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SDGsは日本の新たなソフトパワーになる

「コンテンツの力で、経済と人を動かす」をビジョンに掲げ、産声を上げた新会社PIVOT。先日、3億円の資金調達も発表しました。

PIVOTで実現したい「コンテンツの力」とは何か? 

この時代に新たなメディアを立ち上げる社会的価値とは? 

出資を決めた一人であるOne Capitalの浅田慎二CEOと共に、PIVOT創業メンバーが語りました。全3回の第2回テーマは、「SDGsは日本の新たなソフトパワーになる」。

スピーカーは、One Capital浅田慎二CEO、PIVOT代表取締役CEO・佐々木紀彦、同チーフSDGsエディター兼執行役員・竹下隆一郎。聞き手は、同エグゼクティブ・ライターの宮本恵理子。鼎談は7月下旬にオンラインで実施。文中敬称略。

SDGsはきれいごとではない

―ここからPIVOT創業メンバーである竹下隆一郎さんに聞きます。竹下さんはハフポスト日本版の編集長を約5年務め、SDGs領域に精通したジャーナリストとして知られていますが、PIVOTでの立場について教えてください。

竹下 私は主にSDGsとESG関連のコンテンツに注力していきます。先ほど浅田さんが「プライベートカンパニーこそ、社会を変える力がある」というお話をされましたが、私がPIVOTに参画しようと決めた理由はまさにそこです。

今の世の中の状況は、本来はサステナビリティを牽引するはずの政治・行政が一時の世論に左右されていて、逆にプライベートカンパニーの中に長期的な視点でSDGsを実践する企業が増えてきました。

浅田さんがいたSalesforceはその代表例の一つで、「equality(平等性)」を経営の中枢に掲げて「Chief Equality Officer」を設置したことも話題になりました。

かつては、「きれいごと」として捉えられたり、「儲かっている企業だけができる社会貢献活動でしょ」と見られたりしていたSDGsがビジネスと融合し、「そもそもビジネス自体が、社会のためにならなければいけない」「人権のことを無視できない」という価値観が急速に広がっています。

利益を追うビジネス判断として、環境問題にコミットするという、経済の新しい基準もできました。

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竹下隆一郎/PIVOT チーフSDGsエディター
朝日新聞経済部記者、スタンフォード大学客員研究員、ハフポスト日本版編集長を経て、就任。アメリカのニューメキシコ州やコネチカット州で育った。世界経済フォーラム(通称:ダボス会議)メディアリーダー。英語名はRyan(ライアン)。2008年5月に4ヶ月の育児休業を取得。子どもの弁当づくりが趣味。2021年秋に、『SDGsがひらくビジネス新時代』(ちくま新書)を刊行予定。

浅田 おっしゃるとおりですね。投資家としても危機感があります。「このまま成長だけを求め続けて、地球はどれくらい持つのだろうか」と。僕は子どもが3人いるのですが、子や孫の世代に地球を残すための仕事をしていきたいですね。

竹下 これまで環境問題というと、ホッキョクグマの映像を見せて「北極圏の生態系が危ないです」などと言うナラティブ(語り方)が多かった。もちろん生物多様性は非常に大切な議論です。とはいえ、「他人事」として感じてしまうビジネスパーソンもいました。

しかし、今は、経済活動のベースとなる金融業界から「地球環境のことを考えよ」というメッセージが企業側に出され、いよいよ地球環境が限界に来ているという科学的な情報が伝わるようになり、世界が本気で同じ課題を解決する力が求められています。

私は、ビジネスにすごく可能性を感じています。矛盾する二つの問いを解決するためのテクノロジーやシステムを構築してきたのは、ビジネスの力でした。ビジネスは矛盾の解決が得意です。政治やNPOと力を合わせることができれば、一気に経済をアップデートできるのではないでしょうか。

浅田 日本は低成長かつ高齢化社会で、サステナビリティの課題解決先進国になれる可能性がある。パンデミックで世界の常識が塗り替えられようとしている今、新しい旋風を起こす。PIVOTには台風の目になってほしいと思います。

