PRINCE2の紹介2
前稿の「PRINCE2の紹介」に続いてPRINCE2記事の2回めです。今回は、PRINCE2がどのように構成されているかについて見ていきましょう。
【3つの礎(いしずえ)】
三本の矢、ならぬ、3つの礎(cornerstone)がPRINCE2全体を支えています。その3つとは以下の通りです。
では、順番に見ていきましょう。
【7原則】
プロジェクトにおいて、どんな時にも守るべき7か条です。原則、というだけあって、プロジェクトや状況に応じてカスタマイズされたり調整により変更する事が認められていません。
ここで原則の第一になっているContinued business justificationについて述べておきます。ビジネスの正当性、即ち事業目的に適合している事が挙げられている点がPRINCE2らしいところです。これ、どんな案件、どんなプロジェクトであれ、事業計画の一部であるという事、即ちトップマネジメントをはじめとする全ステークホルダーのコンセンサスを持つという事を意味します。営業担当が契約を取ってきたらやる、というスタンスではなく、そもそも事業計画のどの部分の実施結果として成立するプロジェクトなのか、について、顧客も含む関係者すべての合意の上で成立するという認識です。
その正当性は文書にて明記し、プロジェクトの全関係者が承認する必要があります。
【7つのテーマ】
以下の7つになります。7つのテーマは7原則に従属する形でプロジェクトが存在する全期間にわたって継続的に管理が必要なビジネスの側面に焦点を当てます。
各テーマは発生するビジネス上遭遇する様々な不明点に回答する形で影響力を発揮します。これにより、何故、誰が、何を、どのように、どの位、いつ、どのようにしたら、どんな結果を得るのか、プロジェクトの所在はどこにあって、どこに向かっているのか、このまま続行するのか否か、などを明らかにします。
PRINCE2の7つのテーマは3つのカテゴリに分類されます。テーマのうちのいくつかは複数カテゴリに分類されるものもあります。
最初のカテゴリは、 パフォーマンス目標となる6つの変数の基準と許容範囲を確立して、例外がいつ発生したかを明確にし、プロジェクトを続行する必要があるかどうかを評価します。ビジネスケース、品質、計画のテーマはここに含まれます。
2つめのカテゴリは、プロジェクトがどのように機能するかを測定し、監視し、プロジェクトの全期間を通じてコントロールします。品質、リスク、変化、進行の各テーマがここに含まれます。
3つめのカテゴリは、役割と責任の定義です。組織にまつわるテーマはこのカテゴリに含まれます。
7つのテーマはすべて統合されています。即ち、プロジェクト全体を通して継続的に実行し、相互に作用します。7つのテーマはどのような時でも適用する事が必要ですが、その時々の環境に合わせて重要性、規模、複雑さ、リスク、その他の要因を含めてプロジェクトの改善のために拡大、縮小を含めた調整を行う事が出来ます。
【7つのプロセス】
以下の7つになります。プロジェクトの開始から完了までカバーする形で指揮、管理、およびプロダクト提供のために実行すべきプロジェクトのマネジメントプロセスの7つのステップを定義しています。
7つのプロセスは、七原則と七つのテーマの両方に従属します。テーマはプロジェクト中ほぼ同時に実行されますが、プロセスはほぼ順番に一巡するものであり、前のプロセスの終了が後ろのプロセス開始のトリガーになる場合が多くなります。
PRINCE2ではプロセスをステージに分ける事により、プランステージごとのコントロールを中心に進行させます。把握しやすい単位に分割してコントロールしていくという思想です。
【6つの変数(Performance Target)】
PRINCE2には6つの変数があります。Performance Target とも呼ばれ、これを計測し、監視する事によりプロジェクトが正しく機能しているかどうかを知る事が出来ます。
【PMの役割】
前項、PRINCE2の6つのPerformance Target で説明PRINCE2におけるPMの役割は、プロジェクトを成功させる為にはプロジェクトのベネフィットを理解する事から始めます。プロジェクトの全体的な目的を理解する事により、PMはプロジェクトの終了条件を満たす為に何を決断したら良いのかを準備する事になるのです。
プラン立案がPMの最初のジョブになります。プロジェクトを完成させる為に必要なすべてのタスクとアクティビティは、プロジェクト計画の進行に伴って実行順にスケジュール上に割り振られます。2つ以上のアクティビティがオーバーラップする時は、プロジェクト計画に記載されます。
次が委任です。PMは、スペシャリストがプロジェクトの管理に集中出来る様にする為にスペシャリストが実行するどのタスクであってもすべて委任する必要があります。スペシャリスト・レイヤーからのマネジメント・レイヤーの分離はPRINCE2メソッドの特徴です。スペシャリストは、割り当てられたタスクを完了する為に十分な数の要員を雇用する必要があります。
スペシャリストが仕事を開始すると、PMは継続的に実行結果を監視し、それがプロジェクト計画にマッチしている事を確認しなければなりません。また、PMは、コスト、タイムスケール、スコープ、品質、リスクがすべてプロジェクトの目的(ベネフィット)から見て許容できる範囲内である事を確認する為に6つの変数(Performance Target)をモニターします。
プロジェクトがプロジェクト計画から逸脱している場合は、PMはこの問題を単独で扱うか「例外(Exception)」として宣言するかを決定しなければなりません。例外マネジメント下では、PMは解決の為に自分のひとつ上のマネジメントレイヤーに向けて当該問題をエスカレートしなければなりません。
なお、タイムスケールとコストは、より短い時間または低コストで製品を出力する機会をその場で実現する為に、PMが継続的に監視する必要がある2変数です。PMはこの2変数の監視を継続するとともに、コストを抑え、短時間で製品を提供する事を目指します。
PMって、責任重大なお仕事ですよね。ではまた!