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なぜ「理想のスカウト体験」は実現困難なのか?Pittaが考える新しいスカウト体験のかたち

こんにちは。カジュアル面談プラットフォームのPitta(ピッタ)の中村です。

理想のスカウト体験とはどのようなものか。2019年にHRの領域で起業してから、ずっと考え続けてきたテーマの1つです。

本エントリでは、理想のスカウトとはどのような体験であり、なぜ実現が難しいのかの"構造"に言及し、1事業社としてどのようなアプローチで解決を試みているのかを考えてみようと思います。

求人サイトでスカウトを受け取ったことのある方、既存のスカウト体験に不満を感じていらっしゃる方、実際にスカウトを送っている方、候補者に良いスカウト体験を提供したいと考えている方に、ぜひご覧になっていただけたら幸いです。

あなたは理想のスカウト体験を享受できていますか?

もし自分のスキルや経験、仕事の志向性などをしっかりと見た上で、それにピッタリとマッチした内容のスカウトが届くとどうでしょうか。少なくとも「いいオファーがあれば転職を検討したい」と考えている人にとっては、嬉しいはずです。

さらにスカウトの文面が自分に向けて書かれたものであれば、それは良いスカウト。理想のスカウトと言えると思います。

では、現時点でそのような理想のスカウトを体験している人がどれくらいいるのか。

HRサービスを運営してきた手前、スカウトを受信している求職者の方と接する機会も多いのですが、私の体感では「20〜30%」ほど。10人に聞けば2〜3人の手が上がる、そのようなイメージです。

実際にスカウト体験について尋ねると、以下のような不満を伺うことがよくあります。

・明らかにテンプレートのスカウト文章
・自分を見ていないと思われる内容

2023年6月にアントプロダクション株式会社が実施した「スカウト・オファー型転職サービスの利用経験」の調査でも、スカウト型サービスの不満点として「希望に合わない求人が紹介される」「不要なメールが多い」といったことが上位に挙げられていました。

もちろんすごく丁寧なスカウトを送っている企業の方々、理想のスカウトを体験している候補者の方々もいらっしゃいます。ただ上記の部分を中心に、スカウトの体験は、まだまだ良くできる余地があるとも言えそうです。
そもそも、なぜこのような状況になっているのか。まずはスカウトの現状や構造から考えてみたいと思います。

スカウト媒体の返信率は10%前後

一般的なスカウトの返信率がどれくらいかご存知でしょうか。企業やサービスごとに異なるのを前提に、平均では10%前後と言われています。

通常、企業の採用担当者の方は「採用人数」を重要な指標として設定されているので、自社のスカウト返信率も踏まえながら、採用に至るまでの“ファネル”を計算しています。

例えば最終的に5人採用したいと考えている場合。スカウトの返信率が10%で、そこからカジュアル面談に至る割合が50%、そこから選考に移行する割合が...という感じです。

そのように逆算すると、ある程度の人数を採用したいのであれば、相当な数のスカウトを送る必要があります。

結果としてスカウト代行サービスやスカウトを自動化するRPAツールに頼りながら、毎月のように大量のスカウトを送らざるを得ない状況に陥ってしまっている。そのような担当者の方も少なくないのではないでしょうか(もちろん、それが一概に悪いと論じるつもりはありません)

また「専門職の方に理想のスカウトを送る」ことの難易度が高いという観点もあります。

例えば私がシニアレベルのデザイナーの方に対して、今すぐに最適なスカウトの文面を考えることができるかというと、正直自信がありません。

「IT業界」に限定しても、細かく分類すると数十種類の職種(もっと多いかもしれません)が存在するはずです。それらの職種ごとに、「わかっている感のあるスカウト」を考えることだけでも、ものすごく難しい。

