱり環境経営のところが、多いんじゃないかなって想像するんですけど、この会社がこのNGOがどうして結びつくの?みたいな例はあったりしますか?

吉田 :例えば資生堂とかだと、動物愛護団体が動物実験はいかんだろうみたいな質問が出たことがあって、その時初めてそういう論点があるんだと気づかされたんです。

renny :そういう論点を持ってることを発見するっていう意味でも、株主総会は気付きの機会になるのかなと。さっき日本電産の永守さんの話とか、トヨタの話をしたんですけれども、ああいう発信や様子を知ることが面白かったり、その会社を知る上で今おっしゃったような、どういう関心を引き寄せるような事業活動なのか、っていうのを知るとか、いろんな要素があると思います。でも、株主総会というと、どうしてもお家騒動とか、この会社は揉めに揉めて何時間やりました、みたいなことばっかりがニュースになる。ちょっともったいないなと。

吉田 :株主総会って普通に面白いと思うんですよね。私は株式投資を始めたときは大学生だったんで、その後、すぐ就職活動の時期だったんですよ。就職活動の時って会社説明会で社長とかも出てきて、いろいろ会社のことを説明してくれて、あれが結構楽しくて。就職活動終わったら、こういう場はどこであるのかなって思ったら、やっぱ株主総会なんですよね。だから、自然な流れで、株主総会行っちゃえ!みたいな感じでした。

renny :なるほどそうですね。でも確かに僕も実際に上場企業の株主総会って出たことないから、そこでどういう議事運営がされてるかというのが、何かその会社の一部分っていうのはまず間違いないので、ちょっとしたことが投資判断とかに繋がることが、たくさんあるってことなんですよね。

吉田 :そうですね。特に個人はそうですよね。ファンドマネージャーだったら社長に会ったりできるでしょうけど、個人投資家がその役員の人たちを目にする場は、結局株主総会ぐらいしかないから。

renny :だからそういう意味で、質疑とかにどういうふうに応じられるか、というところは非常に重要なポイントということになりますかね。

吉田 :たとえば、受け答えを聞いていて、次の社長はこの人かな?とか感じられたり、することもあります。役員の経歴からも意外とわかったりするんですよね。
renny :へえー。そういう話す時の声を聞いたり、話されてるその話し方とかっていうのを見ると、この人なのかなっていうのが見えてくるっていうようなことがあるってことなんですね。

吉田 :そうです。

renny:それは面白いですね。僕らは会社に勤めてますんで、次の社長は誰なんだ?とかって、下々のもんでも予想いろいろ噂みたいなのが出るわけですよ。でもあんまりそういうので当たったためしっていうか、その社内の人間で当たるケースってあんまないのかなと思ってて。もしかしたら、株主総会とか行くと、もっとわかりやすいのかもしれないですね。

吉田 :そんなに当たりませんけどね。

renny:でも、そういうふうな楽しみというか、この人かなと思ってたら違う人だったとかっていうのは、それは何でかな?とかって思ったりをする材料にはなるかもしれないですよね。

吉田 :そうですね。この人かなと思ってた人が、いつの間にか役員会からいなくなっちゃったりとか。

renny :なるほど。


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