竹下 本当の意味でのグローバル経済の時代が来たと感じています。日本では、1990年代以降、IT革命やリーマンショックも経て、「グローバル経済とは、世界との厳しい競争で揉まれることだ」というイメージがありました。

もちろん健全な競争は大事なのですが、“何で争うか”という根幹が大きく変わろうとしている。「人間はどうあるべきか」「世界をどう変えていくと持続可能になるのか」というテーマで世界が競争する時代へと突入しています。

これは大きなチャンスであって、今、日本から世界に誇れるコンテンツとしてSDGs・ESGの成功事例を発信できれば、グローバルで勝てると思うんです。

佐々木 新時代を創る才能をうまくコンテンツ化して、日本へ、世界へと届けていくことが重要ですね。その意味で、PIVOTは「新時代を創る人のための経済コンテンツサービス」と銘打っています。

竹下 うまくいけば、日本人がもっとビジネスや政治のシーンで発言力を増したり、学生が留学しやすくなったりする。日本のソフトパワーは漫画やアニメだけじゃない。今こそ日本の新しいソフトパワーとしてSDGsを磨き上げ、世界に打ち出していくべきときだと思うんです。

その意味で、メッセージ性が無かったオリンピック・パラリンピックの開会式には失望しましたし、本気で流れを変えないといけないと決意を強めました。スケボーやサーフィンなど新しく競技になった選手の活躍が素晴らしかったです。メダルを獲って初めて存在を知るのではなく、もっとその手前からサポーターを増やせる発信ができたらいい。

同じように、隠れた起業家やビジネスパーソンはたくさんいるはずです。私たちが伝えきれていない宝のようなストーリーが、まだまだあるのだと気付かされました。

浅田 スポーツから学べることは非常にたくさんありますよね。先日も、サッカーで日本代表がフランスを0点に抑えて勝利したことに感動しながら、「スポーツのように“個の力”を生かすシステムが、ビジネスには足りないな」と感じたところでした。

代表選手の中でも活躍するのは海外組ですよね。では、セリエAの育成の仕組みを因数分解して応用可能なコンテンツにしたら、ビジネスにも活かせるのではないか?とか。

佐々木 私もサッカーファンなので、スポーツとビジネスの掛け算は興味深いです。

浅田 あと、「世代交代の効果」についても、スポーツは証明してくれますよね。

スポーツの世界では体力がパフォーマンスに直結するので、若手が簡単にシニアを乗り越えて、自然と世代交代の流れが生まれる。ところが、政治や経済の世界ではいまだに60代以上が主役を担っている。

40代、30代へとバトンを渡す世代交代が進むだけで、世の中の風景は相当変わると思います。主役を変えるには、若手の実力を知らせて味方を増やすコンテンツが必要です。PIVOTには、日本の世代交代を加速させる可能性もあると思っています。

40代のミドル起業が日本の風景を変える

―世代交代への期待を語っていただいたところで、ミドル世代が起業する意義についても議論できればと思います。PIVOTの創業メンバーも40代が中心です。

浅田 PIVOTは「創業者が若い」という理由で脚光を浴びることはないでしょうね。出資した私も40代でして、見た目の派手さはないかもしれませんが(笑)、確実に言えるのは20代・30代よりも“経験”という糧があります。

僕も起業家として、10年前の30代前半に起業していたら、今ほどパフォーマンスは出せていなかったかもしれません。同時に、まだまだリスクを取れる年齢でもあるので、脂が乗った世代としてアピールできると思います。

佐々木 リクルートホールディングスCEOの出木場久征さんが、「20代で起業する若者がもてはやされがちですが、本当は30代半ばから40代くらいで起業するほうが絶対に成功確率は高くなる」と語っていて、勇気づけられました。

若い人たちから見ると“おっさん”かもしれませんが、実際になってみると40代って元気で体力もありますね(笑)。

もちろん20代・30代の方の力も借りながら、私たちの世代が社会に貢献しながら成功し、楽しそうに生きて働く姿をお見せしていきたいですし、そういう人をたくさん取材して世の中を明るくしていきたい。PIVOTが掲げる「経世楽民」の考え方です。

浅田 最高ですね。

―今回の起業に当たって、佐々木さんが竹下さんとタッグを組んだことも注目を集めています。佐々木さん、ズバリ、なぜ竹下さんをPIVOTに呼んだのでしょうか?