その上で個人個人のバックグラウンドや志向性なども理解し、理想のスカウトを考えるということは、現場の担当者の方の協力なしでは相当ハードルが高いのが現実です。

スカウト返信率は「その企業の名前を知っているか」で決まる

冒頭で触れたような「理想のスカウト」そのものにも、潜在的な課題があると考えています。

これはさまざまな企業の採用を支援されているキャスターで取締役をされている石倉秀明さんがよく仰られている内容ですが、スカウト返信率のデータを分析したところ、「スカウトの文面」ではなく「その会社の名前を知っているかどうか」が最も重要な係数であることがわかったそうです。

登録者の中には「自身の市場価値を確かめたい」「キャリアの視野を広げたい」といった理由でスカウトサービスを使っている方も多いはずなのに、結果的には「知っている企業のスカウト」に返信するといったことが起きているのです。

でも、スカウトサービスの構造的には、不思議なことではないのかもしれません。

一般的なスカウトサービスの場合、登録者の過半数は「半年〜1年くらいの期間でいい案件があれば検討したい」くらいの温度感ではないかと考えています。スタンスとしても「まずはカジュアルに話を聞いてみたい」となりやすい。

一方でスカウトサービスで軸になるのは「求人情報」です。採用担当者がスカウトを送る際にも、具体的な求人(ポジション)に紐づけて、会話を始めることが多いのではないでしょうか。

ここで両者のスタンスのズレ、言い換えればスカウトサービスのUXにおけるギャップが生じやすいと考えています。

登録者としては、いくら「カジュアルに」と言われたところで、興味が持てない会社から具体的な求人をベースとしたスカウトが来ても、なかなか話を聞きたいとは思わない。

結果として、本来は選択肢を広げるためにスカウトサービスを使っていたはずなのに、自分の知っている選択肢の中で意思決定をしてしまっている。そのような機会損失が起きてしまっていると言えそうです。

スカウト体験における構造的な課題

ここまでの内容を少しまとめると、理想のスカウト体験を実現するにあたっては、いくつかの構造上の課題を解決していく必要があると考えています。

まず候補者視点では「自分にマッチしていない(的外れな)テンプレスカウト」の存在。そして「個人の視野を広げるための仕組みとして十分には機能していない」ことも潜在的な課題です。

スカウトは本来、自分の視野を広げてくれる可能性のある仕組みです。ただ的外れなスカウトばかりが届くと、どんどん体験が悪くなり、ネガティブなイメージがついてしまいます。

特定の求人に紐づくかたちだと“企業名ありき”“求人ありき”になってしまい、なかなか視野が広がりづらいのも、もったいないと感じるところです。

一方の企業視点では、やはり「採用担当者だけで大量のスカウトを送る体制」には限界がきていると思います。スカウト体験を良くしていくためには現場との協力体制を築くことが重要で、それを推進しやすくするための仕掛けを作ることが、良質なスカウト体験が広がっていくことにも繋がるはずです。

そしてスカウトサービス/HRサービスの運営者としては「企業の認知度以外でも勝負できる仕組み」が求められていると感じています。

「名前が広く知られているわけではないけれど、実はものすごく良い会社」が世の中にはたくさん存在すると思うんです。

スカウトサービスの構造的課題(拡大してご覧ください)

わかりやすく表現するために(1)→(7)と順序を記載していますが、実際には相互に作用しながら、負のスパイラルに陥ってしまっている可能性があるのではないかと考えています。

企業の中の人から、カジュアル面談のテーマが届く

そこでPittaとしても何か新たな仕組みが作れないかと考え、2023年11月7日(火)から「おさそい機能」というスカウト的な機能の提供を始めます。

特徴は一般的なスカウトのように「求人情報」を軸にしているのではなく「話題(トークテーマ)」を軸にしていることです。

採用担当者から求人情報を基にしたスカウトが届く代わりに、Pittaでは“企業の中の人”からメッセージとともにカジュアル面談のトークテーマが届きます。

トークテーマは「仕事の面白さ」「働く環境」「チームの雰囲気」「個人的な経験談」など個人で自由に設計することが可能です。最大で3つまでテーマを設定することができ、候補者の方は気になるおさそいが届けば、興味のあるテーマを選んでカジュアル面談を実施できるという仕様になっています。

