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俺とババアとジジイの話

実話。最近思ってること、書き残しておきたくて下手くそだけど本心を書こうと思う。
タイトルのババアとジジイは俺の母方の祖父母のこと。これを書こうと思った経緯はババアが最近ちょっとしたことですぐお小遣いと呼ぶには大金(ゼルダの伝説TotK5本買ってもお釣りがくるくらい)をくれるので、そのことについて本心を残しておきたかった。

ババアとジジイとは昔から仲はあまり良くない、という自負がある。より正確に言うと甘えるってことをしたことがない。「ばぁば、あれ買って〜」とか「じぃじ、これが欲しいな〜」みたいな物欲的な甘えから、「抱っこして〜」とか「絵本読んで〜」とか子どもらしいことすらねだった記憶がない。
ババアのこともジジイのことも昔からあまり興味がなかった。母親があまり仲良くなかったからかもしれない。とにかくいろんな影響で俺にとってババアとジジイは赤の他人に近くて、だから遠慮してた。話さないわけでもないし、旅行に行かないわけでもないけど、いつでも遠慮してた。世間一般的に言うであろう「孫とおじいちゃんおばあちゃん」らしいことはしてこなかった。欲しいものもあったらお小遣い貯めるか、誕生日とかに両親に買ってもらうか、両親の手伝いして稼いだ小遣いで買ってた。お年玉貰うのも形式的な感覚で、貰うために行くわけでもなく新年のご挨拶に行ったついでに貰ったであって、会えて嬉しい!とかもらえて嬉しい!とかはなかった。むしろあまり知らない人に挨拶するのもお金貰うのもなんか変な気がしてた。なんでくれるんだろう?みたいな…。
今でもババアもジジイも俺ん中では赤の他人に近くて会っても何話したらいいかわからない。最近元気?くらいしかババアも訊いてこない。ババアも俺んこと知らないからそれくらい抽象的な質問しかできないんだ。俺はババアのこともジジイのこともなんも知らんから、こっちからは一切質問しない。ぶっちゃけ興味もないし、何よりババアは変な宗教みたいなのにハマってて(一応心配なので調べたけど、霊感商法とかではなくスピリチュアルななんか?みたいなので放置してる)、すぐ霊がどうこう言い出すから気持ち悪くてそっち系の話にならないように当たり障りない会話しかしない。ジジイは認知症で俺のこともう誰だかわからないからろくに会話もしない。適当に相槌打ってるだけ。俺とババアとジジイの関係はそんな感じ、極限まで他人に近い孫と祖父母。それが俺たち。

ババアもジジイも昔に比べてすごい歳とった。ジジイは認知症でトイレもろくに行けないし、日にちもわからん、同じ会話繰り返す。ババアもボケてきたし、杖つかないと歩けないし(でも現役で働いてる)俺よりずっと小さくなった。俺は大人になってババアもジジイも俺が大人になった分歳とったんだから当たり前なんだけど。
だから最近は介護してる。俺の母親が大半をしてるけど、俺も出かける時はジジイの車椅子押したり、ババアの荷物持ったり、先に行ってドア開けたり席取ったりする。旅行好きだったババアとジジイ、旅行に気軽に行けなくなったから、俺がクレープ食いたいときとかに一緒に連れて行って一緒にクレープ食う。そういうことで昔よりババアたちと過ごす時間が増えた。俺はクレープが食えればそれでいいからババアとジジイがいようがいまいが関係ない。それにこういう時は決まって(ババアが金出して、支払いは母親がするんだけど)タダで食えるから俺は損しない。俺には得しかない。俺は打算的なクズなのである。
そうやって半日くらい「お出かけ」して帰るときにババアは「おじいさん、今日は楽しかったねぇ」ってジジイと話してから、俺に小遣いをくれる。前述の通り決して少なくない金を「今日、クレープ連れて行ってくれたお礼」と言って俺に握らせる。俺は車椅子押したくらいしかしてない。自分が食いたいもんをタダで食えて食費が浮いたなぁくらいにしか思ってないのに、そう言っていつもババアは小遣いくれる。最初はさすがにこの程度で小遣いもらうのは気が引けるからいらないって言ってたけど、断ると母親に渡して、母親経由で俺んとこに届くから最近は諦めて素直に受け取るようにしてる。

ババアが金くれるのは母親曰く、俺が子どもの頃「ねだらない子」だったかららしい。俺はただ「普段仲良く遊んでるわけでもないババアに、テメェが欲しいもんがあるときだけ頼るのは気がひける」って思ってただけで、ねだらない子ではなかった。でもババアにはそう見えているらしかった。
ここでちょっと脇道に逸れる話すると、ババアが現役で働けるのは自営業だからである。そしてそれゆえに結構金持ち。俺は少なくない金額って思ってるけどババアからしたら俺にくれる小遣いの額なんてはした金レベルだと思う。そんくらい金持ち、総資産は知らない。土地もたくさん持ってるし貸してるし、自営業もコロナとか全然関係ない業種だし、多分俺が想像してる以上に金持ちなんだと思う。俺が一人暮らし始めるって時は1000万くらいあれば(俺用の)家建つかな?とか母親に話してたらしい。普通に賃貸じゃぁボケ、無駄遣いしようとすんな。