佐々木 これまでの議論で話してきたとおり、これからのコンテンツづくりにはSDGsの視点が欠かせないだろうという課題意識はずっとありました。

しかし、お恥ずかしながら私はこれまでSDGsを真正面から伝えられていなかったですし、急にSDGsを語り出しても嘘くさいというか、世の中に信用してもらえないなと。だから、この分野に精通した竹下さんに声をかけました。私自身も、SDGsについて、一からしっかり学んでいきたいと思っています。

PIVOTのコンテンツの柱は大きく分けて二つです。

広い意味でのアントレプレナーシップと、SDGsです。これらの最重要領域を進めていくために、竹下さんに来てもらうことは必須でした。

浅田 きっとしつこく口説いたんじゃないですか?

竹下 最初は軽く。でも、徐々にグイグイときましたね(笑)。

佐々木 仲間づくりにおいても、ちゃんと段階を踏むことを経験から学んできましたので(笑)。竹下さんに限らず、PIVOTでは多様な分野のプロフェッショナルがそれぞれの得意分野で花開く環境にしたいという思いがあります。

私もコンテンツのプロとして誇りはありますが、「この分野はあの人のほうが詳しいし、得意だ」という人材がいれば仲間になってもらい、その能力を一番発揮できる方法を一緒に考えていきたいと思っています。

―浅田さんは投資家として多くのビジネスリーダーを見てきた方です。佐々木さんのチームづくりの姿勢をどう感じますか?

浅田 成功する起業家たちに共通しているのは、とにかくまっすぐに一点集中で突き進むリーダーシップです。リスクばかり計算して失敗しない戦略を練るというより、ゴールに向かってひたすら邁進する。

メルカリの山田進太郎さんもビズリーチの南壮一郎さんもそうで、佐々木さんにも同じ匂いを感じます。誤解を恐れず表現するならば、単細胞型。最上級の褒め言葉ですよ(笑)。

佐々木 私は集中したら強いですよ(笑)。

浅田 すごい強みだと思います。極めてゴールが明快で、ブルドーザーのように一直線に突き進んでいく。一方で、自分の弱みも理解しているから、それを補う仲間を集めることもできる。

なぜそれができるのかというと、謙虚、誠実といった人格の面もありますが、やはりゴールを達成したい意欲が圧倒的に強いからだと思います。思いが強いから、ゴールまでの道筋を解像度高く見ることができて、必要なピースを探すことができる。

佐々木 創業期のメンバーを同世代で集めたのも、「私に対するガバナンスを効かせたい」という意図があったんです。20代・30代にも優秀なメンバーがいることは分かっていますが、年齢差があるとどうしても言いたいことが言えない状況を生んでしまうと思うんです。

つまり、私が裸の王様にならない環境づくりをかなり意識しています。

実際、日々のやりとりでも、COOの木野下有市を筆頭に、同世代のメンバーがズケズケと私に意見を言ってくれるのはありがたいですね(笑)。そういうコミュニケーションの基盤ができつつあるので、これから仲間になっていただける皆さんもどうぞ安心してください。

―どんな人にPIVOTの仲間になってほしいですか?

佐々木 当面は自走してどんどん動ける人がいいですね。受け身ではなく、自ら仕事をつくっていき、そのプロセスを楽しめる人を歓迎します。腕に自信があり、個の力でも十分にやっていけるプロフェッショナルでありながら、「PIVOTと関わると、もっと刺激的なチャレンジができそうだな」と面白がってほしいですね。

価値観としては、「ハングリー&ノーブル」な人です。尽きることのないハングリーさを持ちながらも、ノーブルな公共精神を持っている人と、働きたいと思っています。

興味がある方は、ぜひPIVOTのウェブサイトの採用情報をチェックしてください。

※第3回に続く。

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