今回の機能を考える上で、私たちが重要視したのが以下のポイントです。

  • 企業からではなく、特定の個人(中の人)からおさそいが届く【候補者体験】

  • 求人ではなく、カジュアル面談のテーマが最大で3つ届く【候補者体験】

  • 採用担当者以外のメンバーが参加しやすい仕組みを作る【企業の体験】

  • そのために、できる限り負担をなくす【企業の体験】

スカウトの文面で勝負しないプロダクト

Pittaでは企業そのものやスカウトの文面よりも、カジュアル面談を作成している特定の個人やカジュアル面談のトークテーマにスポットライトが当たります。

それを強調するために、メッセージの文面は400文字以内に敢えて制限をかけ、手軽に送信できるようにしました。

実際のおさそい送信画面UI

その結果として「会社自体は知らないけれど、⚫︎⚫︎さんの前職時代の経験や現在の仕事について興味がある」「特定の技術や手法に関心があり、それに詳しい人と情報交換がしたい」といったように、既存のスカウトとは異なる切り口でのマッチングが発生しやすくなる設計にしています。

今回のおさそいの送信機能が含まれた法人メニュー「Pitta チームプラン」のコンセプトを「会社の"知り合い"をみんなで増やそう」と定め、人事だけでなく現場の社員の方々中心に使っていただくことを想定して設計しています。

「誰と一緒に働くか」によって働く体験が大きく変わってくるからこそ、自分たちのチームで働く人を、自分たち自身で探せる仕組みがあれば、働くことがもっと楽しくなるのではないかと考えているからです。

通常の採用・スカウトサービスでは管理画面に招待できるメンバーの数に上限がありますが、Pittaでは招待人数無制限とし、メンバーを一人招待するごとにおさそいチケットが2枚/月増えるというロジックを採用しました。そうすることで、多くの社員を巻き込めば巻き込むほど "お得" になる構造にしています。

Pitta チームプランβ」おさそい機能のチケット付与ロジック

究極的には会ってみないとわからない

冒頭で「自分のことをしっかりと見た上で、丁寧かつ熱い内容のメッセージが届くこと」が理想のスカウト体験なのではないかと書きました。

今回のPittaの新機能が上記の体験を直接実現するものかというと、おそらくそうではありません。そもそも長文のメッセージを送るのではなく、カジュアル面談のトークテーマを提示してみませんか?というものなので、ストレートな課題へのアプローチにはなっていないような気もします。

ただ、Pittaのおさそい機能を準備する中で改めて感じたのが「まず会ってみる」ことの価値です。

どれだけ名高い有名企業であっても、SNSで認知した憧れの会社であっても、自分にマッチするかは究極的には会ってみないとわからない。だからこそ、まずは気軽に中の人と会って、肩肘を張らずに話してみる。
本当に話したいテーマについてフラットに語り合った結果、話が合えば一緒に働くことになるかもしれない。

従来のスカウトとは少しアプローチが異なるかもしれませんが、Pittaではカジュアルに会うための仕組みを通じて、スカウトの課題を解決するような体験を作っていきたいと考えています。

Pitta おさそい機能の目指す体験

まだβ版のサービスなので、ユーザーの皆さまからのフィードバックを元に、一緒に理想のスカウト体験を作っていけますと嬉しいです。


【おさそいを受け取りたい個人の方へ】

受け取り設定をONにし、転職・副業意欲の変更を行なってください。受け取り設定は、プロフィール編集ページから行えます。 ※デフォルト設定では、おさそい機能はON / 転職・副業意欲は「いい出会いがあれば」になっています

【法人の方へ】

・「チームプランβ」のお問い合わせはこちら

https://share.hsforms.com/1iYeRTYjXSnaEdQIbxSPTswdc421

・カジュアルに相談したい方

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