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「やせたガール」を卒業したい

私は「やせたガール」である。
やせているわけではないしガールでもないおっさんだが、「やせたガール」である。

こいつは何を言ってるんだ、と怒られる前に説明しておくと、ここで言う「やせたガール」とは「やせたいと公言しているが一向にやせない、ずっとやせたがっている人」のことである。

ガールとついているが若い女性とは限らない。
おっさんだってやせたガールになれる。
ダイエット記事を10本も投稿していながら体重が肥満ギリギリのところをうろうろしている私もまた「やせたガール」なのだ。

そんなおっさんやせたガールな私であるが、自らが長年やせたガールを続けつつまわりのやせたガールたちを観察した結果、やせたガールをやせたガールたらしめる特徴が見えてきた。

それをこれから説明するのだが、このままおっさんを例にして話を進めても読む方も書く方もテンションが上がらない。一旦語り手がおっさんであることは忘れて、一人の女性の話として進めてみよう。


安田伊代やすた いよさんは入社5年目の若手社員である。
入社した当初からダイエット中であることを公言しており、様々なダイエット方法を試している。実際のところまわりから見れば細いとは言わないまでも標準的で健康な体型に見えるのだが、本人としては太り過ぎでありもっとやせないといけないと考えている。

安田さんはいつまで経ってもやせられないことを嘆いているが、彼女を近くで見ている友人からしてみればやせられない理由は明白であった。

安田さんは食べることが好きすぎるのだ。
彼女にとって食べることはストレス解消であり、ご褒美である。食に対する好奇心が旺盛で目新しいもの、人気のものは試してみたくてたまらなくなる。

スタバの新しいフラペチーノ、からあげクンの新しい味、最近流行りの進化系スイーツ、マクドナルドの新バーガー、宅配ピザのなんか見たことない形態のピザ…。
これらの新CMを1つでも目の前で流せばその週末のダイエットは中止にさせるくらいの抜群の効果がある。弱点が多い。


もちろん安田さんだって「食べないこと」がダイエットにおいて重要であることは分かっている。できるだけ食べる量を減らし、食べるものもなるべく食物繊維の割合が多く、脂質や糖質が少ないものを選ぶ。長年ダイエットを続けているだけあって、知識は豊富なのだ。

そしてがんばって食事制限と運動を続けることで体重は減る。ちゃんと減るのである。1ヶ月間ダイエットを続けて一次目標の5km減を達成することだってできる。

ところがこの一次目標を達成したあたりで「やせたガール」がやせたガール(真)になれない所以が出てくる。

目標を1つ達成し、喜びに満ち溢れた頭で安田さんはこう考えるのだ。

目標を達成したら~?…そう!ご褒美だ!
ご褒美と言えば~?…そう!おいしい食べ物だ!

1ヶ月好きな食べ物を我慢してがんばったのだ。ちょっとくらいご褒美があっても良いではないか。
体重が5kgも減ったのだ。ビックマックを1つ食べたところで大した影響はあるまい。

しかしひさしぶりに解放された食欲は一日では収まらない。
結局あと一日、もう一日、まだ体重はそこまで戻ってないから大丈夫、なんって言ってるうちに一ヶ月後には…あら不思議、元の体重に戻っている。

これがいわゆる「やせたガールの体重増減スパイラル」だ。
集めた情報を元にがんばってダイエットする。体重が減る。
体重が減ったご褒美として食べる。体重が元に戻る。
この繰り返しである。

ご褒美を我慢すれば良いんじゃないの?なんて呆れ顔で言わないでほしい。たとえばどうにか二ヶ月間、半年間我慢できたとしても、結局どこかで限界が来る。そしてがんばればがんばった分だけ、ご褒美が増えて元に戻ってしまうのだ。
元に戻るまで止められない止まらない!
がんばるだけでは抜け出すことのできない恐ろしいスパイラルなのだ!


そんなスパイラルに囚われた哀れな安田さん(というか私)が「やせたガール」から卒業するにはどうすれば良いのだろうか?

問題は「食べることが好きすぎる」こと、つまり食べることが趣味になってしまっているということである。
だとするとそれよりももっと夢中になれることを見つけて、食べることへの興味を減らすというのはどうだろう。

人は本当に夢中になると寝食を忘れて没頭するという。
オンラインゲームに夢中になりすぎて3日間飲まず食わずで遊び続けた人が倒れた、という話を聞いたことがある。恋に落ちて相手のことを考えると食事が喉を通らない、というのもよく聞く話だ。

誰かが私を誘惑して食事が喉を通らなくなるくらい夢中にさせてくれたら、スパイラルを抜け出してやせられるかもしれない。
いや何だか抜け出せそうな気がしてきた。
というわけでどこかに協力してやろうという美女はいないだろうか。



「やせたガールの日常」というテーマで書きました。


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