174回 ライナスのタオル


一般的によく使われるタオルには3種類ある。ハンドタオル、フェイスタオル、バスタオルだ。これは大きさと用途によって分けられていると言っていいだろう。

このうち一番日常で頻繁にお世話になるのはフェイスタオルである。洗面所や台所、トイレなど、家の中にある何箇所かの水回りの近くには必ず掛けてある。この場合フェイスタオルというのは名ばかりで、洗顔の後顔を拭くという用途よりも、洗った手を拭くのに使われている方が圧倒的に多いのではないか。
ではハンドタオルはどうだろう。実際のところ、家の中でのハンドタオルの出番はというと、殆どないと言っても良い。これはもちろん私の場合なので、いやハンドタオルこそ普段家の中で一番活躍しているという方もいると思う。ただ、こと自分に限って言えば、ハンドタオルは猫のエサ入れの側に敷いて、こぼして床が汚れるのを防ぐぐらいにしか使っていない。

ホテルに泊まると、必ずこの3種類がセットで提供される。
バスルームの洗面台の一番近くには、ハンドタオルが鎮座しているので、手を洗ったらすぐこれで拭けば良い。良いのだが、ついくせでフェイスタオルで拭いてしまう。
顔を拭くのと手を拭くのは、本当は分けた方が良いに決まっている。だからハンドタオルとフェイスタオルがあるわけだが、どうもハンドタオルの使い勝手がわからない。
そういう人も結構いるのか、最近ではハンドタオルをゲストタオルと呼ぶことが増えたようだ。壁にかけてあるフェイスタオルは家族が共用しているので、お客様様として別にこれを使ってくださいということだろう。
ホテルに話を戻すと、フェイスタオルで手を拭いてしまうため、ハンドタオルは洗面台の周りに飛び散った水気を拭くのに使ったりして、これでは台拭きではないか。
本来の用途に戻って手を拭いてみても、そのあと所在無げになって、つい丸めてしまいおしぼりの様相を呈する。
やはりハンドタオルとは仲良くなれないようである。

ここでそれぞれのタオルの大きさを確認しておこう。
フェイスタオルは33×75cmから40×80cm、バスタオルは60×120cmから70×140cmといったところが標準である。タオルの大きさには厳密な規格というものはないようで、だいたいこの範囲にあるものがそう呼ばれるといった感じだ。
ではハンドタオルはというと、33×33cmから35×40cmとほぼ正方形に近い。おそらくこの形が家の中で使うには曲者なのだと思う。
ハンカチーフを見ればわかるように、正方形は持ち歩くには便利な形である。ハンカチはこのところタオルハンカチにその存在を取って代わられている。手を洗う頻度が増えた昨今、薄い布のハンカチよりも、厚手で吸水性の良いタオルでできたタオルハンカチの方が便利なのは当然である。
タオルハンカチの大きさは20×20cmから25×25cmと、かなりコンパクトだ。それならハンドタオルを使えばいいと思うかもしれないが、ポケットに入れたりして持ち運ぶのにハンドタオルではちと大きいのだ。
どこまでいってもハンドタオルの出番がない。

日本でタオルと言ったら、今治産。
愛媛県今治市を中心とした地域で生産されたタオルは「今治タオル」という商標登録もされており、その品質には定評がある。国産タオルの6割弱のシェアを有するというのだから、名実ともに一大産地と言える。ちなみに2番目のシェアは大阪府泉佐野市の「泉州タオル」である。
今治タオルの生産は1894年に開始された。その後従来の「織ってから晒して染める」という製法ではなく、豊富な水資源を利用した「晒して染めてから織る」という先晒し先染めという製法を開発し、現在でも今治タオルの特徴となっている。
その今治タオルの最大の長所は、吸水性の高さである。独自の「5秒ルール」という品質検査を行なっているそうだが、これはタオル片を水に浮かべた際に5秒以内に沈み始めるかという基準である。これをクリアしたもののみが、今治タオルのブランドマークを付けることを許されるのだ。

ふわふわのタオルの肌触りは本当に極上である。
たまにビジネスホテルのバスタオルで、酷使されてゴワゴワになったものに当たることがあるが、タオルはやはりふわふわでなければ。
タオル地は、単に水気を吸い取る役割だけでなく、寝具としてタオルケットや、スポーツやライヴに欠かせない細長いマフラータオルなど、様々な用途に利用されている。
ハンドタオルの使い道についても、今一度検討してみる価値があるだろう。
思いもかけぬ使い方の可能性を発見できるかもしれない。


登場したタオル:マフラータオル
→ライヴで会場が一体になるタオル回しのルーツは、2003年横浜レゲエ祭でFIRE BALLというアーティストが始めたのがきっかけとのこと。うまく回せないし当たると痛いので、個人的にはあまりやりたくない。
今回のBGM:「CRAZY KEN BAND ALL TIME BEST 愛の世界」by クレイジーケンバンド
→彼らの「タオル」という曲は切なくて人気がある。私はやはり「タイガー&ドラゴン」が好き。


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