カタールW杯 GL メキシコvsポーランド

試合前

4時間前に同グループで大波乱が起きたグループCの第2戦。
勝利することでGL突破に大きく近づきたかった両チームの一戦を見ていく。

アフリカネーションズリーグでも4-3-3でプレーをしていたメキシコはスタメン発表を見る限り4-3-3。ポジショナルアタックをする雰囲気を出していたし、ど真ん中にいるのは我らがアヤックスの④アルバレスというのもあり、おそらくそういうサッカーをしたいのだろうが、試合を見てみるとトランジションに強みを持つチームのよう。ロシアW杯でも強烈なカウンターを炸裂させていた。

一方のポーランドはネーションズリーグやW杯プレーオフを眺めてもよくわからない。4-3-1-2をしていたり、4-3-3をやっていたり、今年の6月ごろからは3バック、5バックをメインにしていた気がする。試合中に実況の人が「ポーランドは昔からパスサッカー」と言っていたが、昔過ぎて自分が知らないだけなのだろう。試合前の段階では、ポーランドは何をするかわからない状況だった。

前半

メキシコボールから始まったキックオフの配置ではメキシコは4-3-3、ポーランドは4-4-2であった。
最近流行りのキックオフはまだどこの国もやっていないと思うが、どこかにはやってほしい。
ポーランドは時々ライン3を形成したりしてた気もするが、記憶にない。なぜならすぐにレヴィめがけて蹴っ飛ばすから。IH?FW?の⑳ジーリンスキーと右SHの⑬カミンスキーがレヴィの近くに集まり、懸命にセカンドボールを追っていた。一応デザインはされているようだった。
ちなみに、今年のうちのトップチームもダイレクトプレーのオプションがあり、IHとWGのペアやIHとFWのペアで相手の最終ラインに対して数的優位を作り、そこめがけてボールを蹴っ飛ばしていた。割と効果的である。

メキシコはというと、ミドルブロックで結局4-5-1のように構えるポーランドに対して、右サイドでは最初の10分間、右SBの⑲サンチェスが中に入ったり外に開いたりライン間まで行ったりしていた。おそらく4-5-1は想定外だったのだろう。ポジションを探しているような感じだった。また、右IH⑯エレーラが落ちてサンチェスとポジションを入れ替えることもあった。WGのロサーノを中に入れなかったのは彼の特徴なのであろう。
左サイドでは左IH㉔のチャベスが落ちて、こちらはSBが高い位置、WGの⑩ベガが中に入ってくる様子であった。
このベガという選手は、メキシコの中ではクオリティのある選手で中でも外でもプレーできる技術力と積極性のあるアタッカーである。

試合の様相としては、メキシコがボールを持ち、ポーランドがミドルブロックで守る展開が続く。続くといってもシティみたいにずっと持っているわけではない。ファールで試合が止まったりして、普段1時まで起きてることが滅多にない自分にとってはものすごく眠い展開であった。
ミドルブロックで守る相手に対して重要なのは二つ。
1. ボールを動かすことで相手のバランスを崩すこと。
2. 選手が動くことで相手のバランスを崩すこと。
メキシコは1はほとんどできていない印象であった。
2に関してはIHがブロックの外に落ちてくる場面が多かったが、ブロックから離れ過ぎているせいでなかなか相手がジャンプしてこないという課題があったように見える。
ポーランドは特に右SHがメキシコの高い位置をとった左SBについて行って5バックのようになってしまうシーンが何度も見られた。人がいることで守れればいいのだが、奪った後のカウンターに参加できなくなってしまうため、自分はあまり好きではない。メキシコも、そのスペースから前進していこうという意図はあまり見られなかった。

後半

ちょっと文章が長くなり過ぎている気がする。

後半スタート。
ハイブロック守備も敢行するようになったポーランド。
ハイブロック守備に対しての攻撃の基本である「数的優位の確保」「緊急時のサポート」「遠くを見る」といったことをどれもできずにいきなりハマった8分のシーンから、ポーランドがPK獲得。止めるオチョア。蹴った瞬間に何かしらのスラングを呟いていたレヴィ。W杯初ゴールはお預けに。ファールになったシーンは腕の使い方が迫力満点で子供たちに見せたい映像であった。サッカーは腕を使うスポーツ。
試合の状況の中にポーランドのハイブロック vs メキシコのビルドアップというエピソードが何回か生まれるようになるが、何回かだけ。ただ、メキシコは確かに苦しんでいたので、もしかしたら他の国はそれを狙うかもしれない。

メキシコは時々アルバレスを最終ラインに落としてライン3を形成。
その時にSBは高い位置をとるため、ポーランドのSH2人は自然と最終ラインに吸収されていく。メキシコのボール保持が長くなっていった。
日本だと高い位置をとったSBに相手SHがデートすることはよくあるので、一つ引き出しに入れとこう。ポーランドは、カウンターにも出たいなら、相手ではなくボールを基準にポジションが決まるゾーンディフェンスをしてほしいところであった。
平気で6バックになるポーランドに対して、なかなかいい攻撃を仕掛けられないメキシコであったがチャンスの数は増えていった。ボールを持つものの特権でもあるし、シンプルに前線の選手たちが輝き始めたのもあるし、トランジションゲームの要素が増していったことも要因の一つになるだろう。
後半途中からは奇跡の復活を遂げた大エース⑨ヒメネスも登場し、圧力をかけていく。

メキシコのトランジションでの強みはいくつか挙げられる。
ネガティブトランジションではまず切り替えが非常に早い。その上で相手陣内では猛烈にボールを奪いにいく。
ポジティブトランジションではカウンターに行けそうな時はボールの前にどんどんと選手が流れ込んでくるので相手はラインを下げざるを得ない。逆にカウンターに行けない場面では、テクニックと根性でボールを守る場面が多かった。ポーランドはこの点においてメキシコに大きく劣っていたように思う。
結局、ゴールは決まらずスコアレスドロー。

まさかの第1節を終えて、サウジアラビアが首位に立ったのであった。


感想

試合時間の中で最も時間が長かったのはトランジション局面であったように思う。いや、多分そんなことはないんだろうが昨今の全世界で行われている試合と比べると、トランジションの時間は多かった。
前線に強力なアタッカーを要し、ネガティブトランジションではアグレッシブな守備を見せ続け、ポジティブトランジションではカウンターの脅威を見せながらボールを守ることにも成功していたメキシコが勝ってもおかしくない試合であった。
ハイブロック守備をしている時以外は全ての局面で上回られてしまったポーランド。ただ、それはメキシコがうまいことできなかっただけであり、基本的にはヨーロッパの中では遅れをとっている国だと感じた。
繋ぎたいCBと蹴り飛ばす気満々のCBが共存していたのを見た時はある種の切なささえ感じたものである。

今大会は、戦術的アイデアを装備した国、戦術的アイデアとタレントを装備した国、そして戦術的アイデアがあまりない国の差が明らかになってしまうではないかと思う。現実を見せつけられる大会だ。

普段は見られないチームが見れる!という意味で、引き続きW杯を楽しんでいけたらと思う!


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