第51回 白い帽子の女


帽子という代物は、かぶり慣れていないと意外とハードルが高いものである。子供の頃は夏になれば麦わら帽をかぶらされていたという人も多いだろうが、ある程度の年齢になってからは意識的に選ばないと、コーディネートの中に帽子をかぶるという選択肢は入ってこないかもしれない。
もちろん一口に帽子といっても色々ある。冬は頭が寒いからニット帽をかぶるよという人も多いだろうし、夏は日よけのためにつばの広い帽子を選ぶという人もいるだろう。どちらかというとニット帽は敷居が低い帽子だと思うが、これがつばの広い所謂女優帽と呼ばれるような帽子となると、全身のバランスを考えなければならず、なかなかに難しい。

ベレー帽が好きだ。ベレー帽、フランス語風にいえばベレ。
思い返せば幼稚園の頃、制服一式の中にベレー帽が入っていた。ベレー帽のかぶり方は色々あると思うのだが、なぜか当時の私は真っ直ぐでなければ承知しなかったらしい。母親がちょっと斜めの方が格好良いわよなどと言って直しても、「嫌!」と自分ですぐに真っ直ぐに直してしまう。真っ直ぐな性格、などといえば体裁はいいが、単に頑ななだけだったのだろう。もちろん今では斜めにかぶったり後ろにずらしたり、はたまた真っ直ぐかぶったりとその時々にかぶり方は変えている。
ベレー帽というのは、誰にでも似合う万能の帽子だと私は思っているが、結構苦手という人が多いのには驚く。これには帽子の大きさも関係しているのではないか。帽子は、顔や頭の大きさとの比率によってかなり見た目の錯覚を起こしやすい。もちろんそこには髪の毛の割合も関係するだろう。髪のボリュームをそのままに小さめのベレー帽をかぶってしまうと、妙に顔が大きく見えたりするし、反対に髪をコンパクトにまとめた上で大きめのベレー帽をかぶると、意外に小顔に見えたりもする。
これは別にベレー帽だけの問題ではなく、帽子全体に言えることだと思う。だから帽子が苦手という人は、自分をどう見せたいかという目的にあった帽子を選べていないと言えるかもしれない。

帽子とはちょっと異なるが、ヘッドドレスというものがある。ロリィタには欠かせない存在であったこのヘッドドレス、このところだいぶ肩身が狭くなっていないだろうか。
一時期はそれこそヘッドドレスなしではゴスロリではないくらいの勢いだったのだが、いつの間にか正統的なロリィタではボンネットに押され、カジュアルならカチューシャくらいでいいよねとなり、いつしかロリィタが下火になると共にあまり見かけなくなってしまった。
ヘッドドレスというのは本来頭飾り全般を指すものであるが、ここで述べるヘッドドレスはロリィタファッションの範疇の、レースが付いた帯状の飾りを両端のリボンで顎の下か首の後ろで結ぶものを指す。余談だが広義のヘッドドレスと言った場合、アメリカン・ネイティヴのウォーボンネット(羽飾りが派手に付いたあれ)も含むらしい。
ロリィタ好きでも、ヘッドドレスは敷居が高くて難しいという人は多かった。しかしこれも帽子と同じで、バランスの問題である。この世には似合うヘッドドレスも似合わないヘッドドレスも存在するのだ。

昭和の中頃までは、帽子は外出時の嗜みであった。洋装が入ってきた時から、それとセットで帽子というものがあったのだと思う。日本髪を結っていた頃は、髪型自体が帽子みたいなものなので必要なかっただろうが、断髪後は帽子がないと何か頭だけが裸のようで物寂しい。
自分に帽子は似合わないと決め付けている人、一度帽子屋(というもの自体が少なくなってしまったが)でも帽子売り場でも行って、手当たり次第にかぶってみてほしい。
帽子に目覚めると楽しいですよ。


登場した帽子:ベレー帽
→ある程度サイズは小さめのものを選びきっちりと位置決めをするという性格上仕方ないのだが、髪に跡がつくため一度かぶると脱げないことだけが難点。
今回のBGM:「Saint Sebastien」by France de Griessen
→なぜか随分前にFaceBookの友達申請をご本人からもらい、それからのご縁。投稿を見るとギター1本で歌うライヴはなかなかパワフルなようで、一度観てみたいものだ。

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