閑話休題、だからかババアは金をよくくれる。というより金をやることでしか俺と会話することがないから。俺も会話するための話題がない。いや、あるんだけど、俺の日常生活を一からするのとかめっちゃ嫌だ。知られたくない、ババアたちのことよく知らんから、めんどい。で、手っ取り早いのがババアたちが旅行好きなことを利用して、ババアたちが普段食わないようなもんを食いたいな〜って母親に話して(間接的じゃないとろくに会話もできない)ババアたちと一緒に行こうって連れてく。俺の中ではババアもジジイも赤の他人に近い祖父母で今でも何話したらいいか全然わからない、それはこれから先も…と言ってもババアたちにどのくらい時間が残ってるのかわからないけど…ずっと変わらない。
母親の話を信じるならこの金はババアとジジイにとって、子どもの頃「孫とおばあちゃん、おじいちゃんとして遊ばなかったこと」への”支払い”なのかもしれない。俺からすれば「どう接したらいいかわからないから遠慮しよ」であって特段、ババアとジジイのことが嫌いだったわけでも遊びたくなかったわけでもないが、ババアたちにとっては「孫を可愛がってやれなかった」につながるのかもしれないと思っている、俺の勝手な被害妄想。
俺には孫がいる人の気持ちって理解できないけど、初孫が甘えてくれなかったら悲しいものなのだろうか?父方の祖父母からは一切可愛がってもらったことがないので比較対象がいなくてわからない。(父方の祖父母は俺のこと嫌いだったと思う、本当に遊んでもらった記憶がない)

金を貰うたび、申し訳ないなと毎回思う。貰った金は生活費か趣味で消えるし、車椅子押して、適当にドライブして、飯食っただけでこんなに金貰って、本当に申し訳ない。とてもありがたいし嬉しいお金だけど、一瞬で溶けていくのが申し訳なくて、でも受け取らないと意地でも渡そうとしてくるところがもっと申し訳なくて甘えて受け取ってしまう。
家の椅子に座ってるだけで大金が入ってくるような生活を送れているババアからのお金であっても、俺が貰うにはひどく気がひける。それに貰うたびにババアには後先がそんなに長くないことの自覚があるのかなって思うことが時々ある。年齢的には本当にいつぽっくり死んでもおかしくない。なんとなくババアが命を削って渡してくれてるお金のような気がしていい気分ではない。けど、俺はオタクで金がかかるからお金はあるに越したことはなくて、貰ったらやっぱり超嬉しいし、助かるから喜んじゃう。一人で生活してみてお金の大切さを身に沁みて感じてるからお小遣いがもらえれば嬉しい、スッゲー嬉しい。でも貰う瞬間も、貰って今こうして文章を書いてる瞬間もババアたちが命を削って稼いできたお金を俺は簡単に手にしていてどうしようもなく申し訳がなくなる。「お出かけ」の終わりに毎回「おじさん、今日は遠くまで連れて行ってもらえて楽しかったね」ってじじいに話しかけてるのが聞こえると「本当にそうおもってる?」とか疑ってしまう。本心なのか訊けばいいんだろうけど、俺たちほとんど赤の他人だから、訊く勇気なんかなくて無言のままお小遣いもらって「じゃあね」って別れる。

後何回、こういうことできるんだろうって思いながら、赤の他人の心配(?)してくだらねーとも思う。ババアが死んでもジジイが死んでも泣けないと思う。父方の祖父母が死んだときも、腐らんように保冷剤が入れられた棺の中で横たわる死体が気持ち悪いなって思ったくらいでなんの感慨も湧かなかったしそんなに昔のことでもないのに命日も覚えてない。法事も一人暮らしを始めてから行ってない。ババアとジジイが死んでもきっとそうなる。葬式と最初の1回くらいは法事に行って、それで終わり。お小遣いをくれる人がいなくなった、としかきっと思えない。それを悲しいことだとも思えない。
俺とババアとジジイはやっぱりどこまでも「赤の他人に近い孫と祖父母」でしかなくて、きっといつかお小遣いをもらっていたことに”申し訳なさ”を感じていたことすら忘れていく。

だから文章にしないといけないと思った。お金貰うことに「感謝と謝罪と申し訳なさと嬉しさ」が自分の中に残ってるうちに、目に見える形で残しておこうと思った。俺はこれからもババアとジジイが死ぬまではこの生活を続けていく。いや、もしかしたら二人が死ぬ前にこういうことができなくなる瞬間が来るのかもしれないけど…。少なくとも今はまだ続けていくつもりだし、そのお礼にお小遣いも貰っていく所存。釣り合ってないけど対価として受け取っていく。「ありがとう」ってお小遣い貰うときに言う言葉も”会社から給料もらって、ありがとうございます”と言うみたいな事務的な言葉の羅列でしかないのだけど、今が俺の人生で一番ババアとジジイと遊んで、喋って、「孫と祖父母」をしている時間な気がするから、
大切にしないといけないと思う。


いつか忘れるであろう感情がなくなる前の記録、終わり。

身バレとかしそうになったら非公開にします…。