映画日記『愛なのに』
すぐには言語化しきれないごちゃごちゃとした気持ちにさせてくれる映画が私は好きだ。鑑賞後にそのごちゃごちゃを整理して、自分なりに解釈して、言葉にして落とし込んでいく時間がついてくるから。むしろその時間のために観ているまである。おもちゃが欲しいから買う、ハッピーセットみたいな。
今泉監督の作品にはハッピーセットが多いが、脚本として携わっている本作も例に漏れずだった。展開は割とドロドロなのに、ちょっと間抜けでシュールさもあって、そこがまた人間くさくて良い。
鑑賞後のごちゃごちゃした気持ちを紐解いていくと、たくさんある「うれしい」のうちのひとつとか、たくさんある「やさしい」のうちのひとつとか、あと少し「さみしい」のうちのひとつとかもあって。でも「いい気持ち」であることは確かだ。
「愛を否定するな」
終盤のこの台詞に、うおーーーっとなった。でもその「否定」しているように見える側の気持ちも、愛なんだとも思った。
タイトル通りいろんな「愛なのに」が複雑に絡まって、捻れて、でも生活は続いていく。愛は永遠ではなく変化していくものだというせつなさも、でもやっぱり愛することのすばらしさも、いろんな愛のかたちを見せてくれる映画だった。
なぜか『もののけ姫』を思い出した。「シシ神様は死にはしないよ。命そのものだから。生と死と、両方もっているもの」というアシタカの台詞を思い出した。何故だろう。
すべての複雑で不毛で不恰好な愛を、まるっと肯定してくれる。そんな話だった。
好きと言える誰かがいること、
好きと言ってくれる誰かがいること、
好きと思えること、
なんて尊くて、ああ、ただそれだけでいいじゃないか、と思えた。だから映画は良い。
ヒロインの女子高生がとんでもなくまっすぐで、正直で、屈託がなくて、すごく魅力的だったな。
自分の気持ちにも、誰かの気持ちにも、誠実でありたい。
ぴろ
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